第16話 温泉密談
僕は有給休暇を取得して、ヒョーゴ藩のアリマ温泉に来ていた。
昼間の露天風呂は日光による光合成と、温泉成分効果でストレス解消にはもってこいだ。
それだけ僕も消耗しているといえる。
風呂というのは、昔は男女別だったらしいが、もちろん今はそのような性差別は行われていない。
以前はトイレすら男女の違いでも論争があったそうだ。
当然の結果として、全てのトイレは男女共用となった。
「あら、奇遇ですね」
僕は声をかけてきたマッキナを見る。
女性だ。
「イトーか」
「キヨミズ・テンプル以来かしら」
「そうだな。まったく、あのときは本気でやりやがって。僕は新しいボディでほとんど戦闘力がなかったってのに」
僕はイトーの蹴りで体を真っ二つにされたのだ。
「あら、手加減したほうが良かったですか?」
「いや、褒めている。シンセングミに悟られるわけにはいかないからな」
「わざわざ性別まで変えたんですものね。まさか、わざわざ戦闘に向いてない男性になるなんて」
「男性の身になると、世の中まだまだセクハラが残ってるのが分かるよ。イトーもどうだ?」
「遠慮しておきます。それで、キドさん…」
「カツラだ」
キド・ヨシミは僕の本名。
「失礼、そうでした。アドレス帳を修正しました」
「それで何だ?」
「イケダ・ホテルでイシン・パトリオット が殺されたことにより、ヤマグチ藩では打倒幕府の機運がさらに高まっています」
「それで?」
「少々やっかいなことに」
「だから言っただろう」
「はい。デスピーシーズが殺されたことによる反発が想定以上です」
「自害だがな。シンセングミが殺すはずがないことくらい、分かりそうなものだが」
「そこは、タカスギさんがうまく情報操作しました。だいぶ苦労されたようです」
シンも苦労が多い。
情報操作を疑わず信じるほうも問題だが。
「そもそもデスピーシーズをあんなところに連れて行くなんて、イシン側が殺したようなものだ」
「タカスギさんも同じことを言ってます」
「それで、どうなってる?」
「キジマを中心とした急進派が、キョート焼き討ちを計画しています」
「バカが。シンは何て?」
「タカスギさんも、バカが、と」
「他に言葉が見つからない、というやつだな」
キジマめ、世論を味方につけなければイシンは成らないこともわからないのか。
「シンセングミで鎮圧しろと?」
「タカスギさんとイワクラは、焼き討ちに成功するよりは、負けて幕府や国民から敵視されたほうがマシだと。私も同意見です」
「当然だな。で、シンセングミはどこからその情報を仕入れるんだ?」
「コーチ藩のサカモトさんが漏らしてくれるそうです」
「サカモトめ、ヤマグチ藩に貸しを作るつもりか」
「お願いできますか?」
「やるしかないだろう。キジマは殺すぞ」
「タカスギさんもサカモトさんも、それを望んでおられます。とそろで…」
「まだ何かあるのか?」
「お背中でもお流ししましょうか?」
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