第10話 捕縛

僕がシンセングミに入隊してから5年が過ぎた2408年。

マッキナによるテロは激しさを増していた。


「カツラさん、6時52分の方向、32メートル、6体」

「了解」

ヲキタさんの索敵で捕捉したカラクリを斬る。


今回テロで狙われたのはビョードーイン。

ウジ支部の管轄だが、応援としてジェシーさん、ヲキタさん、僕の3人が派遣されていた。

シジョー支部はここ3年ほどで多くの戦果をあげ、キョート藩最強の支部と言われるまでになっていた。

そのせいで、応援要請が尽きない。


ジェシーさんが言う。

「まったく、ウジ支部のやつら、完全に私たちに丸投げだね」

ヲキタさんが応える。

「仕方ありませんよ。ウジシティーはこれまでほとんど標的にならなかったですからね。実戦経験が足りません」

「だったら、この機会に経験積んだらいいでしょ。丸投げしてどうするのよ」

「同意です」

「マッキナを捉えました。8時13分の方向、312メートル」

「ヲキタさん、頼んだ」

「はい」

ヲキタさんはライフルを構え、狙撃する。

爆発。

スロウナイフの技術を応用したボムバレットだ。

弾丸が到達したと同時に爆発する。

「撃破失敗。装甲型です。貫通弾を使うべきでした」

「またアイツか」

カイ・カツ。

男性の装甲型。

5年前のキヨミズ・テンプル以来、僕がカイと戦うのは4度目だ。

僕とジェシーさんは、カイの場所に向かう。

途中、カラクリが襲ってくるが、ヲキタさんがライフルで狙撃してくれた。

到着。

カイが言う。

「またお前か」

「こっちのセリフだ」

僕がレーザーソードを構えようとした瞬間、ジェシーさんのレーザーウィップがカイを襲った。

相変わらず行動が早い。

「くっ」

カイはウィップで拘束される。

ジェシーさんのファンだったら喜びそうだな。

同時に、ジェシーさんはウィップのスイッチを押す。

電撃。

0.4秒は硬直するはずだ。

僕は身動きのとれないカイに突進する。

「ツバメ返し」

斬り下ろし、斬り上げ。

その間隔は0.07秒。

昔はジャンプして斬り落としていたが、この突進型のほうが合理的だとヒジカタ副隊長に指摘されてスタイルを変更して以来、明らかに使いどころが増えた。

しかし。

「前より硬いな」

僕のツバメ返しは胸部にヒビをつけただけで、ほとんどダメージを与えられていない。

「ふんっ」

カイはウィップの拘束を力ずくで外す。

右腕に装備された剣で僕に斬りかかってくる。


ガァン!

「ぐっ!」


カイの右腕が弾かれる。

ヒジの間接部分が破損。

ヲキタさんの貫通弾による狙撃だ。

あの距離から動いてるヒジを狙うなんて、すごいな。

ヲキタさんは最近、本部からの出向でなく正式にシジョー支部のメンバーになった。

コンドー隊長が引き抜いたらしい。

貫通弾で破損したヒジを、ジェシーさんのウィップが切断。

「そこだ」

僕は内部が露出したヒジにスロウナイフを差し込む。

0.3秒で爆発。

装甲内の爆発で、カイの右腕を肩まで破壊した。

カイは言う。

「3体1では分が悪いな」

「1対1でも分が悪いと思うけどね」

ジェシーさんはウィップを構える。

キョート藩最強のシジョー支部、その最強隊員。


「ぐはっ」


カツは仰向けに倒れる。

僕のツバメ返しでつけたヒビ部分に、一瞬で5連撃を打ち込んで装甲を破壊したのだ。

「まったく。12発打って、ようやくか」

「え」

7発ほど見逃したらしい。

ジェシーさんは再びウィップで拘束すると、キョート本部に連絡した。

「キヘイタイ装甲型マッキナ、カイ・カツを確保」

「了解。回収班を向かわせる。残りのカラクリはウジ支部に任せ、回収班と共にキョート本部まで帰投せよ」

「了解」


シンセングミで初めて、キヘイタイ所属マッキナの捕縛に成功したことにより、ジェシーさんは異例の2階級昇進。

ヒジカタ副隊長と並ぶ3級隊士となった。

キヘイタイ・マッキナから得られる情報は、それほど貴重なものだ。

イシン・パトリオットのネットワーク上でのやりとりはある程度は把握できるものの、ローカル保存されている情報は、そのマッキナからしか得られないからだ。




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