傷つかないため
佐原マカ
傷つかないため
私はずっと淋しい。だから、本当は淋しさから抜け出さなければいけないはずなのに、淋しくない場所が、いつの間にか居心地の悪い場所になってしまっている。
賑やかな人たちや楽しそうな声が交わされる中にいても、まるで透明なガラス越しに見ているような気分になる。誰にも拒まれていないのに、息苦しくて、無性にその場から逃げ出したくなる。淋しさが染みついた自室が、唯一の避難所のように思えてくる。
彼らが悪いわけじゃなくて、ただ私に合わないだけなんだ。目に映るもの、耳に入るもの——そういうすべてが、私にとっては傷つく材料になりすぎる。
自室にいる間、それは決して癒やしではなく、ずっと苦しいものなんだけど、傷つくことはないから、私はその中でずっと丸まっている。
ただ丸まっているだけで、他人にも自分にも傷をつけずにすむのだから、本来ならこれほど完璧なことはないはずなのに。それなのに私は、その状態から抜け出せない自分が嫌で、でも、結局それにすがるしかないのだ。
傷つかないため 佐原マカ @maka90402
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます