傷つかないため

佐原マカ

傷つかないため

 私はずっと淋しい。だから、本当は淋しさから抜け出さなければいけないはずなのに、淋しくない場所が、いつの間にか居心地の悪い場所になってしまっている。 


 賑やかな人たちや楽しそうな声が交わされる中にいても、まるで透明なガラス越しに見ているような気分になる。誰にも拒まれていないのに、息苦しくて、無性にその場から逃げ出したくなる。淋しさが染みついた自室が、唯一の避難所のように思えてくる。


 彼らが悪いわけじゃなくて、ただ私に合わないだけなんだ。目に映るもの、耳に入るもの——そういうすべてが、私にとっては傷つく材料になりすぎる。


 自室にいる間、それは決して癒やしではなく、ずっと苦しいものなんだけど、傷つくことはないから、私はその中でずっと丸まっている。


 ただ丸まっているだけで、他人にも自分にも傷をつけずにすむのだから、本来ならこれほど完璧なことはないはずなのに。それなのに私は、その状態から抜け出せない自分が嫌で、でも、結局それにすがるしかないのだ。

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傷つかないため 佐原マカ @maka90402

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