寿命を迎える前の15億回の鼓動

@touka_jin

第1話

 古今東西。チックタックチックタック。時計の音が頭に鳴り響くー。心音と共に流れる音は寿命の短さを教えてくれる。人間の心臓は約15億回鼓動したら寿命を迎える。そんな世界できみに恋をした。

 人は恋をすると心臓の動悸が止まらなくなる。つまり寿命が縮まるということに気がついた。それでもきみに決死の想いで恋をした。


どんな人を好きになったか気になってる?


友達にもよく聞かれる


自分はいつもこう答える


「名前も知らない人」


一目惚れって思うかもしれないけど、一目惚れなんかじゃない。


答えは絶対言わない。

だって恥ずかしいから。

でもヒントはいつもあげてる。

盛り上がるから。


そう考えながら今日もヒントをあげてる


「変幻自在な人」って。


友達はいつも


「何それ妖怪?」


と言う。あながち間違いじゃないかもしれない。だって住む世界が違うから。


あっちの世界ではきっと水の色、空気の味、持つスマホの感覚も違うんだろうなって時速40キロの雲を眺めながら考える。きっと詩人は雲をみるけど1句読めるんだろうなぁ。自分にはモノクロに見えるから無理に決まってるけど。きっとあの人が好きになるのは国語力が5の人だろうな。んーーそれとも本を読むのが好きな人がタイプかな。自分には文才があればよかったのに。


自分の知らない世界であの人は異性と仲良くしてるに決まってる。きっと一途な人。名前も知らないけど世界がモノクロになるくらいきみに恋をした。いつか告白できるとしたらなんて言おうかな。文字だらけの空間と向き合いながら告白のセリフを考える。


文字だらけの壁に向かって


「名前も知らないあなたを好きになりました」


いや、普通すぎるな。


「違う世界のきみに恋をしました」


ちょっと引かれるかな。


「有限がある心臓の鼓動、全てあなたにあげたい」


ちょっとわかりづらいかな。いっそのことさ


「すきだーーー!!!」


って言うのもあり。


やっぱり好きな人がなんて告白されたいかだよなぁ...


こういう時あなただったらなんて告白されたい?


1回本を置いて考えてみて。


考えた?


じゃあせっかくならその言葉を借りて告白しようかな。


何を言ってるんだ?って思われるかもしれないけど


それが答え。


本を最後まで読んでくれる一途なきみ。


本を1回置いて考えてくれたきみ。


本が好きなきみ。


さっき出会ったばかり。


文字だらけの世界を開いて紙に光を当ててくれたきみ。


この本を手に取ってくれてありがとう。


「                      」



 



       選んでくれてありがとう。

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