Orveidia Online(オルヴェイディア・オンライン)

@Kurage31

Prologue

──その世界は、現実と変わらない「もう一つの人生」を生きるために作られた。


剣と魔法、神話と文明、希望と絶望。


すべてが混じり合う箱庭のようでいて、しかし果てしなく広大な舞台。


その名は、Orveidia(オルヴェイディア)。


世界同時ローンチを間近に控えたNext Horizon Interactiveの社内には、張り詰めた空気が漂っていた。


 


 照明に照らされた白い会議テーブルの先で、一人の男が視線を上げる。天城 蓮──オルヴェイディアの総合プロデューサーである。




「……これが人間の『生き様』を映し出す器になる。それで間違いないな?」


 


タブレットを持つ女性が、わずかに眉を動かした。AIアルゴリズム責任者の白鷺 紗夜だ。


「ええ。NPCは、もう人間と変わらないと言っていい。喜びも、怒りも、悲しみも。生きるために選択するロジックは完璧です」


 


 背後で控える技術責任者のエリック・フォスターが短く笑った。


「逆に、もう制御が効かなくなるかもしれんがな」


「それでいい。いや、それがいい」


天城の瞳に、狂気に近い光が宿る。


「人生なんてそんなものだ。NPCにだって同じじゃなきゃ、この世界は本物にならない」


 


 長い沈黙の中で、スタッフたちの誰も反論はしなかった。


バグひとつ許さないと豪語するディレクターの高科 真砂さえ、その言葉には同意するしかない。


人間が生きるように、NPCも生きる。Orveidiaとは、そういう世界だった。


 


 最後に天城がモニタの中央に浮かぶ表示を見つめる。


そこには、世界同時ローンチまでのカウントダウン。




 【サービス開始まで00時間01分00秒】




「……よし、幕を開けるぞ。この世界に、新しい物語を」

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