気付き
翌朝、携帯を見るとRAINの未読がいっぱい。
ずいぶん盛り上がっていたようだ。
ざっと流し読みしただけだが、木下君とタカミオは昨日の蛇事件から、随分仲良くなったようだ。
驚いたことに木下君はオカルト大好きらしい。
そういう話で盛り上がっていたようだ。
ちなみに奈緒ちゃんは恐がりなので、そういう話が苦手なのに会話に参加していた。
千穂が住む村の小学校は数年前に統合されていて、小学校3年生の時に何人か転校してきた。
奈緒ちゃんもその時に転校してきた。
何があったか知らないが、奈緒ちゃんはその時からずっと木下君に片想い中。
苦手な話題だけど、木下君には絡みたい!と言う奈緒ちゃんの乙女心。
千穂は奈緒ちゃんの根性を、文面に感じた。
あんな騒ぎになったのに休校にならないのっておかしい。
千穂は砂利道を歩きながら思った。
RAINのグループ会話から仕入れた情報だけど……小学校と隣接した中学校のある、村の北側に蛇が大発生だったみたい。
他の場所は歩けないほどではなかったらしい。
学校では蛇の話で持ちきりだった。
オカルトっぽい話もあった。
帰宅中で歩いていた最中だった生徒の話によると、大量の蛇は線が引かれたように一定のラインからは出てきてなかったらしい。
──水槽の中に蛇がいるみたいだった。
自分の立ってた場所には2、3匹しか出てこなかったと言うのだ。
「なにそれこわーい!」
「え、どこどこー?」
クラスは大騒ぎになったが、ほどなく授業が始まり千穂は真面目にノートをとるのに専念した。
この日の放課後、タカミオは蛇のラインを見たと言った女生徒と廊下で話し込んでいた。
千穂はいつも通り、勉強したり読書をして過ごしたがタカミオが図書室に来ることは無かった。
千穂は自分が何故、タカミオが来ないからってモヤモヤするのか自分の気持ちを整理できていなかった。
あの女生徒は顔が可愛い。
タカミオは──
千穂は帰宅後、初めて物に八つ当たりをした。
壁に枕を投げつけた。
ぽふん、と間抜けな音を聞いて、千穂はため息をついた。
きっと自分はタカミオが好きなのだ。
だから、あの女生徒とタカミオが気になって仕方なかったんだ。
翌朝、千穂はまた奈緒ちゃんと学校に通うようになり、放課後もすぐ自宅に帰るようになった。
どうしたら良いかわからなかった。
タカミオとの関係が壊れるのも嫌だったし、自分が拒絶されるのも怖かった。
グループRAINでは、普通に会話できるのにな。
数日後、千穂は足の湿疹にクリームを塗ろうとして椅子の上に右足を乗せた。
「あれ、いつぶつけたんだろ」
湿疹部分が青あざになってる。
痛くないんだけどな……この色、まるで、まるであの時の蛇みたい……。
体育館でずっと足をトントンしてたせいだ、これはただの青あざ。
千穂は首を振り、靴下を履いて、携帯を手に取った。
クラスのグループRAINは殆ど動いていない。
友達グループが動いてるだけだ。
最近は蛇の話からオカルト話。
木下君、奈緒ちゃん、タカミオしか発言していなかったし……優子は滅多に既読をつけないから、そもそもあんまり見ていないんだろう。
澤田君も、全く見ていないようだった。
入院する前は、一人でずーっと漫才してたくらいなのに。
「お母さんに聞いたらさ、10年前の夏もおんなじことあったみたいって言ってたんだよね」
「え、マジ?」
「あったあった、俺覚えてる。幼稚園の頃にあったと思う!」
「これは調べないとだな……」
会話に加わる気にはなれないし、最近は嫌なことばっかり起きているような気がする。
10年前に蛇の大発生があった?
私、引っ越したこと無いからあんな怖いことがあれば、絶対覚えてるはずなんだけどな。
10年前……ううん、お母さんが死んだのは夏じゃないから関係ない。
お葬式の時、秋だったもの。
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