夢、そして新しい人間関係
千穂は最近良く夢を見る。
内容は様々だ。
目が覚めて、夢の内容を覚えてる事もあれば全く思い出せない日もある。
この日の夢は、優子と優子のお兄ちゃん、自分で探検に行く夢だった。
詳細は思い出せないけど、夕方に近い雰囲気の山の中だ。
夢の中の千穂は、「もう帰ろう」と何回も優子達に訴えるが、優子と優子のお兄ちゃんは笑いながら「大丈夫大丈夫!」と奥に進んでいく。
夢の中の千穂と優子は幼稚園児?優子のお兄ちゃんは小学生低学年くらいに見えた。
途中で目が覚めたので夢自体は子供三人で獣道を歩いてただけというものだったが、千穂の寝覚めは悪く……物凄く不安な気持ちになる夢だった。
「まあ、夢は夢だよね。怖かったけど」
千穂はパジャマからセーラー服に着替え、顔を洗うために洗面所へ向かった。
ニキビが出来ないようにしっかり顔を洗い、顔を拭きながら千穂は鏡で自分の顔を見た。
一重のちょっと重たそうな瞼。
鼻も低くはないけれど高いわけじゃない、田舎の子って感じ。
だけど──自分の目はこんなに明るかったろうか?
「どうした?ニキビかぁ?」
背後に機嫌がいい父親が居た。
千穂は場所を父親に譲るため、横にずれながら
「違うよ!ニキビじゃなくて、自分の目がこんなに茶色かったかなって思って」
父親はまじまじと千穂の顔を眺め──。
「母親に似たんだろうな。色の白いところ、目の色が明るいのもお前のお母さんと同じだ」
父親は、しみじみと呟いた。
「顔はうちの顔だけどな。お婆ちゃんに良く似てるよ」
「それは良く言われるー」
「冗談だよ。千穂はお母さんにそっくりだ。お母さんはチビだったけどな。背の高さは俺からだぞ、ありがたく思えよぉ」
父親と久しぶりにいい感じで軽口を叩いてると、継母がじっとこちらを見ている。
背負われている龍巳は珍しく静かに寝ているようだ。
千穂はなんだかとても気まずくなって、朝食も食べずにさっさと家を出た。
いつもより30分早い時間なので、砂利道歩いてるのは千穂だけだ。
奈緒ちゃんとは会えば一緒に行く、というスタイルだったので今日は一人で登校だ。
今日は一番乗りかな、そう思いながら教室に入ると高橋君が既に登校していた。
「高橋君おはよう、早いね?私、自分が一等賞だと思ってた」
千穂は高橋君に挨拶しながら、机のフックに自分のバッグを引っ掛けた。
「うん、うち結構遠いからさ。おじさんが会社に行くついでにいつも乗せて貰ってんの。歩いたら一時間以上かかるからさ」
高橋君は確か、千穂が生まれる前に廃村と統合された村に住んでるって聞いた気がする。
「あー、ダムの村だったっけ。確かに一番遠いかも」
「そうそう、ダムが出来たからさ、爺ちゃん達が元々居た村はもう沈んじゃってて。村の人はほとんど隣村に引っ越したんだけど……あ、ダムの村にね」
高橋君はかるい調子で話し続けた。
「親は東京に居るんだけどさ、爺ちゃんの調子が良くないし、俺も喘息気味だからってことで、俺だけ祖父母の家にお世話になってるんだ」
「そうなんだ!東京かぁ。いいな、行ってみたいよ」
「確かにここって何もないもんなぁ」
「高橋君って」
「あ、タカミオでいいよ。俺もちーちゃんって呼ぶわ」
「え、あ、タカミオくん……?」
千穂は自分の顔が赤くなったんじゃないかと心配になったが、タカミオはこっちを見ていなかったのでホッとした。
「うん、タカミオ、は、何年東京に居たの?」
「中2までだから14年かなぁ」
「ええー、都会の子だったんだ!知らなかった」
タカミオは意外と気さくな子で、東京の色んな話をしてくれた。
都会の話は聞いているだけでワクワクする。
「ちーちゃんおはよう!今日は早かったんだね」
奈緒ちゃんが元気いっぱいといった様子で教室に入ってきた。
「うん、なんか今日はちょっと親と気まずくて」
「そうなの?うちも毎朝怒られるよー、すっごい急かされるから怒りたいのは私の方なのにさ」
うちはそういう感じじゃないんだよね……
奈緒ちゃん家みたく皆仲良しだったらいいんだけどな。
千穂は今朝の継母の顔を思い出し、ちょっと奈緒の事を羨ましく感じた。
優子は相変わらず、欠席だった。
放課後、奈緒と千穂は同じ班だったので掃除当番。
勝手にあちこち向いて上手にホコリを集められない自在箒に苦戦しつつ、千穂は今日見た夢の話をした。
「夢って不思議だよね!あり得ない状況なのに疑問に思わないで見てるもんね」
奈緒はケタケタと笑った。
「私はね、ピーマンきらいなのに夢でピーマン食べてたりとか、幼稚園の時に死んじゃったロビンが普通に居たりとか……」
「確かに!」
「ちーちゃんの夢もあり得ないバージョンだったね!優子って一人っ子だし」
そうなのだ、優子は一人っ子。
お兄ちゃんなんて居ない。
やっぱり夢はただの夢なんだな……千穂はスッキリした気持ちになり笑顔になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます