なんとかネプチューンを生き延びて(スタイリッシュに…?)

神の平手のように、ミサイルがネプチューンをぶち抜いた。

ただし、人生を省みるタイプじゃない。顔の半分を吹き飛ばすタイプだ。


数秒で大地は青い溶岩と焼けた破片の海に変わり、炎と汚泥の柱が空へと舞い上がった。

そこにいた三人の兵士の姿は…一瞬で消えた。


――が、その時。


金属の悲鳴。氷の峡谷の端に、救助ゲートが開いた。

深夜に残ったケバブのように、三つの影が転がり込む。


「宇宙全体の聖母様ァ!」

スティーブンは背中から倒れ込んだ。スーツはローストダック状態。


「……死ね……バカ……」

キアラがその隣に崩れ落ちた。髪は焦げ、ブラは半分ちぎれている。

「だから言ったでしょ?ネプチューンなんて名前の星、踏みたくもないって。響きからして気持ち悪いのよ、エヌ・イー・ピー・ユー・ティー・エヌ・イー、うぇぇ。」


タイズは横に座り、かすれた息を吐いた。

「俺……生きてんのか、それとも内側から燃えてるだけかもな……」


その頃、ALKEN艦内。ロンドはシナゴーグ並みにでかいスクリーンの前に立っていた。

ミサイルの爆発が完了し、システムはチェーンスモーカーみたいにピーピー鳴いている。


「任務完了。」


「よろしい。」

スクリーンにレオナルドの姿が現れた。あごひげが死刑宣告みたいに鋭い。

「完璧な仕事だ、大佐。君とラナ――見事だった。」


ラナはうなずいたが、その目はどこか遠くを見ていた。胸の奥で、何かが静かに燃えている。


通信が切れたあと、ロンドは彼女を見つめて言った。


「金星には行かない。別のものを見つけた。」


「……何を?」


「ゲストロニオ。望遠鏡で何かが動いた。緑のスライムみたいな……正体はわからんが、充分だ。故障を装って進路を変える。レオナルドには知らせない。」


ラナは何も言わず、ゆっくりうなずいた。


――その会話を、誰かが聞いていた。


艦内の一室。足をデスクに乗せ、シャボールを片手に持ったケイトリンが一人。

紫の髪を結い上げ、秘密の送信機を通じてシステムに侵入していた。


「金星は偽装。進路変更。ゲストロニオへ。レオナルドには知らせるな…ね。」


ケイトリンはにやりと笑った。言葉は出さず、グラスにそっと唇をつけた。

そして囁いた。「ロンド……嘘は、あんたの得意技じゃないわよ。」


まるで何もなかったかのように、また一口。


艦の唯一のシャワールームでは、蒸気が立ち込めていた。

キアラは全裸で熱い水に打たれ、光がやさしく彼女の曲線を包み、しずくが肌を音もなく流れていく。


「ネプチューン、だと……?クソ、もうちょっとで丸焼きだった。コーヒー前にしてはまあまあね。」


髪をゆっくり洗いながら、彼女は低く呟く。

「次に“短い任務だよ~”って言ったやつの玉は、スプーンで取るからね。」


その頃、サイドの廊下ではアナが書類を整理していた。そこへスティーブンが現れ、ニヤリ。


「で?報告書は書き終わった?それとも俺が銀河一セクシーすぎて集中できなかった?」


「報告するかどうか、まだ迷ってたとこ。あと、セクシー?むしろ医療案件よ。」


「その顔に溜まった怒り、ほんとすごい。ちょっとは発散しなきゃ。たとえば、ユーモアも髪もネプチューンから生還した俺とかと…?」


彼女は近づき、氷のような目で睨んだ。

「もう一言でも発したら、スーツなしで外に放り出すわよ。」


一秒の沈黙。そして彼はにやり。


「まただよ…あんたが怒ると、俺、興奮しちゃう。完全に不健全だな。」


彼女は背を向けた。少しだけ――微笑みかけた。でも、笑わなかった。


その間、休憩スペースではキンバリーがお茶を手に、タイズをじっと見ていた。

そっと一息ついて、優しく聞いた。


「……だ、大丈夫…かなって、思って。」


タイズは少し驚いた表情で見返した。

「……うん。まあ、なんとか。どうやって助かったのか、全然わかんないけど。」


首をかきながら、ぎこちなく笑った。

「でも……ありがとな。」


キンバリーも微笑み返した。頬がほんのり赤く染まっていた。


その頃、スティーブンは通路を歩いていた。操縦席の方から声が聞こえ、足を止める。


「……新しい兵士がスティーブンの代わりに配属される。地球から三週間後に到着予定だ。」


スティーブンは固まった。目が陰る。


彼はドアを蹴破った。


ロンドはコマンド席で一人。驚く様子もなく。


スティーブンは銃を抜いた。


「俺をクビにするなんて、させねぇ。」


ロンドは静かに立ち上がった。恐れもなく、反応もせず、ただ穏やかに微笑んだ。


「撃てよ、ヨコジョウ。」


――つづく。

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