クーデレ美少女は、どうやら金髪王女と対面してしまったようで

「えっと、ここが……俺の家、です」

「う、うん……」


 ぎこちなく言葉を交わしながら、玄関の前で足を止めた二人。


 他愛の無い会話に華を咲かせていたら、思ったよりあっという間に到着した目的地を目前に、凛音と栞の心臓はもう爆発寸前である。


 一方は、最近拾った異世界の王女を住まわせている自宅へ、初恋の女の子を招いているという事実に。もう一方は、親戚と言い張る見知らぬ女が住む、初恋の男の子が普段生活している部屋に、今から踏み入れるという事実に。ほのかな期待と、大きな不安が入り混じる。


 双方が絶対口に出す事の出来ない思惑を抱える中、凛音はポケットの鍵を取り出して、それを鍵穴に通し、恐る恐るドアノブに手を掛けた。


「じゃあ……どうぞ。少し散らかってるけど」


 そう言いながら、彼はゆっくりと玄関を開き、お客人が先に入るよう指先を部屋の中に向ける。


 その意図を汲み取った栞は、まるでお化け屋敷に入る時のような差し足で、中と外を隔てる段差の無い敷居を跨いで部屋の中に入った。


「お、お邪魔しま~す」


 男性経験が無い彼女にとって、初めて訪れた男の子の家。しかも、初恋相手が一人暮らししているという、素性の分からない女さえいなければ、何か間違いが起こっても仕方が無いような、そんな家。


 柚葉曰く、独り暮らしの男の家は全くの無臭か独特な匂いがするらしいのだが、この場所に限ってはそうじゃ無いらしい。玄関に置かれたディフューザーで、香ってくる匂いはとても心地良い。


 彼女に続き、凛音も自宅へ帰宅して、しっかりと内鍵を閉める。そして、微かに聞こえる住人の足音に向けて声を出した。


「ルリア~!ただいま~!」

「るりあ……」


 親し気に女の子の名前を呼ぶ彼には聞こえないよう、空気に消え入るような声量でぼそっとの名前呟いた栞。


 名前を呼ばれたその子は、軽快な足音を立てて段々とこちらに近付いてきて、ガチャリとドアを開きながらその姿を現した。


「凛音さん~!おかえりなさっ────ん?えっと……この方は……?」


 いつものように、愛想の良い笑顔を振りまいて凛音を出迎えるルリア。しかし、今日はその彼が、見知らぬ女性を連れて帰ってきた。自分とは対照的な、銀髪の女性を。


 突然の出来事に、栞を見つめながらきょとんと首を傾げた彼女。


 凛音は、そんなルリアの質問に答える為、口を開く。


「あ、えっと……俺の大学の友達で、一条栞っていうんだ」

「……初めまして」


 紹介された彼女は、軽く会釈して見せる。


 そして、次は栞の方に体を向けて、凛音はもう一度口を開いた。


「それで、この子が……さっき言った、あーえっと……西野ルリア」

「西野……?」


 たった今思い付いた、ルリアの偽名。もちろん事情を知らないルリアは訳が分からず、少し怪訝な表情で聞き返す。


 だが、凛音としても、懐に仕舞っている設定を書いたメモを渡すまでは現状を伝える術が無い。


 ルリアが察してくれる事を神頼みして、再度念を押すように強調しながら、


「西野ルリア、だよね?そうだったよね……?」

「い、いえ……酷いです凛音さんっ!わたくしの名前はエレオノー──むぐっ!」


 大事な部分では察しが良いのに、どうしてこういう時は汲み取らないのだろうか。


 半泣きで、あの長い自身の本名を言葉にしようとしたルリアの口を、すぐに止められよう予め用意していた両手で咄嗟に塞いだ凛音。


「だああああ!!分かる分かる!同年代で、日本に住んでる女の子と友達になりたいって言ってたもんね!?エレオノーって、母国語で友達になってくれって意味だよね!?」

「んぐ!んぐぐぐぐ!!(いえ!そのような事は一言も!)」

「でも急すぎるよルリア!日本人はシャイなんだ!ほ、ほら!後でゆっくり話す時間作るから、今は部屋の中に戻っておいて!」


 凛音は、暴れるルリアを抑えながら、彼女の体をリビングの方へと押し戻す。


 そして、ドアを閉める直前に、懐のメモ用紙をルリアの右手に握らせて、軽く耳打ちしながら、


「……これ、見といて!バレないように合わせてほしい!」

「……?」


 尚も状況が掴めない王女だが、渡された紙切れを受け取り、一旦大人しくリビングへと戻って行った。


 扉をバタンと閉めて、それを背後に冷や汗を滴らせる凛音。


 嵐が過ぎ去った次の日かのような静けさが、残った二人に重たくのしかかる。


「……すごい仲、良いんだね」

「そうかな?ま、まぁ……向こうが結構フレンドリーだから、それに助けられてるかな!?」

「……そうなんだ。お互いに壁を作らないで、素で関わってる感じがする」

「あーそれは、作りたくても作れないというか……作ってても入ってくるというか……」

「羨ましいなぁ」


 口から漏れ出すようにそっと、栞は心からの言葉を小さく紡ぐ。


「……え?今なんて──」


 しっかりと聞き取れなかった凛音は、その言葉の形を正しく認識しようとするが、彼女は控えめに首を横に振って、


「んーん。何でもない。中……入っても良い?」

「え、あ……うん!ごめん!ずっと立たせっぱなしで!これ使って!」


 少しはぐらかされたような気もするが、しつこく深堀るのもそれはそれで不粋だと思い、念の為買っておいた来客用のスリッパを栞の前に置き、


「じゃあ案内するね!……って言っても、リビングなんてこの先の一つしか無いんだけどね」


 今度は、凛音が先にリビングに入って、それに追随する栞。


 本心で言えば、初めて訪れる男の子の家に興味津々で、辺りをきょろきょろと見回したい気持ちでいっぱいだが、それは中に入ってからバレないようにやろうと、そう考える。


 好奇心的な観点を含めて、高揚感と期待のボルテージが上がっていく彼女の胸中。


 先に入った凛音に習ってそのまま、リビングと玄関を隔てるドアを潜り抜ける。


 そして、全てが目新しい男子の部屋の光景が、栞の瞳いっぱいに映ろうかとしたその時、


「お兄ちゃん!!おかえりなさいっ!」


 目の前いっぱいに飛び込んできたのは、好きな男の子の部屋──ではなく、水風船のように揺れて跳ねる、躍動感満載な二つの豊かな豊かな双山おっぱいであり──


「ルリア!?」

「なぁに!?お兄ちゃん!!」


 ─────────────────


 気付いたら10万文字超えましたー!!


 ぜひこの節目に☆での評価、よろしくお願いします!ー

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