たった1人の親友は、どうやら悩みを打ち明けてほしいようで

「はぁ……」


 平日の昼下がり。部活の無い高校生が、ちらほらと下校している時間帯。


 まばらに聞こえる人の話し声が溶け合い、心地の良い一つの雑音ノイズになっているこの空間──大学の近くにあるカフェチェーンの一店舗で、浮かない表情をした一人の少女が、空気に滲んでしまいそうな無色の溜息を一つ、窓の外を見つめながらそっと吐き出した。


 そんな、銀髪少女の目の前に座っている柚葉は、注文したアイスカフェラテをストローで小刻みに吸い上げながら、様子を窺うような視線で、ブルーになっている彼女を見つめている。


 そして、丁度良く柚葉の乾いた喉が潤った頃合い。ストローから口を離した彼女は、携帯のロック画面を開きながら口を開いた。


「ねぇねぇ栞」

「……うん?」

「栞さ……りおりおと何かあった?」

「ウグッ!ゴホゴホッ!!…………え?!」


 まるで思考を読まれたかのように、確信的な質問を唐突に投げ込んできた柚葉。


 アイスコーヒーを喉に流し込んでいる最中だった栞は、驚きで吹き出してしまいそうになったそれを抑え込み、その代償でせ返りながら、何とか一言だけ言葉を返した。


「だから……りおりおと何かあったでしょって」

「ナ、ナニモナカッタヨ……」

「いや、その反応で誤魔化すのは無理あるから……」


 嘘吐きのお手本のような反応を見せる彼女に、柚葉は目を訝し気に細めながら軽く溜息を吐いて、


「四日前?くらいに、りおりおと何かあったんでしょ」

「な、何で……」


 途中で言い淀んだ彼女だが、何でそう思うの?と、栞はそう聞きたかったのだろう。少なくとも、柚葉はそう理解したし、それに対しての返答をする為口を開いた。

 

「だって栞、四日前くらいからすっごい変だもん」

「私が変……?でもそんな事、他の誰にも言われ──」


 栞がそこまで言った所で、身を乗り出しながら彼女の眼前に人差し指を突き出して、その言葉を遮った柚葉。人差し指の腹を見せてそのまま、少し唇を尖らせて、


「他の人には分からなくっても、ゆずには分かるのっ!!りおりおにばっかうつつ抜かしてるけど、栞歴はゆずが一番長いんだからっ!!」

「わ、私の歴……?」

「そうだよ!!栞と一番付き合い長いのゆずだし、栞の事一番大好きなのはゆずなんだからっ!!!分かった!?」


 恐らく、柚葉としては心底怒っているのだろうが、険しい剣幕で愛を語る彼女に、愛と怒りという繋がりのある矛盾によって挟まれた栞は、困惑しながらも引き気味に頷く。


「え、あ……は、はい……」

「もうっ!全く!!ふんっ!」


 柚葉は、そんな栞の様子に、腕を組みながら鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。


 分かりやすく不機嫌な素振りを見せてはいるが、きっとこの子は本気で自分の身を案じてくれているのだろう。確かに良く茶化してはくるけれど、それ以上に心の底から心配してくれて、最後まで栞の味方でいてくれるのも、いつだってこの子ゆずはだったから。


「ご、ごめんね……柚葉……」


 自分の事で、無駄に柚葉の気を揉ませてしまったのに対し、非常に強い負い目を感じた栞。肩をすくませてしゅんとしながら、謝罪の言葉を口にする。


「むぅ……何が~?」

「えっと……ゆずが心配してくれてるのに、変に誤魔化そうとして……」


 しおらしい表情で、そう言葉を紡ぐ栞。


 そんな彼女に柚葉は、ストローの先っぽをカリカリと噛みながら、バツの悪い顔で、


「……ズルい」

「…………ズルい?」

「ズルいよっ!!しかもメロいッ!!ゆず怒ってるのに!!でも、栞がそんな可愛い顔してたら、まぁいっか!ってなっちゃうじゃん!!」

「可愛い顔って……私は本当に反省してて……」

「分かってるよ!!だからもう怒って無いけど!怒って無いけど……何か上手く丸め込まれた気分なのっ!ハッ!!これがハニトラ!美人局つつもたせ!?」

「ゆ、ゆず……?何を言って……」


 むすっとしたまま、違う方向へと思考が迷走していく柚葉。もはや、何に怒っているのか、自分でも良く分かっていない模様。


 しかし、困惑してオロオロと狼狽うろたえている栞を見て、険のあった表情が柔和で優しいものへと変わり、吹き出すようにクスッと笑いを零す。


「も~、ゆずも自分が何に怒ってるのか分かんなくなっちゃったよ」


 そのまま、彼女は「あのね」と言葉を続けて、


「もし、栞が本当に誰にも言いたくないって事だったり、一人で解決できるって事なら、それは言わなくて良いの。ゆずも無理には聞かない」

「……うん」

「だからさ、教えて欲しいな。栞が今悩んでる事は……誰にも言いたくない事?一人でも、解決できる事?」


 そう聞かれて、思考に耽る為ほんの少しだけ黙り込む栞。


 そして、控えめに首を横に振って、おずおずと口を開く。


「ううん。むしろ……ゆずに聞いてほしい事、かも」

「んへへっ、良く言えましたぁ。ほらほら、お姉さんにお悩み話してごらん?ばっちりちゃっかり解決してみせまう!!」

「もう、ほんとに調子良いんだからぁ……あのね、実はね──」


 そのまま栞は、柚葉の言う通りちょうど四日前に起こったショッピングモールでの出来事を、初めから終わりまで、事細やかに親友へと打ち明けたのだった。


─────────────────


久し振りの柚葉回ー!!

ここだけのお話ですが、個人的に筆者の1番お気に入りの子は柚葉だったり、そうじゃなかったり……


☆での評価よろしくお願いします!

絶賛GAノベルズのweb小説大賞奮闘中です!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る