クーデレ美少女は、想い人と異世界の王女にエンカウントしたようで

 凛音が、異世界王女に膝枕をされていた日。時を同じくして、彼等と同じショッピングモールに来ていた人物が、もう一人。


 セミロングのボブでその毛先を外ハネさせている、無意識に周囲の視線をさらってしまう特徴的な銀髪を揺らした美少女──一条栞いちじょうしおりは、親友である楠柚葉みなみゆずはの誘いを断ってまで、このショッピングモールに一人で足を運んでいた。


 何故、わざわざ一人でここに来たのか。理由はとても単純で、目的を柚葉に知られたら、今まで以上にバカにされてしまいそうだから。それと、目的を果たした後、すぐにを一人で楽しむ為。


 中と外を隔てる自動ドアを通った栞は、早速お目当ての物を探すべく、気持ち足早に三階へと続くエスカレーターへと向かって行く。


 そして、後数歩で勝手に上昇する床に足が掛かるといった所で、彼女は視界の端に見覚えのある人影が映り込んだのに気が付き、ピタッといていたその足を止めた。


「みなみ……くん?と……女の子?」


 すぐに角を曲がって死角に入ってしまった、好意を寄せている相手と思わしき男の子と、その傍らを歩いていた金髪の女の子。


──後ろ姿……凄い南君と似てたけど……でも、隣に女の子歩いてたし違うのかな?南君、彼女いないって言ってたし……


 一瞬しか見えなかった為、人違いだろうと自分を納得させて、無理矢理急ブレーキをかけた右足を、アクセルペダルを踏むように小股で前に出す。しかし、そこから流れるように左足は出て来ず、むしろもう一度体の動きを止めて静止してしまう栞。何故なら──


──ううん、あれは絶対南君だった。見間違わない。見間違う訳が無い。だって……


「好きな人……だから」


 今まで無数にいた、自身のステータスの株を上げる為に近付いてくる有象無象の男なら、そもそも顔すら覚えていないし、何なら全員同じように見える為違いなど分からない。


 だが、凛音は別だ。彼に惹かれてから、気付けばずっと目で追っていた。顔も声もスタイルも、もちろん後ろ姿だって。見間違える訳が無い。そう言い切れるくらいには、絶対的な自信がある。


 ぼそっと無意識に呟いてしまった言葉に、外で私は何を言っているんだろうと一人でに恥ずかしくなった栞は、色白の顔を真っ赤に染め上げながら、一旦エスカレーター乗り場から離れた。


 そして、二人が歩いて行った方向に踵を返して、頭の中で思考を回す。


──でも……本当に南君なら、隣の女の子は誰?彼女いないって言ってたし、一緒に遊ぶような女友達も、私と柚葉以外にいないって言ってたし……


 脳内でそんな事を考えていると、ふと頭の中に名前が出て来た親友の言葉が脳裏をよぎる。


 彼女は確か、こう言っていた。


『良かったね!りおりおが、他の子と関係持って無くて!心でも体でも……さ』と。


 そして、その時に、自身が好意を寄せている相手はそんな軽薄な事はしないと反論した栞に対して、こうとも言っていた。


『え~?男の子なんて分かんないよ~?』と。


 鮮明にフラッシュバックされる柚葉の発言を思い出し、嫌な冷や汗が栞の額をじんわりと濡らす。


「え……ほんとに昨日の合コンで……?」


 柚葉とて男性経験がとても豊富という訳では無いが、少なくとも自分よりは遥かに様々を経験している。そんな、女性として自らより大人の親友がそう言うのだ。凛音がわざわざ嘘を吐くとも思えないが、それでもそれだけで彼女の意見を切り捨てるのには、あまりにも栞自身の男性経験が乏し過ぎる。


「ど、どうしよう……」


 彼の隣を隣を歩いていた女の子が、凛音にとってどんな相手なのか。もちろんその真相は気になるが、もしもの事を想像してしまうと、知りたいけど知りたくない。


──え、しかもここのショッピングモールって、南君の家から割と近い所にあるよね?てことは、もし仮に合コンで仲良くなった女の子なら、実はそのまま南君の家に泊まったっていう可能性も……?


 一度このような思考に陥ってしまったが最後。希望は見い出せないくせに、悪い可能性だけは無限に頭に湧いて来る。


 体を覆い込む不安感に、重たい溜息を吐く栞。


──はぁ……私っていつもこうだな。外面は強気で凛として見せようとするのに、実際はウジウジしてて、不安を感じてもそれに対してすぐに行動を起こせない。


 だからこそ、そんなコンプレックスをわずらわしく感じて、一条栞という少女は昔から、人間関係を無駄に広げようとしなかった。他人の事で悩むのが人一倍苦しかったからこそ、一人でいる事の方が楽だったから。


 今だってそうだ。凛音の本心や、隣を歩いていた女の子との関係など、栞がどうこう悩んだって仕方が無いし、だからといって直接聞く勇気など当然無い。結局、ウジウジと一人で悩んで、その気持ちが晴れるのを待つしかない。


 人間関係や他人の心内など、自分にはどうにも出来ないし、それを知る由だって無いのだ。だったら、最初から不要な悩みを持たないよう──自分の弱さを理解しているからこそ、人を遠ざけて一人の殻に閉じ籠る方が、寂しさを上回る安心感を得る事が出来る。今までもずっと、そうしてきた訳で──


──……ダメ。絶対ダメ。南君は、初めて好きになった人だから。この気持ちだけは、不安から逃げる為でも簡単に捨てちゃダメ……!!


 脳内でそう言い放ち、弱気な自分へ活を入れるべく、栞は自身の頬を両手で強めに叩いた。そして、止まっていた足を、彼等に追従すべく一歩一歩動かす。


 軽い駆け足で二人の事を追い掛けた為、先程視界に映り込んだ後ろ姿に思いのほか早く追い付き、見つからないよう物陰に体を隠す。


「やっぱり南君だ。隣の金髪の女の子は……ん?ちょっと待って。あの二人……手、繋いでる……?」


 しかも、女の子が着ている服は、どこからどう見ても男物。華奢な身体に似つかないあのシャツは、きっと凛音の服なのだろう。所謂いわゆる、彼シャツというやつ。


「……ッ!」


 こんなのもう、凛音と何らかの関係を持った女の子で確定じゃないかと、目尻から涙が溢れそうになるが、奥歯をグッと噛み締めてギリギリの所で耐える栞。決定的な何かを目撃するまでは、この恋心に終止符なんか打てない。


 仲睦まじく歩く二人を眺めていると、突如として凛音の手を引き走り出した金髪の女の子。そのまま、栞が入店した事の無い店に入って行った。


 二人を見失わないよう、小走りでその店の前までやって来た彼女。そして、そのお店の看板を見て、混乱しながら首を傾げた。


「コスプレ専門店……?あの二人、何でこんな所に……?」


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