第34話 殺意

「ギャアアアア!!! ハハハハハ!!! こいつら弱すぎなのです! 私に与えた屈辱を倍にして返してやるのです!」


 楽しそうに笑い喚く喚き。

 ここは影鬼たちの本拠地。そこに俺達は強襲をかけている。


「自分で味わう影読みの味はどうなのです? ギャアアアア!!! ハハハハハ!!!」


 もはや影鬼たちの影読みは喚きには通じない。

 それどころか言葉通り逆に支配している。

 あの特訓の賜物だな。


 しかしここも鬼の隠れ家だな。

 親玉は喚きが叩きのめしているが、それだけだ。

 特に何もない。囚われていた人間も美味しくいただいている。


「大餓。あの『嘆き』は何だったの?」

 美味が一緒に食事をしながら質問してきた。

「あれか。あれは喚き自身が強くなった姿を模してみたものだ。俺が喚きの姿で力を使えば喚きの進むべき道が見えると思ったのだがな」

「本当に虐めてたんじゃないんだ」

「なぜそうなる。自分が強くなった姿を見るのが強さへの近道だと思ったのだがな。喚きのあの反応は正に予想外だ。あれこそ何だったのだ?」


「ならば俺がやって見せよう! 大餓よ! これがお前のしてきたことだ!」


 その声の方を向くと鏡を使って俺の姿を模した喚きが居た。

 力強い赤鬼の体躯に鬼の斧を持っている。あれは喚きの鬼包丁だろう。

「いいではないか。俺の望んだ俺の姿だ。これを見れれば更なる力への道筋が見えるだろう」

「大餓って自分大好きなんだね」

「正直私も引きました。気持ち悪いです大餓サマ」

 喚きが鏡を割って元に戻る。


 なんだその反応は。

 俺の不服が通じたのか喚きが口を開いた。

「大餓サマ。もう一度『嘆き』を出してもらえますか?」

 俺は美味を窺うが止める様子はない。

「確かめたいことがあるのです。私はもう大丈夫です」

 その言葉に嘘はないか。俺は鏡で嘆きの姿を出す。


「どうです喚き。これがあなたが目指す力の行き先です」


「ギャアアアア!!! ハハハハハ!!! やっぱり違うのです!」

「それは? 貴女の目指す先が私にないと?」

「その通りなのです! 私は力が欲しいんじゃない! 私は人間に復讐したいのです! 力はその道筋に必要なだけ! 私の目指すべき場所ではないのです!」

「では力はいらないと?」

「そうは言っていないのです! お前も私の物にしてやるのです!」


 喚きが俺の影に入る。


「ギャアアアア!!!」

「協力してやると言っている相手を乗っ取る必要がありますか愚か者」

「いつか絶対お前を下してやるのです! そしてその力を使って人間どもを皆殺しにしてやるのです!」


 俺は鏡を割ると逆に喚きの影に入る。

(ヒィィィーーー!!!)

 前言撤回だ。お前の殺意は抑えさせてもらうぞ。

「ギャアアアア!!!」


 どこまでも手のかかる奴だ。

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