第17話 鬼牧場

「ギャアアアア!!!」


 それは喚きの喚き声で終わった。

 地面に叩きつけられる巨体。

 鬼ですらも高所からの叩きつけには耐えられないだろう。 

 

 事は簡単だ。俺よりも巨大な鬼が突撃してきた。

 俺は影潜りで巨鬼の片足を地面に潜らせると、

 体勢を崩した巨体に土の塔を立てて高所へ。

 そして風の渦で回転させながら地面に激突という所だ。

 名付けて「影縫土塔落天風渦塵かげぬいどとうらくてんふうかじん!」


 そして消滅していく鬼の体から珍しいものが出てきた。

 鬼の核だ。

 一見弱点のようにも見えるが鬼が死ぬ頃には消えてなくなっているものだ。

 取り出すならば相当慎重に事を運ばなければならない。


 貴重品だが臭いな。鬼の匂いしかしない。

 せめて人食い鬼ならいいが人無し鬼ではな。

 食いでがない核だ。他で使うとしよう。

 俺は金棒の仕掛けを動かすとたこ焼き器のような部分に核を嵌める。

 ここなら格納に丁度いいだろう。


 それを見ていたかのように巨鬼が三体こちらに来る。

 あまりにも機を見過ぎだ。

 こちらの手の内を探る気か。


 俺は金棒で打ち合うと見せかけて影潜りで巨鬼の背後に出る。

 そして金棒の核を起動すると攻撃の瞬間に重さを増す。

 横薙ぎでまず一体。こいつも人無し鬼だ。

 角は期待できそうにないな。


 残る二体を影潜りで下半身まで捕らえる。

 首を跳ね飛ばし、脳天直下を体に叩き込む。

 こちらも人無し鬼だ。手応えがなさすぎる。

 しかし巨鬼の全てが似通っていたが、どこかで量産でもしているのか。


「こりゃ駄目だな。アンタが相手じゃ露払いにもなりゃしない」


 ボサボサ髪の人間の男だ。侍というよりも忍び装束か。

 戦いというよりも暗殺。今は情報収集か。

 話しかけてはいてもいつでも逃げ出せる位置だ。


「気に入らんな。今の人間は鬼を使役できるのか」

「逆だぜ。鬼が人間を使役してるのさ。俺もその一人だ。そいつらもな」

「人が鬼に飼われて鬼牧場と化しているのか。哀れもそこまでくると喜劇だな」

「なんだと? 無頼の鬼が吹くじゃないか。その哀れな人間に狩られるお前はなんだ?」

「俺は鬼だ。人間だけが鬼を討つ。鬼牧場の家畜が自分を人間とほざくのは片腹が痛いぞ」

「・・・お前が、いや、アンタも鬼牧場の牧場主になる気はないか?」

「犬の戯言は俺の耳に届かんぞ。まずはワンと泣け」

「泣くのはお前だ。赤鬼。お前の吠え面を鏡に写して見せてやる」

「やってみろ。お前が人間ならな」


 ボサボサが刀を抜く。これは普通の刀ではないな。

 デカイ口をほざくだけの事はある。

 鬼牧場の鬼侍よりは歯応えがありそうだ。



Tips

人無し鬼

人間を食してない鬼。基本的に人を食わない鬼は筋力があるだけの人間と変わらない。

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