山の景色。
taiyou-ikiru
第1話
ヤマは見ていた。
朝、日が昇ると麓で木が、根が、葉が、活動を始める。揺れ、揺れ、数枚舞い降りる。それがやがて地へと帰りて循環する。水はそれを支える。麓までただたくさん滴り、滴り、麓まで降りて、皆の資源となりて支える。ざーーと景色に馴染んで回っている。それを鹿はくいと飲んで、人間は井戸を作って木は根から吸っている。木はあるものを活用しているに過ぎない。ただそこに存在している元素で木を構成する。具体例にそこにあるイチョウの木を例に出そう。昔、この木は小さかった。幼木と言われるものだった。それはぐんぐんと日一日と成長して、(偶に生き物がちょっかいに木を削って)今日まで育ってきた。前述の生き物はシロアリとキツツキであった。ただ巣の様な場所が欲しくて来たのであった。シロアリは根に、キツツキは幹にそれぞれ巣を作った。生物工学的にそうなった巣であった。シロアリはたくさんの家をまず作った。家をたくさん作ってそこを場所とした。場所には活用法を与えた。)それがシロアリだった。キツツキは選別した木の中からこのイチョウの木を探し当てた。理由は明確でただその木が周りからの視認が悪いからだ。キツツキの巣は暗い。故に光が遮断されて陰気が舞って好く山に馴染んでいる。これが彼らの生物的観点の巣だ。ほら、現に近くに今も存在している。朝に気づいてようやく長い夜から脱却せしめて、シロアリは枯れ葉の中に潜んで、親キツツキは雄大な空に真っすぐの方に落ちている親キツツキはより高いところへと食料の出張へと自然に誘われた。そこは朽木と彩色豊かな好条件な所であったからである。キツツキは朽ち木から器用に毛虫を取り出し去っていった。ここは非常に豊かな樹木が生い茂る、生に富んだ場所だった。今、ノネコが野草に掴まっている蟷螂を見つめて膠着状態でいる。風がふぅと全体に吹く。それが合図にノネコは掴みかかる。寸前のところで蟷螂は跳んだが、ノネコは一枚上手二回目の旋回でようやく仕留める。暴れる蟷螂を口で嚙みちぎり食事を始める。のそのそと食い散らかし、やがてノネコは上へと、巣へと戻っていく。その最中には一つ糞がただ敷かれていた。巣は数多の野草で隠され朽ち木の中に秘密がある。曲がりくねり、奥の穴に、ノネコはそこに入ると眠りにつく。山のここは大体暖かい。野草に富んだ草原を表すような広くてある種焼け野原の後である。実際そうだ。風が吹いた。強い風でごうと鳴って轟くような主張を拭く。ヤマはそこから風景を覗いた。あそこには田園が広がっていてまた違った色合いが存在している。この山は一度燃やされた。人間が来たかと思うと野に火を払い野がごうと火種になってそれが気に燃え移った。そうして一日を終えるとすっからかんな灰に塗れて少しの生物が居た。 それから新しくいつも通り草木が育って木が生えていつも通りとこの様に、野原へと成っていった。野原は今日も風に吹かれ折り紙を扇風機に充てたような挙動で野草がぼうぼうとしている。すると遠くの小森で猪が地面を蹴って獣道を速く駆け上がっている音がこちらに聞こえた。ヤマは猪めがけていく。猪は水を目指していく。やがてある泉へと辿り着いた。 泉と言う山の雨漏れは貯蔵庫の様なもので、ただそこに佇んでいる。水面が太陽に照らされ金色の反射光を猪に、そして全てに浴びせ、ただ、ただ、ただ、 居る。猪は苔に塗れた石に足を置き、姿勢を屈めて水をとぷとぷと飲む。すると踵を返し、また上へ上へと駆けてゆく。泉は風で姿勢をずらし、少しだけ水が零れた。猪は次は逸れた仲間の元へと向かっている。道中は至って丁寧に圧縮された地面でただただ駆けてゆく。
幾分か猪は駆けていると仲間の元へと辿り着いた。気が付いた一匹は此方へ近寄る。そうして猪は森へと紛れていく。辺りは雪が悉く散らしてそこにへばりついている。もう山頂へとだいぶ近づいてきた。すると上から桃が落ちてきた。原を見ると、鹿が桃を拙い背丈で押していた。ヤマは鹿にいった。鹿は桃を齧り中の甘い蜜を食べる。ぺろ、ぺろ、と下に接させ丁寧に食べている。それが終わると途端に斜面を足で駆けて、駆けて駆けて、より上へ上へと昇っていく。もう頂が見えてきた。ここらには生物も、木も潤沢など知らないようで、雪が層になって積もってそれが一つ主になっている。 頂に着いた。頂は霧隠れの様な雲に騙されて覆っている。もう生物も、植物も、居ない。
ふと、遠くを見るとそこは荒廃した灰が白飛びしている街があった。紛争の跡が見える。鉄筋はその構造を露わに、壊れ、ただ人の死骸がのさぼり、落ちている。違う景色を見ると明かりが灯っている街があった。建物には灯りと人の影が蠢いている。ただ葬儀が起こっているところが見えた。生まれた命も見えた。ふと、上を見ると魂が還っているところが見えた。おはよう。そして、おやすみ。
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