第33話 騙し合い
「お初にお目にかかります、マグラーナ王、私はレスティーナ王の孫娘のフィーファ・レスティーナと申します。」
「遠路はるばるよくお越しになった、フィーファ姫、私もそなたの来賓を心待ちにしていたよ、」
マグラーナ城の王の間にてフィーファとマグラーナ王は互いに社交辞令の挨拶を交わしていた。
「聞けば既に勇者アノスとは友好を育んだとか?我が国が誇る守り人は姫君からしたらどう映られたかな?」
「はい、とても勇ましく威厳に満ちた殿方でした、是非これからも懇意にして頂きたいですわ!」
フィーファは頬を赤く染めいかにも勇者に骨抜きにされましたと言わんばかりの表情をつくる。
王が勇者の洗脳能力をしっているかどうかがわからない以上ここでも洗脳にかかってるフリはやっておかなくてはならない。
シェインはフィーファの後方に控えながらもフィーファの演技に内心うわぁ~とドン引きしつつも同事に女って怖ぇとフィーファの演技に感嘆と畏怖を同事に感じていた。
「ホホホ、そうかそうか、勇者殿も喜ばれよう、フフ」
コッチの王様もあからさまに露骨な態度を取っている。
王様なのに腹芸に向いてない所は成る程愚王などと呼ばれる訳だと納得してしまう、まぁ、当人にとっては遺憾そのものだろうが。
「せっかくやって来たのだ、我が城の中で羽根を伸ばしていかれるとよい、何でも遠慮なく申すがよい、直ぐに用意させるぞ?フフフ」
「ありがとうございます、ご好意痛み入りますわ、なのに私、これ程に手厚く持て成してもらっているのに、申し訳ありません、手土産の一つも用意出来なくて…」
「かまわんよ、波乱に満ちた旅路と聞く、どうかこの国で英気を養い、疲れをとって行くがいい。」
「ありがとうございます!マグラーナの王様」
フィーファの営業スマイルに王様も満更ではない様子で表情がイビツに歪んでいる。
フィーファは王様からしたら年端もいかない小娘だろうがその美貌は年の差などものともしないレベルだ。
王様を幼女趣向の変態にしてしまっても不思議じゃない。
そう思うとフィーファもよくやるよと思う。
勇者のヤツにもし洗脳されてたら勇者に何されてたかなんて想像したたけで怖気が走りそうな物なのに…。
それだけ彼女の覚悟は固いのだろう。
そんなことを考えてると王様は思いがけない事を言い出した。
「それからフィーファ姫、差し出がましいようだが一つ気になった事を伺ってもよろしいかな?」
「はい?なんですか?」
「その少年は?」
「あぁ、彼ですか?彼はシェインと言って今は私の近衛を任せています。」
フィーファから挨拶してという意図をこめた目配せがあり俺は簡素な挨拶を王様へと返す
「シェインです。」
フィーファがジト目でコチラを見てくる、
なんかお気に召さなかったようだ。
「ふむ、いささか近衛としては頼りないのではないか?どうかな?姫?なんならコチラで専任の騎士をつけよう、その少年よりかは役にたとう。」
などと言ってきた、実に失礼な話しだ。
まぁ無理もない、あのおっさんからすれば俺はたかだか14のガキだ。
子供は舐められるもの…それは異世界でも現世でも変わらない不文律だ。
「仰りたい事は理解出来ます、彼は未熟で猪突猛進なところもありますからね、」
酷い言われようだ、正直かなり凹む
「ですがここまでの道のりで私は彼に幾度も命を助けられました。ダークエルフの追っ手からも何度も助けられました。」
「噂には聞いていたがやはりダークエルフ、イノセントが噛んでおったか!解せぬ連中だ!何を考えておるかわからん奴等だ!やはり亜人の国など我等列国五大国家には不要よな!」
いけしゃあしゃあとよく言えるものだ、イノセントに汚名を被せレスティーナと仲違いを画策したのは多分この王様の策略だろうに、コチラが既にレイラから聞いてるとも知らずに言いたい放題だ。
「えぇ、ですから私はシェインの力を評価しています、申し出は大変ありがたいのですが…」
「……」
王様は渋い顔をしている、思うように事が運ばず苛立っているのが顔を見れば手に取るように読み取れる。
だが俺の顔をチラッと覗き見ると何かを得心したのかフィーファに向け話しだした。
「そうか、それは残念だが仕方あるまい、まぁその少年以外に近衛が欲しくなれば直ぐに申すが良い」
王様が露骨にシェインを見下しているのが見て取れる。
こんな子供に何が出来る、どうせ直ぐに泣きついて来るだろうとそう判断したからこそ自身の好意を蔑ろにしたフィーファの言葉にも寛容に答えたられたようだ。
全く舐められたものだ。
さっきから妙にイライラすると思ったがこのおっさん…ブラック企業に勤めていた頃の課長に似てるからか…。
そうこうしていると王様はもう話す事も無いのか俺達は開放され王の間を後にする事となった。
入る前は二人共緊張してガチガチだったが王様自身に良くも悪くも貫禄とか威厳といったものが無かったため緊張する事が無かったのは果たして俺達にとっては僥倖だったのかどうか。
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