第14話 亜人の国の王女
「彼女が件のお方、イノセントの女王、ラミュア様だ、」
「あなたが…」
「いかにも僕がイノセントの王…ラミュアだ、もっともコレは偽名でね、今は故あってこの名で通させてもらっている。」
「はぁ…そうですか、」
「ははは、いきなりこんな事言われても困るかな、偽名を使う重い女、関わりたくないって思ったかな?」
「えっ!?あ、いやその、そんな事は…」
「無理しなくてもいいんだよ、面倒くさいと思ったら遠慮なく面倒くさいって言ってくれたらさ」
「…その、正直…はい」
「……意外と正直じゃないか、 好きだよ?君みたいな子は」
「すまないねお姫様、これでラミュアさまは嬉しさの余り少しはしゃいでるんだ、今日と言う日を心待ちにしてたみたいでね、」
「レニィ!?」
「本当の事でしょ?わざわざこんな所に高位魔法で屋敷まで建ててコチラの苦労も理解してほしい。」
「ホントいい度胸してるよね、君は、仮にも僕は一国を束ねる王なんだよ?もう少し敬いかしずき
密かに憧れていた亜人の女王がこんな残念僕っ子女だったとはとフィーファはなんとも形容し難い感慨に捕らわれていた。
しかしこんな茶番を見にこんな所に来た訳ではない、気を引き締めフィーファは漫才に興ずる二人に割り込む事にした。
「あの!」
「あっ?ゴメンね、ちょっとふざけすぎたかな?
僕としては少しでも君の緊張をほぐしたかったんだけどね?」
「緊張を?そうだったんですか?」
「そうそう!まさか女王たる僕がそんな小さな事をネチネチ言うわけないじゃないか、なははは!」
「………」
既にこの数分のやり取りで女王ラミュアへの畏敬の念はフィーファから消え去っていた。
それでも尚油断してはいけないと思うのは彼女から感じる膨大な
「さて、じゃ単刀直入に言わせて貰うと君が僕達に聞きたいのは君にちょっかいをかけてる者の正体が僕達なのではないかという疑問だよね?」
「!?…はい……。」
「簡潔に答えるなら答えはNOだ、僕等は君が体験した一連の事件にたいして一切関わっていない、むしろ、僕等も被害者といっていいだろうね、」
「は?被害者?そう言えばレニさんも同じような
「レニをレニと呼ばないで貰えるかな?」
……こ…へ?」
「申し訳ないがレニをレニと呼んで良いのは僕だけなんだ、他の者はレン、ニーズブルーからどの様に名前を変えて呼んでも構わないがレニと呼ぶ事だけは許さないよ?」
「済まないね、お姫様、内のボスは所謂メンヘラ女なんだ。で申し訳ないがコレからは俺の事はレンとかその辺りで呼んでくれると助かる。」
「はぁ…、はい、そうさせてもらいます…」
フィーファは先程からのラミュア女王とのやり取りに心の底から疲労感を感じていた。
大きな事を成した偉人には変わり者が多いと言うがまさに彼女はそう言った例に漏れず変人でオマケにメンヘラ気質も持ち合わせているようだ。
デタラメな人物という印象を彼女に持つもコレもラミュア女王の計算尽くの言動ならその策士ぶりも大したものだと感心の一つもすると言うものだった。
だが今は彼女から情報を引き出す事が先決、これ以上横道にそれてはいつまでも本筋に入れないとフィーファは改めてラミュア女王に向き直る。
「それで被害者とはどう言った意味なのですか?」
「簡単な話だよ、君が体験した一連の騒動…。その原因を僕達の仕業に仕立て上げたい勢力がいる。
「その話を信じていい根拠は?私は実際に命を狙われているのですよ?にわかに信じて手痛いしっぺ返しを食らいたくはありません」
「たしかにね、でも考えてみてほしい、逆の立場から見ればわかるだろうけど僕達が君達に嫌われる様な事をしてもメリットが僕等には何も無い、損するだけなんだよ。」
話に一区切り入れるとラミュアは改めて話出す。
「僕の……、僕達の国はようやくの思いで列国五大国家の一つに数えられるまでに大きくなった。
その道のりは簡単ではなかったよ。
いくつもの金と時間、そして人びとの犠牲の上に成り立つ成果だ、決して軽視してはならない。
イノセントという国は僕達の絆で成り立っているんだ。
絵空事、きれい事、そんな風に思う者もいるだろうけど僕はこの絆を掛け替えの無い宝物と自負しているよ。」
「………。」
「人は人の助けなくては前を向けない。
彼等の信頼が無ければここまで来る事なぞ到底不可能だったさ。
僕にとつて国は家族なんだよ。
その家族を失う愚行などどうして出来る?
僕はもう失いたくない。
だからもう絶対に失敗はしない、いや、出来ないのさ。
だからこそデメリットにしかならない行動など起こせるハズがない。
今この時にレスティーナに攻撃するなどと馬鹿げた事をする理由も余裕もどこにもないんだよ、僕等にはね。」
「………。」
とぼけた厄介メンヘラ女と言うのがラミュア女王に対するフィーファの真っ当な評価だったが彼女はれっきとした女王としての人格をもった女性だと改めさせられる。
彼女は自身が収める国の長としてしっかりとした覚悟と信念を持っている。
その彼女が今回の一連の出来事に巻き込まれた事をどれだけ遺憾に思っているか、フィーファに疑われている事をどれだけ不愉快に思っているのか。
フィーファには想像も出来ない事だろう。
「ではラミュア女王はこの騒動の黒幕が何処の誰なのか知ってるというのですか?」
「確証は持ってないけどほぼ間違い無いだろうというくらいのあたりは付けているよ、」
「それは…誰なのですか?」
「それは君がもっとも……
「フィーファ様!!」
ラミュアの言葉に被せるように屋敷の扉を突き破り侵入してきたのは赤髪の女槍使いレイラだった。
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