第4話 初陣
ゲートは、駅の裏手の小さな寂れた公園の上空にできていた。
近くのスピーカーからはゲート出現を知らせる警報が鳴り響いていた。
『ゲート出現!ゲート出現!魔物の出現を確認しました!近隣の皆様は直ちに安全な場所へ避難してください!これは訓練ではありません!!』
派手な装飾が施された漆黒の門。大きく開き、靄のような魔力が漏れ出ている。
その門の縁に手を掛け、現れたのはオーク。さらに、その後ろを続くのは無数の背の低い緑色の人型の魔物……『ゴブリン』だった。
「早く終わらせる……人に見られる前に」
私はブーツの音を抑えながら、公園の中心へと歩みを進める。
この時点で、魔物共は私の存在に気が付いた。
《魔法少女か……丁度良い。こいつを捕まえたら直ぐに戻れるぞ!》
相変わらずの醜いにやけ顔。しかも今回はオークだけではない。後ろのゴブリン共まで似たような顔をする。
激しい嫌悪感と殺意が、私の中に広がっていく。
《行け、お前たち。なるべく傷をつけるなよ》
オークの言葉を聞いたゴブリンが、棍棒を振りかぶりながら飛び出した。
反射的に後退しつつ、召喚する銃をイメージしつつ、私は掌に魔力を集中させる。
瞬時に現れたのは、30cm程の短機関銃。
召喚したのは、『Vz61 スコーピオン』。
冷戦時代にチェコスロバキアで生産された護身用サブマシンガンだ。
それを両手に1丁ずつ……計2丁。
7.65mmの銃口を、向かって来るゴブリン共に向け、迷わず引き金を引く。
一閃。
閃光と連続した銃声が夜を裂き、合わせて60発の.32ACP弾がゴブリン共を吹き飛ばす。
その光景を見たオークが狼狽えた様子を見せた。
《あ、ありえん……そんな武器で、我が同胞を葬るなど……》
本来、人類の銃火器は魔物に傷を付けることはできない。
だが、私の銃火器は別だ。
私の魔力で作り出し、私の魔力が込められた弾丸なのだ。魔物に傷を付ける事くらい、簡単にできる。
「……やっぱり効いてる」
吹き飛ばされたゴブリン共は、塵になって消滅していく。
そして、その光景を見ていたゴブリン共が、怒りの様相で次々と飛び出した。
「数が多い……【AK47】……これはどう?」
スコーピオンを消しつつ、召喚したのはソビエト連邦のアサルトライフル。
銃口を向け、引き金を引くと、連続する銃声が響く。弾丸が魔物の身体を貫き、肉片が飛び散る。
ゴブリン共の悲鳴が響くが、それでも発砲を止めない。
30発の7.62x39mm弾を撃ち尽くし、マガジンを交換してもう一斉射。
追加された30発の7.62x39mm弾が後ろにいたゴブリン共の体を抉っていく。
銃声が止んだ時、残ったのはオークだけとなった。
《おのれ……よくも我が同胞達を……許さんぞぉ!》
激昂しながら前進するオーク。その顔はゴブリン共よりも怒りに満ちていた。錆びた鉈を滅茶苦茶に振り回しながら接近して来る。
ここは下手に連射するよりも、一撃で仕留めた方が良いだろう。
「それなら……こっち」
AK47を消して生み出したのは、アメリカのリボルバー、コルト・パイソン。照準を合わせ、引き金を引く。
激しい銃声と共に.357マグナム弾が飛び出し、オークが振り回していた鉈を真っ二つにし、さらにその眉間に風穴を開けた。
オークは、崩れ落ち、塵になって消滅していった。
ふと見ると、いつの間にかゲートは消えていた。
私は一瞬呼吸を整え、ペンダントに手を当てて変身を解除した。
「……これが、魔法少女としての戦い……その始まり……」
ポツリと呟いき、急いでその場を離れる。
ゲートが出現してから10分は経っている。そろそろ魔法少女が現れてもおかしくはない。
見られる訳にはいかない私は、ペンダントをポケットにしまってから急ぎ足で公園を後とにした。
◆
「あれれー?おっかしいなー。確かにこの辺でゲートが出現したはずなんだけどなー」
霧華が去った僅か数分後。数人の魔法少女が公園の真ん中に立っていた。
ゲート出現を感じ取り、変身して急行したは良いものの、やって来た場所にはゲートも魔物も、ましてや魔力すら残っていなかった。
「まぁ良いんじゃない?魔物がいないならそれに越したことはないし」
「そうそう。さ、早く戻らないと。ファンの人達を待たせてるんだから!」
深く考えずに、魔法少女達は今来た道を引き返していった。
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