日日
まも
日日
普段と何一つ変わらない、いつもの帰り道、帰宅部の僕は、まだ日が高いうちに家路につく。
形態化したいつも通りの日常をなぞるように、玄関の扉を開き、靴を脱ぎ、家に上がった。
けれど今日は、喉の渇きが妙に気になってしまった。普段なら気にも留めないだろう。でも今日はそれが引っかかった。
仕方なく足早にキッチンへ向かい、食器棚に手を伸ばす。瞬間、空間がぐにゃりと歪む 。
触れたコップが、僕の手をすり抜けて床に落ちていった。
コップの砕ける音が、静かな部屋にやけに大きく響いた。
歪みが渦を巻いて僕を飲み込んでいく。怖かった。
日常とは思ったよりも脆いもので、ふとした瞬間に簡単に壊れてしまう。
人間がいつか必ず死ぬように、日常にもいつか必ず終わりが来る。
その怖さを押し殺すように、いつも通りを、ただ機械的に演じた。
平凡で、平均的な人間でいることが、いつもと変わらない日常を保証してくれると、そう信じていた。
――なのに、コップが割れた。
日日 まも @mamo921
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます