のじゃロリ大魔法使いと北海道でゆる~い日常。~変人揃いのオカルト研究会を添えて~
レモン塩
第1話 のじゃロリ娘は突然に
マッチングアプリ。それは現代では出会いの標準とさえ言われる。
学生の身ながら、俺もついに手を出した。
20歳の誕生日から一か月。ようやくアプリを入れる決意を固めた俺は、好みの条件を入力し始めていた。
その瞬間、画面が正視できないほどまぶしく光った。
「うおっまぶし」
何かのバグだろうか。いや、そんなこと気にしている場合ではない。
まだ見ぬ出会いが俺を待っている。ということで俺の意識は再びスマホの画面へと戻る。
まずは身長……あれ、「低」しか選べない。まあいいや、別にそこは気にしていない。
次に髪の長さ……「銀髪ロング」だけが選択できる。限定的すぎるだろ。
しかも銀髪ロングって、そんな人間日本に実在するのかよ。
なんだか逆に面白くなってきて、次の選択に進む。
瞳の色……って、普通こんなことまで選ぶのか? 明らかに流れがおかしくなってきた。
相変わらず選択肢は一つ。今回は「アメジスト色」。
さらに現実離れしてきた。
そして次の項目は職業だ。変なわくわくが止まらない。
プルダウンの入力欄をタップすると「魔法使い」の文字列。
どんな奴とマッチングさせる気だよ。
そこから下は空白だ。右上の決定ボタンが入力完了を示す赤色に光っている。
このアプリ、明らかにおかしい。
だが、だからこそ、気になってしまう。好奇心を引かれてしまう。
そして数分迷ったあげく、俺は決めた。
「よし、押すか」
決定ボタンに指がかかり、ボタンが濃色に変化してタップされたことを示す。
何も起きない。
ふう、とため息をつき、瞬きをした。
変なアプリに騙されて終わり。そのはずだったのだが……
目を開くと、眼前に美少女が出現していた。
腰まで届く長い銀髪。どこか怪しい光を放つアメジスト色の瞳。漆黒のローブに、極めつけはその背丈だ。俺の胸くらいまでしかなさそうに見える。
そして何よりわからないのは、その美少女が俺の部屋のど真ん中に顕現したことだった。
それも、よりにもよって作りかけのガンプラの上に。
「なっ……なんだお前!?」
「あいだだだだだ!!!」
ガンプラを組み立てていたローテーブルの上で、足を交互に上げ下げしてぴょんぴょん飛び跳ねる。
所詮一人用の小さなテーブルだ。そんな場所で暴れれば、何が起こるかは火を見るより明らかだ。
ぐらり、と少女は仰け反るようにバランスを崩す。
「ぬおっ!?」
「おい、バカッ!」
慌てて手を差し伸べるが、間に合わない。小さな頭は無慈悲にテレビ台の角へと吸い込まれる。
ゴン、と鈍い音がして。
「なんでだよ!!」
そこには頭の形にくりぬかれたテレビ台と、無傷の銀髪少女が転がっていた。
情報量が多すぎる。何? 白昼夢でも見てる?
「おぉ……こちらでも使えるもんじゃな。死ぬかと思ったわい」
「……お前、誰?」
ぱんぱん、とほこりでも払うように尻を叩きながら起き上がる少女。
名乗りなれているのか、無駄に胸を張って言葉を続ける。
「わしは、メロー・メソドロジー。魔法使いじゃ」
「チェンジで」
「失礼じゃろ! こんな美少女が押し掛けてきたというに!! おぬし不能か?」
「どちら様か知らんが、帰れ帰れ。ありえんだろこんなの。夢だよな? 悪夢を見てるんだよな?」
「バカを言うでない。こんな極上の夢があるものか。おぬしのような坊主の夢にはもったいないわ。頬を張って気づかせてやろうか?」
こんなディテールの夢があるわけないだろう。明晰夢どころの話じゃない、あまりにも現実だ。
にしても、意味が分からん。こいつ、どこから来た?
天井を見上げる。くすんだ白だ。特に穴は見られない。
次に窓を見る。明らかに閉まっている。つまり、密室だ。
「お前……マジで何なの? 金ならないぞ? ハッ、まさか俺の体が……?」
「違うわ! 誰がおぬしの貧相な体など狙うか!! うぬぼれも大概にせい!」
「じゃあなんだよ、ガンプラ壊し屋さんかお前は」
「ああ? なんじゃその……ナンプラとかいうのは」
「魚醤を踏んでたら今ごろ異臭騒ぎだよ。ガンプラ、プラモデル、わかるか?」
妙に大人びた話し方だったが、意外と見た目相応の年齢なのかもしれない。俺は小さな子に諭すように問う。
「いや、わからんのう。踏んで痛かったことだけはわかるが」
「それもわかんなきゃ幽霊だろ。……なんなんだマジで、どこから出てきたんだよお前」
「先ほどからお前お前と、無礼じゃぞ。メロー様とよべい。それに、おぬしの名を聞いておらんぞ。名乗られたら返礼するのが人の道じゃろう」
「テーブルに着地してきた奴に礼儀を説かれたくねえよ……あー、俺は五ツ谷 ライト。20歳で、大学生」
「おお、学問の求道者か。それは感心じゃ」
「いや、そこまでじゃないが……」
「まあよい、わしも年齢やら諸々伝えておらんかったな」
そこでメローはこほんと前置きして。
「わしは本年220歳で、魔法研究を生業としておる。此処に来たのはおぬしの持つ携帯端末とやらをちょろっと細工させてもらってな、異世界からはるばるやってきたのじゃ」
そんな、到底信じられないことを言ってのけたのだった。
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土・日曜日の21時頃に投稿予定です。
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