告白の道徳授業 ― 17人の真実 ―

奈良まさや

第1話

『告白の道徳授業 ― 17人の真実 ―』


プロローグ:雨と沈黙のはじまり


梅雨の午後。湿った空気が教室にこもっていた。窓の外では、霧のような雨が静かに降り続いている。


17人の生徒が、いつもと違う緊張感のなか、椅子に腰を下ろしていた。新任教師の田中翔は、黒板の前で一呼吸おいて口を開く。


「今日は“道徳”の授業をします。“後悔していること”“誰かを言葉で傷つけたこと”について、ペアで話し合ってください」


静寂。生徒たちは戸惑い、互いに視線を交わすが、誰もすぐには動けなかった。


田中は微笑む。


「大丈夫。あなたたちが話すことで、心の中の何かが少しだけ変わるかもしれません」


しかし、この授業は——普通の道徳ではなかった。


この教室は、かつての林間学校の夜に“切り離された時間”の中にある。7年前、森で起きたあの事件の真相が、いま静かに暴かれようとしていた。


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