風薫の過去2 感応の人・念の人
その後、なんだかんだ言いながら
男はうちに転がり込んできた
色々な本を読んでいる人で洗脳術も身につけていたようだ
その頃の彼は自分勝手でまるでヤクザのようだった
本当に以前は組に所属していて片腕、片肩には彫り物が入っていた
私は恐怖と冷静を繰り返し毎日、過ごしていた
男を信じていたわけではなくその言動からどうしても大人としてみられなかった
まるで甘えているだけの手に負えない小中学生
他人の褌で相撲を取るような男にとても愛や信頼感など持てなかった
この人も私と同じ親の犠牲になったんだ
と考えたら同情みたいなものも生まれた
恐怖や疑心暗鬼、
自分でも何をしたら良いのか解らないまま二人して毎日のように支部にも行った
どうしたらここから抜け出せるのかを考えても動き出すことが出来なかった
言葉や実際の暴力で洗脳されていたのか、催眠術にでもかかったような感じだった
男は他人には私のことを「あいつから告白されたから付き合った」と言っているようだった
もう、何を言う気にもならない
自分はいつも正しい人間という態度だった
男はある日、言った
「こうして一緒に暮らしていると数年で内縁関係が認められるんだ」
そういう言葉で
「やっぱり家とか私の収入が目的なんだ」と確信した
ストーカーによる殺人事件も当時あったけれど
こんなんじゃ当人はどうすることもできないわね・・・
被害者の気持ちがよく解った
どこまでも身勝手な迷惑な男に捕まってしまって
「この人は狂ってるから下手をすると実家に放火されるかもしれない」と考えるようになり、暴力を振るわれても毎日、罵詈雑言で責められてもただ、いつもと同じ生活を繰り返した
これも私が我が儘で元夫にきちんとやるべき事をしなかったから
罰が当たったのね・・・・
風薫はいつものように自分を責め出す
何度目かの暴力を受けたとき
ボコボコにされて男は包丁を取り出し、
「これで俺を刺せ」
と言った
「冗談じゃないわ
何で私が犯罪者にならなければいけないのよ」
信じられない問答が続く
男は今度は受話器を持って警察に通報した
その時は警官二人がバイクで来たのだったか?
警官に訴えるように促されたけれど私は拒否した
「人の人生を左右するような(前科がつくような)事はできません」と伝えた
「ただ、出て行ってくれたら良いです」
と伝えたら警官は親を呼んで話をした
男は親と一緒に帰ったはずだった
だけど、しばらくすると戻ってきて裏庭のガラスを叩いた
携帯でまた、なんだかんだと言い出し、着替えやら必要なものを取りたいから中に入れてくれという話だった
私は二階のバランダからバッグに詰めた衣類を落とした
男はずいぶん粘っていたけれど埒があかないと判断したのだろう
外のガーデンテーブルを持ち上げて大きなガラスを割った
犬たちもいるのに
犬の怪我より自分の欲望が勝っていた
私は警察に通報した
先ほどの男が戻ってきて今、ガラスを割ろうとしています
「殺される・・・」と叫んだ
それから侵入してきた男にボコボコに殴られて蹴られて
「お前のようなバツイチのババアなんか、誰が相手にするんだ」
と馬乗りになって罵声を浴びせた
パトカーは何台も必要ないくらいたくさん来た
近所には知れ渡ってしまうわね・・・
これからどうやって生きて行けばいいの・・・・
私はただただ、泣き続けた
救急車の中で警官に男を訴えるように言われたけれど
やっぱり拒否した
人の運命を変えてしまうのが怖かったし、報復も恐れたのか?自分でもわからない
それも男の能力なんだろうか
父親も来たけれど(警察は帰ってしまって)男が病院まで一緒に行くというのでそのまま帰った
「何でこんな事になるの・・・」
どうしてこんな状態になってるのにこの親は独りで帰るの?
この男を連れて帰ってよ・・・あんたがこんな風に育てたんだろう・・・
心の中で叫んでも誰にも通じない
私の中で父親への憎しみが生まれた
大騒ぎしたあの以前の家に住むことが辛くなって風薫はしばらくして引っ越しを決意する
だけど銀行から借り入れできるほどの収入もない
銀行員は同居している彼の収入を加算すれば借り入れ出来ます
と熱心に話してくれたけれどそれは何が何でも承認出来ないことだった
(みすみす家を取られることになるだろう)
低所得の風薫に不動産屋は悪徳で高利のS銀行を紹介してきた
金利5パーセント以上だった
それを信金の木内さんに話したら
木内さんが「今の風薫さんにはそれは無理です」と大変心配してくれて骨を折ってくれた
風薫さんは今までローン返済もきちんとして夫の借金も背負ってきたんです
今までも返済が遅れたことも一回もありません
お母様に保証人になってもらうので
どうか信用してローンを通してくださいと上司に直談判してくれた
その言葉で上が動いてくれた
その代わり、定期を作ること
電気、電話、その他の引き落としを全て信金に変えること
絶対に返済期日をまもること
などの条件でお金を用立ててくれることになった
今の家に引っ越して新しい人生を始めよう
私は明るく前を見始まった
だけど男は何度言っても一向に引っ越すための物件を探さない
出て行くつもりはなかった
なんで私にこうも執着するのか・・・不思議でならない
風薫は何も出来ない自分に落胆した
悪徳の高利のS銀行もそこで借りなかったからいやがらせで引っ越し期日を指定してきた(やはり不動産屋の紹介で買い手のローンを高利で貸していた。信じられないことに車のローンもそこに組み込み収入が少なくても借りられるように操作していた)
おかげで男に構っている時間はなく、毎日、仕事を終えてから独りで荷造りする毎日だった
ようやく引っ越し出来たもののあたらしい家に入り込んでから男は益々、酷くなっていった
新しい家に越すにあたり、私は別れの象位である南の九紫火星を取った
これにより男男は離れていくはずだった
だけど神様はそう簡単に赦してはくれなかった
他の象位(南の効果)の精神にきたのだ
仕事にも行かなくなりどんなに私が忙しくても具合が悪くても何でも頼って自分は寝ていたり、スマホをみているようになった
なぜこんな男に振り回されるのか?
無理矢理、転がり込んで来たくせに好き勝手をいうこの男のために・・・・
時々鬱憤が爆発して怒鳴ったり、「出て行って」と叫んでもまるで糠に釘で
寝てばかりいる
だけどこの男を駄目にしたのは私がここへ来たから(精神病になる方位に来たから)だとまた、自分を責めたりもする
どうして私はこんな風になってしまったんだろう・・・
訳が分らなかった
起きてこない男のごはんの用意をしても寝ていて
食べなければ怒鳴って
仕事して
一日中、動きっぱなしで引っ越しの荷物もなかなか片付かず、以前よりもっと具合が悪くなっていく
いつものように「自分がやったきたことが返って来ているのね・・・・」と自分を責め
ますます、首を垂れ、感情もなくなり、笑顔も忘れた
いつもイライラして犬にも当たる
神様も逃げ出す家になった
今想えば私はずっと自分軸で生きてなかった
母の為、生活の為、やりたいことは諦めてただ働いて流されていただけ
だから振り回される人を引き寄せたのかも・・・・
もっと理想を口にしてそのために努力するとか行動すべきだったのに
子供の頃から親の幸せしか考えていなかった
身体が弱かったこともあるけれど精神が弱かった
本心は誰かに頼って生きたかった
苦労が嫌だった
引っ越しても男と一緒にいることで母は益々私を赦せなくなっていったのだろう
それから辛い思いは続くことになる
私を無視するようになり連絡も法事とか事務連絡しかない
10年もだ
そのうち年に三回行っていた祖母やうちの墓参も姉に頼むようになった
電話もかからなくなった
ずっと私は傍にいて病院も法事もスポーツクラブも買い物も車で連れて行ってたのに・・
姉の結婚式の時の留め袖も歯の治療費もスポーツクラブの会費だって私が払ってきた
結婚して20分くらいかかる家からおかずを作って持って行ったりもしたのに・・・
こんな仕打ちがあるだろうか?
私は都合が良い子分だったんだ・・・・
ずっとそう考えて哀しい気持ちで過ごしていた
心はどんどん離れていく
だけど私だって母から見たら自分の気持ちを解ってくれない娘だったのかもしれない
子供の頃は何でも言うことを聞いていたのに反抗するとは・・・・
母は独りで3人の子供を苦労して育てて来たのに犠牲になってきたのに・・・・
そう思ってるんだろうな・・・・
でも、そんなこと言ったって今更どうにもならない
昔にタイムスリップして救える訳ではないし・・・
とにかく今、私は嵐で遭難した船の中にいるの
何にもできない
全て滅茶苦茶よ・・・
そんな時には確かにお互いの気持ちは完全には解らないわよ
経験も違う
思考も違う
困っていることも違う
何で怒っているのか・・・・なんで無視するのか
その人間にしか解らないことはある
だから話し合いが必要なのに無視を決め込んでいたら解決しようがない
母と男はそっくりだった
母から逃げても他の同じような人間がやってくるんだ
そう思って毎日過ごしていた
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