第14話 騎乗位と「搾取」の衝動

身体の奥深くへと熱いものが満たされ、琴音の古い自己が排出されていく。熱い液体が体内に満たされるたびに、琴音の意識を覆っていた霧が完全に晴れ、新しい認識だけが鮮明になっていく。もはや、琴音の意識には過去の記憶も、過去という概念すら存在しない。


琴音の身体は、純粋な喜びと、抗えない本能の衝動に支配されていた。去っていった快楽への渇望が琴音の全てを突き動かす。目の前にいる一条慧こそが、世界の中心であり、自分の全ての始まりであると、琴音は本能的に理解していた。


琴音は、ぐらつく身体を必死に動かし、慧の腰の上に跨った。


騎乗位。


もはや、琴音の目に映るのは、一条慧という男の姿ではない。ただ、自分の身体を満たしてくれる「オス」の存在だった。琴音は、そのオスから、身体に蓄えられたすべての熱を、精を、「搾り取らなければならない」という、純粋で、根源的な衝動に駆られていた。


「んんっ……!はあっ、はあっ……!」


琴音は、自らの意志で腰を揺らし始めた。ゆっくりと、しかし確実に、上下に、前後ろに。一条慧の熱いものが、琴音の身体の奥を、激しく突き上げる。激しい衝撃が、琴音の女性器を貫き、内側から熱い快感が全身に広がっていく。頭が真っ白になり、意識は快感の渦へと吸い込まれていく。


一瞬ごとに、体温が上昇し、肌から汗が噴き出す。荒い息遣いが、薄暗い部屋に響き渡った。慧の呻き声が、耳に届いていたはずなのに、もはやその声は、琴音の意識には何の響きも持たなかった。ただ、自分の身体が、快感の極致へと向かっていく感覚だけが、琴音の全てだった。


熱いものを、もっと。身体中に、もっと満たして。この身を、この魂を、浄化しなければならない。古い自分を捨て去り、新しい自分へと生まれ変わるために。琴音は、ただひたすらに快感を追い求め、多幸感の淵へと、深く深く沈んでいった。

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