若き日の恋物語
西山鷹志
第1話 遠い渚
若き日の恋物語
もうあれから何年経ったのだろう。あの渚は遠い、遠い昔の思い出となっても未だに心に沁みついて離れない。
あれはバレンタインの日だった。小夜子から貰ったプレゼントを今でも大事に持っている。それはチヨコレートと一緒に添えてくれたライターだ。それもただのライターではない。そのライターには坂本(さかもと)健一(けんいち)の誕生石のオパールが組み込まれていた。こんなライターを見た事がない。探すのが大変だっただろう。それも愛情の現れか。
堀尾(ほりお)小夜子(さよこ)も同じく誕生石はオパールだった。つまり二人共十月生まれ、そんなせいか気が合う。俺も彼女にオパールのネックレスをプレゼントした。オパールの淡い輝きに、恍惚の誘惑に誘われ二人は完全に恋に落ちた。ただオパールは他の宝石に比べて柔らかく、極度の熱や乾燥によってひび割れを起こす傷つきやすい。そう恋とは淡く壊れやすいものだ。だがその淡い輝きはどの宝石よりも美しい。あの日の渚の想い出。今は遠く……まるで幻のような恋だった。
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