透き通るキミの優しさ

うみけねこ

キミと私


授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。


今日の4時間目の数学も、いつもと同じように退屈だった。昼休みを控え、気もそぞろな挨拶が終わると、教室中に声が一気に広がっていく。


周りを見渡すと、皆が仲の良い友達と机をくっつけたり、お弁当を持って他のクラスへ移動したりと、思い思いの時間を過ごしていた。


そんな明るい喧騒の中、私はひとりで持参したお弁当を広げる。にぎやかな空気の中、私の周囲だけが、まるで触れてはいけないものに触れているかのように静まり返っている。


──率直に言おう。私はこのクラスで浮いている。


元々そこまで社交的な性格ではなかったけれど、こんな風に孤立するようなことはなかった。あの出来事が起こるまでは。


──ある日、先輩の彼氏が、なぜだか私に言い寄ってきた。それを断った。ただ、それだけのことだった。


私は彼に恋愛感情などまったくなかったし、彼が私の先輩と付き合っていることも知っていたから、きっぱりと断った。


けれど、告白を断った翌日から、私は急に距離を置かれるようになった。噂によれば、先輩が腹いせにデマを流していたらしい。


それはイジメと呼べるほど露骨ではない。けれど、それ以来、じわじわと真綿で首を絞められるような閉塞感が、私を包んでいる。


実にくだらない話だ。そこから部活も休んでいる。


そんなわけで、今や私に話しかけてくる物好きは、ひとりもいなくなってしまった。


──ただ一人の例外を除いて。


「やあやあ、片岡さん!今暇かい?」


「……なに? 北村」


「おやおや、ずいぶんな歓迎だね。もしかして、ご多忙だったかな?」


「ふん」


明らかに手持ち無沙汰な私に対して、こいつは容赦なく“悪意のない嫌味”をぶつけてくる。他の人ならムッとしてキツく当たってしまうだろうが、それができないのは、こいつのキャラクターのせいだろうか。


「それじゃあ、お隣、失礼」


スカートの裾を整えながら、彼女は当然のように私の隣に座った。


「……許可してないけど」


「ふふ、君の許可なんて、必要ないさ」


憎たらしい言い方なのに、腹は立たない。不思議なやつだと思う。


──北村 悠。今年から同じクラスになったが、彼女を知らない生徒など学年にいないだろう。まさに有名人だ。


北村は、同性の私から見ても文句なしに美人だった。肩にかかるほどの長さで無造作にウェーブした明るい髪、すらりと通った鼻筋、好奇心に輝くブラウンの瞳──すべてが大人びていて、同級生とは思えない。


以前はたまに挨拶を交わす程度だったけれど、例の騒動が起きてから、北村はなぜか積極的に話しかけてくるようになった。


寂しくはないけれど、彼女はマイペースで、何を考えているのか読めない。


「はぁ……」


「ずいぶん大きなため息じゃないか。昨日はよく眠れたのかい?」


「眠いわけじゃないけど……あー、もう、なんなの」


「なにか用事があってわざわざ来たんでしょ?」


「おお、ご明察! 実はここだけの、君だけに特別なお話があってね」


私たちの距離が一気に縮まり、自然と互いの声も小さくなる。


「今度、私と一緒に水族館に行ってくれないか?」


「……は?」


北村と? 私が? 2人で? 水族館?

あまりに突飛な誘いに、肩透かしどころか、脳の理解が追いつかない。


「おいおい、その反応はさすがに傷つくよ。そんなに嫌かい?」


口ではそう言いつつ、彼女の表情はまったく傷ついていない。むしろ、面白がっているようだった。


「……ああ、ごめん。別に嫌なわけじゃないけど……なんで私?」


「もちろん、理由はあるさ」


わざとらしく咳払いをしてから、北村は語り出した。


「この間、駅前に水族館とプラネタリウムが一緒になった施設ができただろう?」


「うん」


「母上からペアチケットをもらってしまってね。どうせなら行ってこいと言われたわけだ」


「へぇ」


「ただ困ったことに、そのチケットは“ペアチケット”でね。最初は断ろうかとも思ったんだけど、親からのプレゼントを無下にするのも気が引けてさ。しかも、あそこのプラネタリウムが無料で見られると聞いて、急に興味が湧いてきた」


──確か北村は天文部だったっけ。なるほど、それは魅力的かもしれない。


「でも、いざ誰を誘うかってなると……君も知ってのとおり、私の交友関係は広くない。こういうお誘いに応えてくれそうな人となると、自然と君がファーストチョイスになってしまったわけだ」


なんだかんだクラスの人と話しているようにも見えるのに。


「──理由はわかったかい? 疑問は?」


「いや……別にないけど」


「日付と時間の調整はこっちでやるとして……どうかな? 来てくれる気になったかい?」


「あぁ、もし私と一緒に行動するのが嫌なら、入館後は別行動でもいいんだけどね」


「いやいや、そこまで北村のこと嫌いじゃないよ」


「おっ、それは嬉しいね」


ちょうどそのとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


「おっと、それじゃあ。あとで連絡するよ」


そう言って、北村はひらひらと手を振って自分の席に戻っていった。


私はまたひとり、机に向かう。


北村とはそこまで親しくもないのに、なぜ私は彼女の誘いを断らなかったのだろう。


きっと明確な理由はない。ただひとつ言えるのは──


誘いを受けたときの彼女の表情が、これまで見た中で一番魅力的だったからかもしれない


そうして迎えた待ち合わせ当日、午後12時。


駅前の噴水前、時計の下で待ち合わせなんて、なんてベタなんだろう。

少し早く着いてしまったようで、何気なく自分の服装を確認する。何を着ていけばいいかわからず、結局いつも通りのTシャツにデニムパンツで来てしまった。

そもそも、誰かと二人で出かけるなんて、いつ以来だろう。


「やあ、待たせたかい?」


声をかけられて顔を上げると、思わず目を見張った。


北村は、純白のワンピースに麦わら帽、そして黒い日傘。まるで絵本から抜け出してきたような出で立ちだった。


「北村……その格好は?」


「ああ、これかい? 私は普通でいいって言ったんだけど、同級生と出かけるって言ったら、母上のテンションが上がってしまってね」


ワンピースの胸元を少しつまんで、興味なさそうに言う仕草は、いつもの北村っぽい。


「まあ、親孝行ってことで、今日はこれで通すよ」


「……それとも、似合ってないかい?」


「いや……すごく似合ってるよ」


「おっ、それは嬉しいね。じゃあ、行こうか」


ふたり並んで歩き出す。身長差や服装も相まって、まるでカップルみたいだ。


「ふふ、まるでカップルのようじゃないか?」


「……嫌じゃない?」


「私はそんな些細なこと、まったく気にしないさ」


「……そうだ。どうせなら、もう少し“カップルしよう”じゃないか」


“どうせなら”ってなにが? と思う間もなく、北村は私の手を取って、水族館の方へ歩き出した。


その後ろ姿が、なんだかいつもより楽しげに見えたのは──きっと、気のせいじゃなかったと思う。



水族館の中は、やわらかな青の光に包まれていて、まるで深海に迷い込んだような錯覚を覚える。

ヒトデの展示を過ぎ、ペンギンたちが行進するように泳ぐ大水槽を抜けた先に、それはあった。


クラゲ専用のエリア。


照明は落とされ、幻想的な音楽とともに、静かな水槽がいくつも並んでいる。


「……うわあ」


思わず声が漏れる。

青く光る水の中を、透きとおった傘のような生き物たちが、ゆったり、ゆったりと漂っていた。

触手がふわりと広がり、また縮み、そしてまた漂っていく。その繰り返しは、まるで時間を忘れさせるような不思議なリズムだった。


「クラゲが好きなのかい?」


「好き、というか……まあ、好きだね」


私は水槽のガラスに手を近づけて、じっと見入っていた。

言葉にするのは難しいけれど、ただ見ているだけで、心の中のざわざわが少しずつ静まっていくのがわかる。


「理由は?」


「んー……特にないんだよね」


「ただ……なんというか、自由で美しいと思えるからかな」


「…….ふぅん」

そこには体が小さく、まるで水玉のような小さなクラゲたちが群れで漂っていた。


少しの沈黙のあと、私はぽつりと問い返す。


「……北村は?」


「私?」


「北村は、どんな生き物が好きなの?」


「ふふ、そんなに興味あるかい?」


「……ある。意外だったし。さっきペンギン好きって言ってたよね?」


北村は肩をすくめて、ゆっくり答える。


「私がペンギンが好きなのがそんなに意外かい?」

そう言って笑う彼女の声は、柔らかかった。


「まあ、もう少し神秘的な生き物が好きそうなイメージはあったかな」


私はまた、クラゲに目を向ける。光に照らされたその姿は、まるで夢の中の生き物のようだった。


「ねえ、北村」


「なんだい?」


「……私、やっぱり北村のこと、もっと知りたいかも」


唐突にそんな言葉が口をついて出た。自分でも驚くくらいに自然だった。


北村は目を丸くしてから、すぐにいつもの調子に戻る。


「へえ、そんなに私はFunnyかい?」


「んー……どっちかというとInterestingの方かな」


「ふふ、光栄だね」


目の前のクラゲは、何も答えず、ただゆらゆらと漂っていた。


「……早速質問してもいい?」


「もちろんどうぞ」


「なんで最近私に話しかけてくれるの?」


「うーん……特に理由はないんだけどね……強いて言うなら、顔が好みだったから、とでも答えておこうかな」


「それ、北村が言うと、冗談か本気かわかんない」


そう言ったら、なぜか北村は満足げに微笑んだ。


「いやいや、褒めてないから」


「ふふ、分かってるさ。でもね、理由があるとすれば──キミが私に、遠慮がなさそうだったから、かな」


「遠慮?」


「そう。私はこんな派手な見た目で、こんな興味深い性格だろ? 今までの人生、何にもしていなくても色眼鏡で見られることが多かったのさ」


「でも、キミは違った。キミは私の原色を見ようとしてくれているというか、そういうありのままの私を見てくれているのって、意外とうれしいもんさ」


「それにキミ、優しいしね」


「優しい……かなあ」


「うん、優しさの定義は難しいけれど、利他的という意味では、キミは十分に優しいさ。キミのそういうところが、社会全体をちょっとだけ幸せにしていると思うよ」


「……ふーん。そういうものなんだ」


「キミとたくさん話してきたわけじゃない。でも、私は人を見る目には自信があるんだ」


目の前のクラゲは、何も答えず、ただゆらゆらと漂っていた。


何気ない言葉のやり取りだけれど、久しぶりにこうして誰かと並んで同じものを見ているということが──今の私には、とても価値のあることのように思えた。



ひとしきり水族館を楽しんで、予約していたプラネタリウムに向かおうとしたときのことだった。


ガラス張りの通路を通り抜けようとしたそのとき、何かの視線を感じて立ち止まる。ふと目をやると、壁際のベンチのそばに、小さな子どもが一人、ぽつんと立っていた。


「……あれ?」


私の視線を追って、北村も足を止める。


「親御さん、見当たらないね」


おそらく三歳か、四歳くらいだろうか。黄色のキャラクター物のリュックを背負った男の子。大きな目でこちらを見つめていたが、声をかけようとした瞬間、その子はぷるぷると唇を震わせて、ぽろぽろと涙を流し始めた。


「やっぱり、迷子……かな」


私はそっとしゃがみ込んで、目線を合わせる。


「どうしたの? ママやパパとはぐれちゃったの?」


子どもは何か言おうとしたけれど、涙でうまく話せないようで、ただ小さく首を縦に振るだけだった。私は慌てて鞄からハンカチを取り出し、そっと涙を拭ってあげる。


「大丈夫、大丈夫だから。今、お姉ちゃんが探してあげるからね」


北村が手早くスタッフを呼びに行ってくれる。私は男の子が不安にならないよう、ゆっくりと声をかけ続けた。


「名前、言えるかな?かぞくの人はどこ?」


けれど、まだ気が動転しているのか、子どもは黙ったまま、私のTシャツをぎゅっと掴んで離さない。


「大人の人がもうすぐ来てくれるよ。だから、安心してね」


そう言いながら、私は自分でも驚くくらい自然に、彼の小さな手を包み込んでいた。


「片岡さん」

北村がスタッフの女性と戻ってきて、私は立ち上がろうとした──けれど。


「……えっ」


男の子が、私の服にぎゅうっとしがみついて、離れようとしなかった。


「少し安心したのかもしれませんね。もしよろしければ、このまま、一緒に来ていただけますか?」


「もちろん、行きます」


「私も行くよ」


迷子室に案内される途中、子どもは少しだけ泣きやんでいた。歩きながら、私の指をずっと握っていた。


館内放送で親御さんを呼び出しながら、私と北村は迷子室のベンチに座り、静かに子どもを見守った。


彼は、安心したのか、私の膝に寄りかかって目を閉じた。その寝顔は、さっきまでの涙が嘘のように穏やかだった。


「……片岡さんって、意外と子ども慣れしてるんだね」


「そんなことないよ。ただ、あの子が泣いてたから、何かしなきゃって思っただけ」


「……うん。そういうところが、キミのいいところだよ」


北村のその言葉に、私は思わず彼女の方を見る。けれど、北村はあくまで自然体で、じっと子どもを見つめていた。


──この人は、やっぱり不思議な人だ。

だけど、少しずつわかってきた気がする。


それから15分ほど待っただろうか。迷子放送を聞いたらしい母親が、息を切らせて迷子室に飛び込んできた。


「……本当にありがとうございます!なんとお礼をしていいやら……!!」


母親が男の子を抱きしめ、何度も何度も頭を下げてくる。子どももようやく母親の顔を見て、安心したように抱きついた。


「いえ、無事で何よりです。見つかって本当に良かったですね」


「おねえさんたち、ありがとう」


その無邪気な笑顔を見られただけで、私は、自分のやってきたことを少しだけ誇りに思うことができた。


──


「ふぅ……一件落着、だね」

親子の姿を見送った後、2人で水族館内のラウンジに移動した。


北村は深く息を吐いて、肩の力を抜く。


「お疲れ様……北村も色々ありがとう」


「……プラネタリウム、ごめんね」

とっくにプラネタリウムは始まっている時間だった。


「プラネタリウムなんて、また一緒にくればいいさ」


「それより、咄嗟にあの子に声をかけたキミの勇気が見られた方が、よっぽど素晴らしいよ」


「ううん、そんな大したことじゃないから。それより北村がすぐスタッフ呼んでくれたから助かったよ」


「……そう言ってくれるなら私がいた意味もあったということさ」


ソファに腰を下ろすと同時に北村は大きなあくびをひとつした。


「……情けないことに、昨日あまり眠れなくてね」


「眠れなかったって……どうしたの?」


「いや、特に理由はないんだけどね。ただ、なに、今日のことを考えていたら思ったよりも寝付けなくてね」


そう言って笑う顔は、どこか照れくさそうだった。


きっと北村なりにこの時間を大切に思ってくれてたんだと思うと、胸の奥がふっと温かくなる。


「……ほら」


私は少しだけためらってから、自分の膝をぽんと叩いた。


「ん?」


「眠いんでしょ?膝、貸すから」


「……キミの膝枕か。たまには素直になるのも、悪くないかもしれないね」

そう言いながら、北村は照れる素振りもなく、すっと私の膝に頭を預けた。


長い睫毛、綺麗な鼻筋、柔らかな表情。


こうして至近距離で見る北村の寝顔は、思わず見とれるほど綺麗だった。普段は理屈っぽくておどけたような言い回しが多いのに、今はまるで無防備な子どものようだ。


──なんだろう。この感じ。


胸がほんのりと熱くなって、守ってあげたい、とか、もっと知りたい、とか、そんな気持ちがゆっくりと浮かんでくる。


「……優しいんだね、北村って」


ぽつりと、独り言のように呟いた。


普段の彼女の態度からは想像しにくいけれど、根っこのところでは、たぶんすごく人思いで、不器用で、真っ直ぐな人なんだと思う。

今日一日、ずっとそう感じていた。


膝の上で、北村の呼吸がゆっくりと深くなっていく。

それに合わせて、私の中にも静かな安らぎが広がっていった。


そのまま私もウトウトしていると、しばらくして館内に17時を告げるアナウンスが流れた。


静かな空間に響くその声に、北村も目を覚ます。


「……ん、もうそんな時間か」

寝起きの声は少しかすれていた。


「よく寝てたね」


「いやいや、申し訳ない。このお礼はいつか必ずしようじゃないか」


「お礼なんて……いいよ、別に。私も……」


少しだけ言い淀んで、言葉を飲み込む。


「?」


「……なんでもない。ほら、いこう」


「うん、いこう」


立ち上がった北村が、私の前に手を差し出す。その手を取って、私はゆっくり立ち上がる。


外へ出ると、陽はもう西に傾き、夕暮れの空が朱く染まっていた。


「今日はわざわざ付き合ってもらって、悪かったね」


「退屈じゃなかったかい?」


「全然。むしろ……こっちこそ誘ってくれてありがとね」


「へえ、随分素直じゃないか」


「私はいつでも素直だよ」


「あはは、そうかもしれないね」


北村が歩みを止め、振り返る。

その目は真っ直ぐに私を捉えていた。


「今日一日、キミに付き合って思ったことがあるんだけど……」


「ん?」


「キミ、いい人だね」


「……なにそれ、いきなり」


「今はなかなか大変だろうと思うけれど、これからは周りに何を言われようが、気にする必要はないさ」


「キミを認めている人が、ここに一人いる。それだけで、きっと充分だろう?」


「……北村は」


「ん?」


「……もしかして、心配してくれたの?」

普段なら絶対に聞けない。恥ずかしくて、情けなくて、言葉にならないようなこと。

だけど、今はなぜか自然に口から出ていた。


北村は、ほんの一瞬だけ私の顔を見て、それから何かを決意したように、すっと私の左手を取った。


その手が、優しく、でもしっかりと、私の指を絡めてくる。


「私はキミのことが、大好きだからね」

上から目線で、理屈っぽくて、どこか飄々としてる北村らしい言葉だったけれど、

それが紛れもなく愛の告白だということは、言われなくてもわかっていた。


私も、そっと自分の指に力を込めて、彼女の手を握り返す。


「……ありがとう。北村がそう思ってくれているだけで、私は救われるよ」


「……これからもよろしくね」


「悠」


「ふふ、どういたしまして、と答えておこうかな」


「優華さん」


「あはは、似合わないね」


「うん、口にしたときの違和感がすごい」


「まあ、これからも呼んでいけば、すぐ慣れるさ」


「だね」


「これからも、よろしく」


「こちらこそ」


私たちをつなぐ手を、夕暮れが優しく照らしている。


今日のことは、きっと、いくつになっても忘れられない。


──なぜだか、それだけは確かな気がした。






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