第9話「付き合っちゃえば?」
「どこ行ってたのぉ~?寂しかったのぉ~!」
私はご主人の帰宅を待っていた子犬みたいに花本さんに飛びついた。彼女の甘い香りが、ふんわりと香っている。それは名の通り、花みたいだ。花本さんは少し恥ずかしそうにしながらも、私を迎え入れてくれた。花本さんの腰元は、健康的な柔らかさをしていた。
「どうしたの姫野さん?何だか甘えただね……」
「だってぇ~、少しだって離れたくないんだもん!」
私はぎゅうっと、花本さんを抱きしめる。呼吸にこんなに心地よさを得たのは初めてだった。花本さんはそんな私の頭を、優しくぽんぽん撫でている。その構図は、親子とも姉妹とも見える。
「ホントに仲良いよねぇ。二人とも」
辺見さんは私たちにニヤニヤとしながらそう言った。
「当ったり前だよ!だって大事な友達なんだもん!」
私は胸を張って言った。実際大切な友達だし、言ってしまえば親友と言ってもいいだろう。まぁそれは、花本さんがどう思っているかで変わってしまう話ではあるが。
「いやマジでウケる〜。そんなに好きならさぁ、もういっそ付き合っちゃえば?なーんて!」
「え……!?」
私は目を丸くする。それは、何気ない一言に聞こえるけれど、それはどこか私の本心に近づいたようにも聴こえた。私はなんだか、一枚壁が割れたような気分になって、恥ずかしくなった。
「そ、それはどうだろ〜?は、花本さんがどう思うかだよね〜……って?」
私は花本さんの方を見た。
花本さんは、頬を赤く染めながら、俯いていた。
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