激甘溺愛執事さまっ!
檸檬
第一関門っ!
忌々しい奴
第1話
夢うつつ。
「お嬢様、起きてくださいませ」
私だけの幸せな世界にまだまだいたいと思うのに、それを誰かに邪魔された。
「お嬢様、どうして起きてくださらないのですか」
そう、私の耳元で嘆かわしいほど大きな声で叫んでいるこの誰かさんに。
「これはもしや。お姫様を目覚めさせたくば熱い口付けをせよ、ということですか。」
“気付くのが遅くて申し訳ございません”なーんて言いながら、ゆっくりと私に顔を近付けているこの誰かさん。
あぁ、本当に忌々しい。
って、ちょーっと待った!
「あんた朝から何してんのよ!」
「おや、お嬢様。お目覚めでございますか」
ああ、悪夢だ。
うるさいノイズに安眠を邪魔され、目を開いた瞬間にこいつの顔がドアップで視界いっぱいに飛び込んでくるなんてこれは悪夢に違いない。
よし、もう一回寝よう。
そうすれば次に目覚めた時にはきっと悪夢から覚めているだろう、なんて馬鹿な私が信じて目を閉じたその一瞬のことだった。
ちゅっ
わざとらしいリップ音をたてて目の前の奴が私の唇を奪ったのは。
「お嬢様、お時間でございます。」
執事らしくシャキッとした口調でそう言いながら満面の笑みを浮かべるこいつ、
そんな御影を私が殴ろうとしてかわされるところまでのすべてが毎朝の恒例行事になりつつあるのがかなり憎い。
事の発端は、一週間前……
この国においてホテルといえば
「
その言葉を聞いて、真意を理解できないほど子供じゃなかった。
「それはつまり、お見合いしろってことかしら」
それは昔からわかっていた事。いつかこんな日が来るんじゃないかって、ずっとずっと思ってた。
現在のホテル業界における最大手と謳われてはいても、所詮うちは成り上がり企業。優秀な社員ばかりを揃えているとはいえ、もし今父に何かがあったら神枝グループは一瞬にして全く機能しなくなることだろう。
そんな状況を脱するためには、絶対的な大きな力が。確固たる後ろ楯が必要なわけで。それはすなわち、一人娘である私がどこか由緒正しきお家の方と結婚するしかないのだと。
そんなこと、ずっと前からわかってた。
「うぅ。伊織ごめんね、パパが不甲斐無いばっかりに」
あぁ、まったくこの人は。
そんなにも目をウルウルさせる必要はないのに。
「大丈夫よ、お父さん」
好きな人がいるわけでもない今の私に、断る理由は何もない。
しいて言うなら、生まれてこの方16年。
恋愛というものを一度もしたことがないこの私には、お見合いなんて幾分ハードルが高すぎるんじゃないかとは思うけれども。
いつか顔も名前も知らない人と、お見合いをして結婚をする。
そんな未来がくるってことはずっと前からわかっていたから、とっくの昔に覚悟は出来てる。
だから、
「お見合いでもなんでもドーンと来い、よ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます