上原々颯大の難題②
それで、なんでこの騎士様が現代日本の凡人エージェント、つまり僕の目の前にいるのかと言うと。
僕たちは、今、三嘴チームで
それで調査をしてみたら、未知の生物は目撃されてるし、行方不明者も不審者もいるし、最終的には異世界への入り口まで見つかっちゃったんだよ。えー、僕たちの世界、どうなっちゃうのー?
……まあ、解決するのは僕たちなんですけど。
それで、聞き取り調査で情報を集め、入り口の発生及び異世界からの流入により異常事態と判断、『葦船町異常現象緊急対策本部』を設立し、早急な解決をするのために動いている、ってのが現状。
面倒なことに、この入り口が二つ見つかっちゃったもんだから、さあたいへん。しかもそこから人が複数人現れているという報告も入る。
三嘴さん、花房さんからは、彼らを出迎える形で接触しつつ監視もしろっていうお達しが出た。もうほらすぐ難題を押し付ける。大体出てきてるんなら、もう入り口だと正しくないんじゃ、と僕は思うな。
でもチームの人数は限られているし、どっちも解決しなくちゃならない。増員は来るはずだけど、それまで手をこまねくようなこともあってはならない。早急な解決は大事だからね。
だから二手に別れることになったんだ。
僕の班が派遣された場所は、
そこには、バラの庭園が美しい洋館がある。ここの庭に入り口が現れ、管理人が行方不明になっているっていうのが、こっちの問題だったんだけど。
そこは既に異世界からやって来たっていう騎士団の人たちに占拠されてて、彼らの拠点と化していた。どうやらここで活動を開始するらしい。
それで、偉い人同士で話し合ってる間に、現場の人間同士、様子を窺いながら交流したりすることになったらしい。
らしいってのは、僕が詳しく知らなかったから。下っ端だから怒られない程度にチョロチョロして、通達の場にいなかった。
彼らは、騎士と言っても少し服装が違う人もいるみたい。剣を持っている人も持っていない人もいて、でも剣を持っている人はやけに少ない。
そんなことを考えながら庭の茂みから顔を出した僕は、ちょうどその先にいた彼と視線があったのでありました。
柔らかそうな金髪と同じ長い睫毛に囲われた宝石みたいな青の瞳はとてもきれいで、彼のキラキラ感を増しているんだなってじっと見つめた。意志の強そうな眉、高い鼻筋、細すぎない顎、こういうのを美丈夫っていうんだな。
金髪碧眼の美丈夫の瞳に夢中になっていた僕だけれど、急に声をかけられて驚いた。
「あなたは?」
更にはちゃんと分かる日本語で、もっと慌てる。
「え! わ、すみません、人がいるなんて知らなくて」
「いえ、かまいませんよ。――誰か! 子どもが紛れてる」
え! 子どもじゃない! 僕は特務機関の人間なので〜なんて咄嗟に説明できず、僕は脱兎のごとく逃げてしまった。
彼は待ってくれとか言っていたけど、僕は振り返りもせず走り去ってしまったのだった。
これが、今、僕の、目の前で、麗しい笑顔を浮かべている騎士様との出会いだったのです。
まあ、この時は、ひええイケメンおるくらいだったんだけど。他の人も男女問わず美麗な中、何かこの人は気になるな? ってなにかこう虫の知らせみたいなのがあったんだよな。なんかこう、猫ちゃんのヒゲがピーンってする感じ?
◆
それから数日後の対策本部。
M機関で騎士の人を何人か雇用するということに決まり、顔合わせの機会が持たれた。先方曰く「外で活動する騎士数名をM機関で面倒をみて貰いたい」らしい。
なぜ雇用かと言うと、葦船における彼らの生活を保障するため。そして実生活を保障するために、職員が一人ずつ付けられることに決まった。もちろん僕たちは、これが監視目的でもあることを理解している。
騎士の人数より少し多い職員が呼ばれ、両組織互いに自己紹介をし合って、騎士に希望があればその人を、なければ最後に上の人が選んで組ませるとなっていた。
三嘴さんはともかく、花房さんがちょっとやる気なのは、理由がわかる。
たぶん、葦船に来る前に庁舎で会った人が原因だ。
隣の部署――部署というのが正しいか分からないけれど――のシバさん。廊下で偶然その人と出くわした花房さんは、両者無表情のまま淡々と煽り合いしてから出発したからだ。
実は政府の実在系トンデモ対策機関は二つあって、そのもう一つとは少々折り合いが悪いんだ。ドラマでよくある営業一課と営業二課が競争したり言い争ったりしてるみたいなやつだよ。元々母体は同じだったらしいんだけど、方針の差と、どちらの方針も必要ってことで、二つの機関に分かれたって誰かが言ってた。
花房さんとシバさんは、少し年齢に差があるけど、特務に入ったのは同年で、互いにライバル視してるらしい。しかも、シバさんは花房さんより年上だったせいか、数年後にチーム長になったので、さらに関係は悪化してるみたい。まあ年功序列だけは抜かせられないもんね。
まあ、行きがけに煽りあったので、やる気があるんだろうなぁ、なんて僕は考えている。あの淡々とした嫌味の応酬は、周りがつらくなるから仲良くしてほしいけどね。
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