由菜の楽しい夏休み
小野ショウ
由菜の楽しい夏休み
「うう〜ん····うん?」
ベッドの上で寝返りを打って仰向けになる。
何やら胸に違和感があるね、何だろうか?
もう少し眠っていたいけど気になって目が覚めた。自室の天井を見つめていると、ある事を思い出す。ココだけの話しだよ?右隅のシミ、何かの顔の形をしていて夜になると····
無い無い!そんなシミが有ったら怖くて眠れないよ〜
ごめんなさい、朝から嘘をつきました。
上半身を起こして両腕を突き上げ大きく伸びをして違和感の正体判明。ブラ着けるの忘れてた〜!自慢の胸の形が崩れる〜!
ま、まぁ一晩くらいなら大丈夫だよね?
身体を起こしてベッドからタンスへGo!ビッグシルエットのTシャツを脱ぎ捨て、取り出したブラを装着「これで良しっと」後は昨晩 脱ぎ捨てた部屋着を順番に拾って着るだけ。
と、その前に匂いチェックを「くんくん」とりあえず大丈夫だね。でも念のために消臭スプレーをシュッシュッ!OK、ところでキミはYシャツの裾どうしてる?INかOUTかってこと。
私はOUT。
だからミニスカートを先に穿く。そしてYシャツ更にソックスを履けば終了。
姿見の前でシャラーンと1回転、よし!今日もカワイイぞ由菜ちゃん。
朝食の前にスマホで星座占いをチェック。さて今日の1位は?「やったね、今日最も運勢がいいのは蟹座の女の子!」右の握りこぶしを高く突き上げ「イエーイ!」
と、その時。
部屋の扉が開いて隣の部屋に住まう中学生の弟が入って来た。
相変わらず思い詰めた暗い顔をしている。
受験勉強が上手くいってないのかな?いや、それよりもだ「私の部屋に入る時はドアをノックする、おっけー?」
「うるさい」誰が?
「姉ちゃん朝からバタバタとうるさい」私ですかー!
「僕は今朝の5時まで勉強をしていて、さっき 寝付いたばかりなのに」いや、それ私関係無いし。ねぇ?
「姉ちゃんは僕に受験失敗して欲しいの?」
朝から疑問符が飛び交う展開、少なくとも私は受験応援してるよ?待て待てこういう事は言葉に出してこそ!
「私は受験応援してるよ。勉強していて判らない事があったら何時でも聞いて」悩める弟に優しく手を差し伸べる姉。くう〜っ!これって麗しの兄弟愛ってやつかな、エモいぞー。
そんな私に対して弟は溜息をつき
「姉ちゃん普通科でしょ、進学校の勉強が判るとは思えないよ。無理しなくて良いんだよ」
!····暫し待たれよ、誰が勉強判らないって?
「とにかく少しは静かにしてよ」そう言い残し部屋を出て行こうとする弟に向かって「待って!」
弟は私の方を振り向き「なあに」いかにも面倒くさそうな対応だ。
その時一階から母の声が聞こえた。朝食の用意が出来ているから早く食べに来なさいとのことだ。
「だってさ」弟は階段を降りて行った。ちょっと待って、眠いんじゃなかったのか?そして 勉強はどうするの。
一階からは母の催促する声。
仕方がない、この場は朝食にするか····
「さ、温かいうちに食べましょう」そう言うと母は手を合わせて「いただきます」私と弟もそれに続いて「いただきます」
キッチンの四角いテーブル
椅子が四脚
私と弟が向かい合わせに座り
母の前には父····何時もならね
その父は朝早く仕事に出かけた様子
父曰く「勤め人に夏休みなど無い」
少しオーバーな表現だね
土曜日はリモート、日曜日は休んでるし
本当に休みが無かったらブラックだね
そして今朝の朝食は
・炊きたてご飯(おかわりは二杯まで)
・肉じゃが
・海藻サラダ
・豆腐となめこの味噌汁
・胡瓜の浅漬
ちなみに肉じゃがは昨晩の残りだったりするじゃがいもに味が染みていて美味しい。
ところでさっきから弟の視線が気になる。
私の胸をチラチラと見ながらご飯を食べているわさ、一体何なのかしらねぇ〜ホホホ。
「さっきからどこを見ているの?このエロ中学生」思い切って言ってみた、すると「昨日クラスのSNSで話題になってたんだ、お前の姉ちゃん胸でかいなって」淡々と語る弟。赤面でもすれば、まだ可愛いものなのに。
私の胸が話題にって「それで?」
「毎日牛乳飲んでるんだろうとか、お前が揉んでるんじゃないかとか。次から次へと質問攻めで····」
やれやれ「あまり気にするなエロ中学生」
「そうは言うけどさ、改めて聞かれると気になって」うーん、これは何とかしないとね私の胸のせいで勉強に手が付かないとか言われだしたらどうする?挙げ句浪人でもしたら····
「全く誰に似たんだか」
それまで沈黙を守っていた母の一言が私のハートに火を点ける。
「誰かに似たんじゃなくて、ここまで育てた母上の責任では」そう言って頷く私。
「何を言ってるの?育児放棄する訳にはいかないじゃない」母は少し呆れたように言う。
「朝から喧嘩はやめてよ」弟が訴える。
「とにかくブラだってタダじゃないんだからね、由菜もアルバイトを始めてみたら?」
「私のブラが家計に係わるとでも」
「はっきり言ってそうね、ブラだけじゃないわよ着ている服だって由菜の胸のサイズに合う物は値が張るのよ」母から告げられた衝撃の事実。
「判った私アルバイト探してくる」
「別に今日でなくてもいいのよ、お母さんの方でも知り合いに尋ねてみるから」母の言うことも最もだけど、こういうことは早い方がいいと思う。
「ごちそうさま」ササッと朝食を済ませて自室へ戻る。
さっそく近くの商店街へ行く事にって、一件ずつ訪ねるよりも商店会に聞いた方が早い。
スマホで聞いてみたら『今のところアルバイトの募集をしているお店はありません』とのこと。
いきなり出鼻をくじかれた。
仕方がない駅前まで出てみようか。
はい、到着〜
それにしても暑い!太陽のヤツ調子に乗って本気出して!私は麦わら帽子のつばをなぞる。
お店を見てみると結構な数で求人広告が出てる。さて、どこにするかな····
書店なんてどうだろう?ちょっと聞いてみよう、「おはようございま〜す」
「ありがとうございました」高校生は雇ってないってさ、だったら張り紙に書いておけ!
その後いくつかお店を巡るも『高校生はちょっとね〜大学生になったらおいで』みたいな感じで体よく追い出されました。おかしいなぁ高校生って人気の職業(なんだそれ)じゃなかったっけ?学校でよく聞くバイト学生って一体どんな所でどんな仕事をしてるんだろう。
スマホでバイト歴のある友人に聞いてみよう
ピッポパ
「おはよう、まだ寝てた?ごめんね〜そう私」
「今駅前でアルバイト探してるんだけど」
「うん、そうなの。えっ未成年?」
「へぇ~、でもバイトしてたでしょ」
「親戚のお店の手伝い?ふーん」
「そうなんだ判ったよ、ありがとう」
「じゃぁね〜おやすみ」
ピッ!
そうか未成年だと後々トラブルがあった時に面倒だから雇わないと言う訳か····
ここは母の知り合いに期待かな。
「ぐう〜キュルルン」
お腹空いた今何時だろう
11時43分か、ハンバーガーでも食べよう。
ファーストフード店に着き、お店の中を窺う。やった、それほど混んでないよ!
店内に入ると冷風がお出迎え『涼しーい、今日はこのままお店に居座ろうかな』
レジカウンターへ進む。「いらっしゃいませ!ご注文をお窺い致します!」スタッフさんの元気のいい声、大学生くらいかな?それよりもバイトだろうか?もし学生だったら正社員は無理だし。
私はオーダーシートの照り焼きグルメバーガーを指さし
「これをセットでドリンクはアイスティー、店内で食べていきます、支払いは ICカードでお願いします」
店員さんに促され ICカードを読み取り機にタッチ「ピッ」読み取り音が鳴り、番号の印刷されているレシートを渡された。
待つこと5分「307番のお客様〜」きたきたー「ごゆっくりどうぞ♪」トレイを受け取り、適当な空いている席に着く。
さて、どれから食べようかしら。
よく見るとポテトは揚げたての熱々だ。ならば、先ずは照り焼きバーガーからいただこう。
「はむっ、モグモグ」あ〜、どうして照り焼きバーガーはこんなに美味しいんだろうぅ。
ところで夏休みだからかなぁ店内は子供の姿が目立つ。そして、うるさい。子供達の保護者はスマホに夢中だ。一体何しに来てるんだろう?
そうか夏休みか····
もうすぐ休みも終わるんだよね。
「あ〜ぁ、学校行きたくないな」
思わず口をついて出た愚痴。誰かに聞かれてはいないだろうか、慌てて辺りを見回す。
幸いなことに皆スマホに夢中だ、私の愚痴なんか聞いてはいない。
でも。
聞かれていないと、それは少し気に触るかな。私はここに居るのに。
もう一度言ってみようかな、今度は皆に聞こえるような大きな声で。
····止めておこう、あの女気が触れたのかと思われるのがオチだ。
黙々と食事を済ませて店を後にする。
さてと、これからどうしよう?
家に帰ってもな〜あの母と弟だからね、息が詰まる。別に二人が嫌いな訳じゃないけれど、今朝のこともあるし····
もう少し時間をつぶしてから帰ろう。
その後。
家電量販店でゲームを遊んで、大手中古書店で漫画の立ち読み。
そして今は国道に架かる歩道橋の上。
ちょうど夕凪の時間で熱風にあおられる事もない、西に傾く太陽は相変らず暑いけど。
私は道路を行き交う車をぼーっと眺めている。
車はいいなぁ〜ガソリンがあればどこにでも行けるんだから。私今17歳だから免許取るのは来年か〜
それと大学進学だよね、別に高卒でもいいけどさ〜これと言って特技はないから大学で何か学ばないと、まともな会社に就職できない。
「ふーっ、何か前途多難だね」
でも私は頑張ります!健気でいい感じでしょ?
よし、夏休み明けからはこのキャラクターで行こう。フッフッフ諸君!いざ刮目すべし!
終
由菜の楽しい夏休み 小野ショウ @ono_shiyou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます