【掌編】月面着陸

五來 小真

月面着陸

「あいつがねぇ」

 思わず私はテレビに向かってつぶやいた。

 宇宙飛行士になる人物と言ったら、大志を抱くタイプ。

 夢に向かって突き進むタイプだとばかり思っていた。


 しかし、あいつはぶっきらぼうで、何を考えているのかよくわからないタイプ。

 とても夢だけで宇宙飛行士になったとは考えられない。


 それでも現実にあいつは宇宙飛行士になり、こうして月面着陸を果たそうとしている。

 あいつの発言は、きっとニュースになる。

 ——下手をしたら、今年の流行語大賞だって取れるだろう。

 もしかすると、あいつが宇宙飛行士になった理由が聞けるのかも知れない。


 ついに月に着陸を果たし、あいつは口を開いた。


「——地球の方がいい」


 私は、ますますあいつがわからなくなった。

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