ヒロと大西

爆発寸前

第1話


あの夏からあたし達の出会いは始まった。



めちゃくちゃ暑い日で

背中を伝う汗にも、鳴らないスマホにも、目の前の大男にも


全てにイライラした--




「ヒロちゃん!好きです!付き合ってください!!」



『え、マジでだれ?』



本当に見たことない男だった。

こんなにデカイ人、うちの学校にいたんだ。って思った。



「大西です!」



『あ、そう。

 ごめん。まじでタイプじゃない。』



「………!」



明らかにガーーンって顔して、分かりやすくしょげた。



これがあたしと大西の出会い。





----------





「俺さ、"まじでタイプじゃない"って言われたんだけどよぉ…」




「それって今が底辺だから、上がるチャンスはあるわよ!ってことだよな?!?!」



「お前ほんと…、自己肯定感のバケモノかよ…。」



何を隠そう。この大男、名は大西。


スーパーポジティブのスーパーばかやろうである。




「おいおい。その"青春の無駄使い"みたいな見た目で、よくお前はそんなにポジティブになれるよな。」



「て言うか、こんなんに急に告られてヒロちゃん怖くなかったんかな。」



「ちなみに聞いたの?まじでタイプじゃないって事はどんな人がタイプなんですかー?って。」




俺がヒロちゃんに告白したことを、次の日にはもう皆が知ってた。

ヒロちゃんはいわゆる"一軍女子"って感じのギャル。

つまり可愛い。マジで可愛い。とにかく顔が可愛い。



一方俺大西は、身長だけはデカく190cm近くある。

そんでもってガタイもまぁいい。柔道部だから仕方ない。

声もでかいと思う。

でも、このガタイで声小さかったらキモイだろ?




ちなみに昨日はヒロちゃんと話せた嬉しさで好きなタイプなんて聞き忘れた。

(話せたも何もフラれただけである)




「俺、好きなタイプ聞いてくる!!!」



言うが先か、走るが先か-

大西はもう教室には居なかった。




「アイツってなんであんなにバカなんだ?」




大西が立ち去って行った事を気に止める様子も無く、男子達は弁当を食う。




「その唐揚げくれよ。」



「やだよ。」



「ヒロちゃんの今日の弁当何かな。」



「ギャルは菓子パンなんじゃねぇの?」



「それは偏見だ。」



「大西…、ちゃんと好きなタイプ聞いてこれっかなぁ。」




大西が居ない昼休みは少し静かだった。

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