幼馴染み3人恋模様とそれを見守る西新宿の住人
- ★★★ Excellent!!!
全編通して、とても楽しく読ませていただきました。
読了後の余韻たるや!
西新宿の風景等の描写が、とてもわかりやすく実在する風景なので、まるで自分がそこにいてその場面を見ているかのような感覚になり、没入感にどっぷり浸ることができました。
幼馴染み3人とその周りの人達との交流だけでなく、会社内における黒い疑惑とそれによって起こってしまう悲劇等、読者を飽きさせない展開にあっぱれです。
七章 第三話「色付き始めた木立を見上げた瑠璃の想いが紅茶のカップの中で揺れていた。」の部分は、瑠璃の揺れ動く気持ちをカップの紅茶で表現したのは叙情的な表現でとても素晴らしいと思いました。
「欅の影になる坂道の途中で背中に奈々美の頬を感じた。~」以降は、奈々美の、駿への溢れる愛する気持ちがよく表現されていて好きな箇所です。
妹のように一緒に過ごしてきたからこそ、奈々美の気持ちを知っていながら態度に現さない駿にもどかしさを感じヤキモキ。
最後の最後で未練タラタラな元妻 圭子への気持ちを断ち切ってようやく自分の気持ちに素直になり部屋で抱きしめる姿に、「うんうん、自分の気持ちに正直になることが大切。ラブストーリーはやっぱりこれだよねー、奈々美良かったね!」となる結果で大満足。
また、その時の月の光の演出も静かで、余韻に浸ることができました。
ストーリーの要所要所で部屋から見える月が登場しますが、この月の使い方がとてもうまいと思いました。
残念なのは、ラブコメ・ラノベ系にも関わらず、「無い」や「居る」、「分かる」など、ひらがなでもいいような漢字を多用しすぎたり、難しい言い回しで、文章がやや堅めに感じてしまいました。
また、字数制限と締切時間で急ぎすぎたのかエピローグの翔吾の浮気疑惑ストーリーはちょっと蛇足感。
マリッジブルーならまだしも、優子にゾッコンな翔吾が浮気するはずがないので、ストーリーに無理が生じていたような気がします。
せっかく小説タイトルに「花嫁」とつけているのだから、アプリで知り合った優子の花嫁姿を描いた方がスッキリしたと思います。
全体的に面白く、ストーリーの立て方はとても上手なので、もっと読みたいと思いました。
次回作を楽しみにしています。