かなしみ 🧶

上月くるを

かなしみ 🧶



溶卵よく溶く夜明け遠郭公

手拭で作るストール風涼し


高だかと積乱雲や湖の上に

川風の吹く本堂や夏季講座


薬降るや借りるに重き本と傘

おのれより大きな羽を運ぶ蟻


愛しみを小舟に浮かべレース編む

よろこびの種子をとばせる日輪草


ねんごろな刺繍ゆかしき日傘かな

いないいないばあでほほゑむ砂苺


垣根からこぼるる薔薇に日の燦と

薔薇散るやはるかに犬の声のして


夏川の向ひの家並み遠からず

頬杖のおとがひ尖る酷暑かな


駄菓子屋の日除の内に見知らぬ子

とくべつなことなきひと日夕花野


街燈のレトロな街に打水す

よき風の入る窓なり夏座敷


真清水や名もなき星の散らばりて

ヒュートンと窓にぶつかる夜の蝉




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かなしみ 🧶 上月くるを @kurutan

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