第10話

「迷惑ってなんのことだよ。俺が美咲のことを迷惑だなんて思ったことは一度もないぞ」

「嘘だ」

「嘘じゃない。むしろ、その逆だし。去年……言っただろ?」


物心ついたときには佑耶のことが大好きで。


好きで好きでたまらなくって。


でも佑耶に伝える勇気はないから毎年七夕の短冊にだけ。


想いをこめて、書いていた。


佑耶にばれないように、悟られないように。


でも、いつか。いつの日か届きますようにって。


そう思って書いていた。


“両想いになれますように”


最初は全部ひらがなで。


いつの日からか、漢字も使って。


毎年毎年書いていた。


だけど去年……


「去年?」


私、佑耶に何か言われたっけ?


「そ、そーゆうことだって、言っただろ」


真っ赤な顔をした佑耶を見て、私は自分の勘違いに気がついた。

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