寄り添ってくれたあなたへ ~娘から母へ~
夜月月華
寄り添ってくれたあなたへ ~娘から母へ~
私は保育園、小学校、中学校、高校、大学と人生を歩んできた。
しかし、中学校・高校で現実逃避をするようになった。
物語の主人公のような人生を歩めたらいいのに…とか
どんなことも覚えられる記憶力があればテストも楽なのに…とか
果ては、一回死んで記憶を持って転生できたらいいのに…人生をもう一回やり直したい…とか、違う世界で活躍できる人物になりたい…そう思うようになった。
そして、今、私は大学生だ。ここで私は人生で経験したことのないくらい人生に絶望を覚えた。
ここで私がいなくなったくらいじゃこの世界は何も変わらないだろう…そう、思うようになった。
今思えばこれが【うつ】寸前だったのだろう。
毎日が生きている意味があるのかと自問自答し、それに答えが出ることはなかった。その時の私は自然に防衛本能が働いたのか毎日異常に眠るようになった。
平日は学校へ行き授業を受ける。しかし、それもまともに聞くことができなかった。
休日は、朝起きて朝食を食べて、寝て、昼食を食べて、寝て、夕食を食べて、お風呂に入って、就寝する。そしてまた朝が来る・・・その繰り返し。
【五月病】も相まってどんどんズブズブのめり込んでいく。
そして夏休みは一日中寝ていることが日常になってしまった。
母はそんな私に対して、はじめは「もう起きなさい!」「いつまで寝てるの?」と言っていた。しかし、次第にそんな言葉も聞かなくなった。私は『あぁもう見放されたのかな・・・』思った。
そんなことが続いて夏休み終了一週間前。ようやく朝から起きていられるようなり、お昼寝はするものの格段に起きている時間が長くなった。
母とも沢山話をするようになった。そして聞いてみた
『私が寝てるときにもう起きなよとか言ってたのにどうして最近言ってこないの?』
すると母は
「スマホ見ていたらね、〇〇ちゃんみたいにずっと寝ている子がいるらしいのよ。それは【うつ】寸前で身体が防衛本能として休みたいって言ってる合図みたいなの。だからお母さんは見守ることにしたのよ」
私は泣いた。だって見放されたと思った。いい加減構うのも面倒くさくなってもう知らないと、放っておかれているのかと思ったから…。
母にそう打ち明けた。母は
「そんなことないよ。大丈夫。〇〇ちゃんが立ち直るまでお母さん協力するから。一緒に頑張ろう」
と言ってくれた。
母のその言葉にまた泣いた。涙腺が緩くなっていたらしい。涙が止まらなかった。母は私に呆れたわけでも、怒っているわけでも、見放したわけでもなかったのだ。
私は【うつ】寸前まで行っていたことにショックで、でも母が隣に寄り添ってくれるだけで安堵して、安心して、ただただ泣いた。母はそんな私を見て静かに「大丈夫、大丈夫、一緒にいるよ」と言ってくれた。
母は打ち明けてくれた。
「お母さんは【うつ】になったことがあるから〇〇ちゃんの気持ちがわかるよ」
その言葉に私は母がそんなことになっていたことなんて気づいてすらいなかったので驚いた。
母は、私の不登校、そして、母の更年期と心配する癖。それらが重なって起きたことだと語ってくれた。
私はただただ申し訳なかった。私は母がそんなことになっていたことなんて気づいていなかったし、もっと早く知りたかったと後悔した。
だが母は自分の経験と私の状況を見て私も放っておくと【うつ】になってしまう! と思い、どうにかしたいと思っていたらしい。そして、母の下した決断は──
落ち着くまで何も言わずにそっとしておくこと。そして、私が話せるようになったら沢山話す。ということだった。
今思うと母のその決断は正しかったと思う。これは自分でどうにかしなくてはいけなかったから。周りがとやかく言っても多分私には響かなかっただろうから。
母は自分の経験の元こう語ってくれた。
「お母さんも自分のお父さんから分厚いお手紙貰ったけど読む気力すらなくって手をつけなかったからね。これは自分で解決しなくちゃいけないんだよ。周りが何か言っても本人には届かないから」
母が言ってくれた言葉がフッと心に落ちた。なるほどと思った。私も母から「起きなさい!」と言われても起きられなかったから。否、起きようと思っても身体が言うことを聞いてくれなかったのだ。これは私にはどうにもできなかったのだから。
そんな母との会話もあり私は徐々に回復していった。と思う。目に見えて劇的に回復したとは言えないが、母から見るに回復してきていると言われた。
例えば、
お風呂で歌う音調が明るくなった…とか
笑顔が増えた…とか
一番は──表情がどこか晴れたような、吹っ切れたような感じになったことだった。
日々が過ぎるにつれ段々と回復していく私に母はどこか嬉しそうだ。
母とも本音で話す回数が劇的に増えた。本音で思ったことを包み隠さず話すことがこんなに楽になるとは思わなかった。
母は私の些細な悩みもどんな小さな疑問でも一緒に考えて前向きになれるような言葉をかけてくれた。
私はそんな母に救われたような気がした。
そして、私も就職活動をすることになった。
ここからは未来予想図になる。
私は自分のやりたい仕事を見つけ、条件も良く待遇も良い会社に入った。
十年くらい働いただろうか?
私はこの十年で出会いがあり結婚した。
そして子供ができたので仕事を辞め、子育てに重点を置いた。パートナーも手伝ってくれた。
そして月日がたち子供たちも大人になり孫ができその孫も大人になりひ孫ができた。
そんな感じで私の人生は挫折を経験してから劇的に幸せになった…
というような私の未来予想図。
これは私が挫折を経験してからこんなことになればいいなと思う妄想かもしれない空想かもしれない。
でも、確実に手に入れたい未来なのだ。
私はこの未来を手に入れるために日々頑張って生きていきたいと思う。もしかしたらまた挫折の経験をするかもしれないが・・・大丈夫。私にはその経験を理解してくれる人がいるから。寄り添ってくれる人がいるから。
だから私は今日も希望をもって明日を信じて楽しんで、人生を謳歌していきたいと思う。
さぁ、あなたの未来予想図は?
寄り添ってくれたあなたへ ~娘から母へ~ 夜月月華 @yeyueyuehua
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