決断はもう少し先で
@Amagiri_Rein7
落された日
酷い嵐の日だった。両親と馬車に乗っていた俺は目の前の豪華な家達に見惚れていた。燃えてなくなってしまった俺の家とは大違いだ。木造建築でないあの家だったのならば、もう少し被害はマシだったろう。今更、考えたって意味がないのに少し悔しく思ってしまう。
すると急に父親に、首根っこをつかまれたかと思えば、馬車から投げ落とされた。まだ、年のいかない子供な俺は受け身を取れるわけもなく、どしゃっ!と派手な音を立て転がった。
前々から宣言はされていた。
俺達家族の出身地に攻撃をしたかと疑われる国にスパイとして潜り込め、と。スパイ行為自体は最悪いいのだが、馬車から投げ飛ばすことはないだろう。おかげで顔に泥がかかったし服も汚れた。
「メイウィン..、貴方が私たちの願いをかなえるの、貴方は私たちの願いそのものなのよ、頑張って...メイウィン!」
「かあさん..おいてかないで!俺、わかんないよ、かあさん!!」
母親は俺に切実に訴えかけた。無情にも馬車は止まらずそのまま走り去ってしまった。おいて行かれたくなくて、寂しくて仕方なくて。ただでさえどろだらけだったのに、転んでしまいさらに汚れを増やした。痛くて。思わず涙がこぼれた。大きな声を上げて泣き叫んでも、大雨は俺の声を隠した。
「君、大丈夫か!?」
背後から声が聞こえた。低く、響くような声は明らかに俺より年上な男のものだった。ゆっくり振り向くと、綺麗な衣装に身を包んでいる人がよさそうな男だった。
ただ、何をしゃべっているのかは分からなかった。それはそのはず、俺の出身はここから少し離れた別国だ。ここが国境沿い故近かっただけで全く違う文化の場所だった。
「ぁ...あ..うぅぅ....!!」
そもそも、先程まで大泣きしていた喉はうまく言葉を発することができなかった。母音を言うので精一杯だ。
「泥だらけだな..、家に来い。」
服が汚れることを気にも留めず、俺を抱きかかえると先ほど見ていた家の中へ入っていく。この男は、警戒心をどこに捨ててしまったのだろう。
俺は、何故か妙に冷静になった頭を抱え、家の中へ足を踏み入れた。
「おかえりなさい!お父様!その子は..?」
「捨てられたのかもしれない、外で泣いてたんだ。ミァム風呂の準備だ」
「はい、わかりました。ご主人様。」
スカートをはいた女性が男に頭を下げて、部屋から退出した。
周りを見渡していた目を正面に向けると俺と同い年くらいだろうか。背格好がよく似た男の子が居た。
「僕の名前は、リイユン。君は?」
語尾ががっている、疑問だ。俺に何を聞いている。予測して、答えないと。他国だってばれたら、疑われる。
「めいうぃん。」
「めいうぃん...メイ!よろしくね!」
ここの家族はそろいもそろって警戒心がないらしい。質問の答えがあっていたのかは分からないが、そこそこまともなことは言えていたのだろう。
このままバレませんように。
決断はもう少し先で @Amagiri_Rein7
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