神様の聞き間違いで、転生人生めちゃくちゃです!

雲霓藍梨

第1被害者 テイマー志望

「あああ〜……。テイマーに、なったら私でも動物に好かれるのかなぁ……」


 動物が好きなのに、動物にすぐ避けられる私は、テイマー転生系の異世界転生小説を読む事が多い。


『その願い、叶えよう!』


「えっ、えっ?! なに?!」


 どこからか声が聞こえてきたかと思った瞬間、目の前は真っ白になった。

 閉じてしまったまぶたを再び開けると、そこは真っ白な部屋に大きな執務机があり、その向こうにヒゲの立派なおじいさんが座っていた。


「あの、どちら様ですか? そしてここは……?」


「ワシは異世界転生を司る神、ウルエミミじゃ。お主の転生したいとの願い、聞こえたぞ」


「えっ、そんな簡単に転生できるんですか……?」


「うむ。まずは行ってもらう異世界の話なんじゃが、大丈夫かの?」


「は、はい! 教えてください!」


 異世界転生と聞いて、ワクワクして神様の話を聞いた。

 どうやら異世界は、剣と魔法の中世ヨーロッパのような世界らしい。

 よくある設定だ。


「それで、お主は異世界転生する時に欲しい能力はあるかの?」


「もしかして、テイマーに転生させてくれるんですか…?!」


 目を輝かせ、乗り出すように尋ねた。

 それに笑って頷いてくれた神様は言った。


「うむ、良かろう。“タイマー”転生させようぞ!」


「えっ? 私、テイマーって——」


 瞬間。

 またも真っ白に視界が塗りつぶされて、私は意識を失った。



***



 目が覚めると森の中にいて、一枚の紙を握りしめていた。周囲には木々が広がり、鳥のさえずりが聞こえる。


 まるで、ファンタジー小説の挿絵みたいな森。


「……本当に、転生しちゃったんだ」


 私は、そっと手にしていた紙を広げた。




■転生先認証書■


名前:不明(転生者)


能力:タイマー

説明:時間をはかる能力。使い方は自己発見による。


転送元:地球(希望動機:テイマーになりたい)


担当神:ウルエミミ




「……タイマー……?」


 一瞬、目を疑った。


「え? 私“テイマー”って……」


 数秒後、私は膝から崩れ落ちた。


「聞き間違いかぁああああああ!!!」



 頭を抱えながら、叫びたい気持ちをぐっと堪える。

 でもどうしよう。タイマーって、目覚まし時計……?


「時間をはかる能力って……それ、時計かストップウォッチでよかったやつでは……?」



 でも、とりあえず試してみよう。何かしないと、森で野垂れ死にになってしまう。


 深呼吸してから、私は手を前に出し、そっとつぶやいた。


「タイマー……起動?」


 パチン。


 何かがはじけたような音とともに、空中に透明な数字が浮かび上がった。


00:00:00


「えっ、うわ、えっ!? 本当に、カウント……!?」


 驚いていると、頭の中に声が響いた。


《能力発動:カウント開始まで10秒——タイマー式魔力装置、初期設定》


「なにそれなにそれ!? えっ、ちょっと待って! 止め方どこ!? ストップボタン無いの!?」


《3……2……1……》




 ズンッッ!!!


 目の前の地面が突然爆発した。


「ええええええええええええええ!!!??」


 木が数本吹き飛び、鳥たちが逃げていく。




「……まって……今の、私のタイマー……?」


 私は震える声で、もう一度、空中の数字に問いかけた。


「もしかして……これって、起動から数秒後に爆発する“タイマー型スキル”……?」


 呆然とする私の背後から、別の獣の気配が近づいてきた。


 グルルルルル——。


「——ひっ」


 振り返ると、大きな狼が私の方を見ていた。

 その目は、鋭く、警戒している。


「え、えっと……タイマーって、どうやって動物と仲良くなるの……?」




 タイマー能力、謎の爆発、動物にはやっぱり避けられる。

 始まったばかりの異世界ライフは、どう考えても波乱の予感しかしなかった——。

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