追放されたS級冒険者、魔王城で織りなす極甘ハーレム生活~なぜか元パーティメンバーも巻き込まれて修羅場に?~

境界セン

第1話 追放、そして新たな出会い

「アレン、お前はもう必要ない」


冷たい声が響いた。ギルドの一室。俺の目の前には、これまで苦楽を共にしてきたはずの『暁光の剣』のリーダー、ライアスが立っていた。彼の隣には、いつも俺に笑顔を向けてくれていたはずの回復師のリーファ、そして寡黙な魔法使いのシリルが、無表情で俺を見つめている。


「……は?」


俺は間抜けな声を出した。理解が追いつかない。つい先日も、俺の放った『ディバイン・スラッシュ』がなければ、あの巨大なオークロードに全滅させられていたはずだ。パーティの危機を何度も救ってきたのは、この俺のはずなのに。


「だから、お前はクビだと言っているんだ。これまでの貢献は認める。だが、今のパーティにお前の力はもう不要だ。お前がいなくても、俺たちはS級パーティとしてやっていける」


ライアスの言葉は、まるで鋭いナイフのように俺の心臓を抉った。


「ライアス、冗談だろ? 俺がいなきゃ、あの時のゴブリンキングも、この前のダークエルフの弓兵団も……」


「黙れ!」


ライアスが声を荒げた。


「お前は自分の力に溺れている。傲慢だ。確かに、お前の力は凄まじい。だが、その力が逆にパーティの和を乱しているんだ。お前は個人プレーに走りすぎる。俺たちの連携を考えない。そんな独りよがりな奴は、S級パーティには相応しくない」


リーファが、震える声で言った。


「アレンさん……ごめんなさい。でも、私たちも……ライアスさんの意見に賛成なんです」


リーファの顔は青ざめていた。彼女はいつも、俺が少しでも無理をしようとすると、心配そうに声をかけてくれた。そんな彼女が、今、俺を切り捨てる側にいる。信じられなかった。


シリルは、相変わらず無言だ。だが、その視線は俺をまるで罪人のように見下しているように感じた。


「そうか……俺が、独りよがり、ね」


力が抜けた。俺は、これまで彼らのために、どれだけの無理をしてきただろうか。どんな危険な依頼も、誰よりも真っ先に前に出て、誰よりも多く敵を斬り伏せてきた。すべては、彼らを、このパーティを守るためだったのに。


「これで終わりだ、アレン。お前との契約は今日で解除する。二度と俺たちの前に現れるな」


ライアスはそう言い放つと、振り返りもせずに部屋を出て行った。リーファは、泣きそうな顔でちらりと俺を見た後、ライアスの後を追うように走り去った。シリルは最後まで無言で、ただ静かに去っていった。


俺は、そこに一人残された。呆然と立ち尽くす俺の目に、窓から差し込む夕日がやけに眩しかった。


数日後、俺は冒険者としての当てもなく、あてもなく森の中を彷徨っていた。ギルドからは追放者扱いされ、他のパーティからも見向きもされない。S級冒険者という肩書きは、もはや何の役にも立たなかった。


「はぁ……どこかで野宿でもするか」


地面に腰を下ろそうとしたその時、足元が崩れた。突然のことに、俺は受け身も取れずに、真っ逆さまに暗闇へと落ちていった。


「うわああああっ!?」


しばらく落ちた後、背中に衝撃が走った。幸い、致命傷にはならなかったが、全身が軋む。あたりは真っ暗で、何も見えない。


「いった……どこだ、ここ……?」


手探りで周囲を探る。どうやら、洞窟のような場所に落ちたらしい。奥から、微かに光が漏れているのが見えた。俺は、その光に導かれるように、ゆっくりと足を進めた。


光の元へとたどり着くと、そこは巨大な空間だった。そして、その中央には、輝く巨大なクリスタルが鎮座しており、そのクリスタルの前に、一人の少女が座っていた。


彼女は、銀色の髪を長く伸ばし、深紅の瞳が印象的だった。年の頃は、俺と同じくらいか、もう少し幼いだろうか。豪華なドレスを身につけ、その頭には、小さな王冠が乗っていた。


「……誰だ、お前は?」


俺が声をかけると、少女はゆっくりと顔を上げた。その瞳は、俺を真っ直ぐに捉える。


「あら、珍しいお客様ね。まさか、こんな場所に迷い込む者がいるとは」


少女の声は、まるで鈴が転がるように澄んでいて、しかしどこか威厳を帯びていた。


「俺はアレン。あんたは一体……?」


少女は、にこりと微笑んだ。その笑顔は、あまりにも無邪気で、しかしどこか妖艶な魅力を秘めている。


「私の名はリリム。この魔王城の主にして、現魔王よ」


「……は?」


俺は再び、間抜けな声を出した。魔王? こんな可憐な少女が?


「信じられない、という顔をしているわね。無理もないわ。私も、まさかこんな状態で冒険者と対面するとは、思ってもみなかったもの」


リリムは立ち上がり、ゆっくりと俺に近づいてくる。その一歩一歩が、まるで舞踏のようだった。


「どうして、こんな場所に一人でいるんだ? 魔王なら、もっとたくさんの部下を従えているはずだろう」


「あら、随分と失礼なことを言うのね。部下なら、たくさんいるわよ。ただし、今はみんな眠っているだけ。それに、私は今、封印されて身動きが取れない状態なの」


リリムは、自分の座っていたクリスタルを指差した。そのクリスタルからは、確かに魔力が感じられる。しかし、それは封印の魔力だ。


「このクリスタルが、私を封印しているの。そして、その封印を解くためには、強力な魔力が必要なのだけれど……」


彼女は、そこで言葉を区切った。そして、俺の目をじっと見つめる。


「……私の前に現れたあなた、アレン。あなたからは、膨大な魔力が感じられるわ。もしかして、あなたが私の封印を解いてくれるのかしら?」


俺は困惑した。魔力? 確かに、俺の剣技は魔力を込めることで威力を増すが、それは剣士としての特性であって、魔法使いのように魔力を操れるわけではない。


「俺は剣士だ。魔力なんて、そんなに使えるわけじゃ……」


「いいえ。あなたは気づいていないだけよ。あなたの身体には、計り知れない魔力が眠っているわ。私にはそれがわかる」


リリムは、俺の手を取った。その小さな手は、驚くほど温かかった。


「私を助けてくれたら、私はあなたに、最高の褒美をあげるわ。どう? 私の執事になって、この魔王城で暮らさない?」


「……執事?」


俺は呆然とした。冒険者として追放され、あてもなく彷徨っていた俺に、魔王が執事になれと? しかも、この魔王城で暮らせ、と?


「ええ。あなたは、私にとっての救世主。そして、私にとっての初めての『人間』の友達。だから、私を助けてくれたら、あなたはもう寂しい思いをすることはないわ。美味しい食事、豪華な部屋、そして、私の……」


リリムは、そこで言葉を止めた。そして、俺に満面の笑みを向ける。


「私が可愛いがってあげる権利をあげるわ!」


「……は?」


俺は再び、間抜けな声を出した。この魔王、何を言っているんだ?

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