親の再婚をきっかけに俺の人生が一変した 番外

はっしー

番外編 「約束」

「親の再婚をきっかけに俺の人生が一変した」

直人と、陽菜の春休みの様子を描いたお話になっています。

――――


明日から3年に進級し最後の高校生活を迎えることになる。

春休み最終日俺は幼馴染みとの約束を果たすため近所の公園に足を運んでいた。


「おまたせ~」


約束の時間までまだ10分ほどあるが陽菜が手を振りながらやってきた。


「俺もいま来たとこ。全然待ってないよ」

「それじゃあちょっと歩こうか」

「お、おう」


そう言うと俺の少し前を歩く陽菜。


「なあ、ほんとにここで良かったのか」

「いーの」


手を後ろに組み生返事の陽菜。


あの日陽菜が作って持ってきてくれたお弁当を屋上で食べ、そのお礼に何かしたいと言ってから随分経ってしまったけど、今日果たす事ができる。


当初陽菜は「デート」と言っていたから俺はてっきり水族館や動物園などテーマパーク的な所に行くかと思っていた。


でも昨日の連絡で示されたのはこの来ようと思えばいつでも来れる近所の公園。


「なおくんとお話がしたいなって」

「話?」

「うん」

「色んな。出会った時から今日に至るまで」

「それでこの公園か」

「うん。静かな所で誰にも邪魔されたくなかったから」


公園と言っても小さな砂場と滑り台が設置されているぐらい。

ほとんど利用されず最近では撤去しようかという話もでている。


「座って」


申し訳程度の大きさのベンチに腰かける。


「何から話そっか」


陽菜は顎(あご)に手をやり考える仕草をみせる。


「初めて会ったのは小学校低学年の時だよね」

「ああ。確か陽菜と陽菜の母親がうちに挨拶に来たんだっけ」

「そうそう。でもあたしは暇でさ。そしたらなおくんが声かけてくれて」

「そうだっけ」

「そうだよ。それからこの公園で泥だらけになるまで遊んで、お母さんに怒られて」


うろ覚えの俺と違い時折空を見上げ話す陽菜は、表情明るく懐かしんでいるように見える。


「それから仲良くなって。登下校も一緒にして」

「そうだな」

「あたし同性の子と遊ぶよりなおくんと居た時間の方が多かった気がする」

「そうかな」

「そうだよ」


当初から明るく人気者で陽菜の周りには常に人が集まっていた。


「なおくん人気者だったからちょっと妬いてたんだ」

「俺が?陽菜じゃなく?」

「そうだよ。なおくんが」


疑問を浮かべる俺にきっぱりと言い切る陽菜。


「それから中学に上がってまたなおくんと一緒だ!って遊んだり、たくさんの思い出を作ろうって思ってたんだけど...」


それまで身振り手振り交え話していた陽菜は表情と共に声のトーンも低くなる。


「1年の時はまだ一緒にいただろ」

「うん。1年の時はね...」


当時の事を思い出しているのか俯く陽菜。


「もう昔のことだろ。そんな顔するなよ」

「でも、ずっと後悔してる。周りの事なんて気にせずなおくんのそばにいればって」


中学2年修学旅行が終わった休み明け、それまで仲の良かった友達から急に無視をされ俺はそれ以来卒業まで独りになった。


「なおくんの様子には気づいていたのに、あたし...」

「もういいんだ、陽菜」


俺は表情を暗ませ悔やむ陽菜に過去のことはいいんだ、陽菜がそんな顔をする必要はないとかぶりをふる。


「ごめ...んね...」

「......ああ」


目に浮かぶそれを俺は手で拭い陽菜が落ち着くまで背中をさする。


「ごめん...ありがと」


落ち着きを取り戻した陽菜が再度話し出す。


「それ以来話すこともなくなって疎遠になったよね」

「ああ」

「でも、高校2年になってなおくんが家にあんな美人さんを家に連れ込んでるところを見た時は正直驚いたね」


恐らく凜の事を言っているのだろう。


「連れ込んでるって、言い方がよくないな」

「でもそのおかげでまたこうして話せるようになった」

「そうだな」

「ほんとによかった...」


見るとまた目に溜まったそれが溢れてきそうになっていた。


「おいおい」

「ごめん。大丈夫」


しかし目にグッと力を入れ堪える。


「なおくん」


それまで正面を向いていた陽菜が体ごとこちらに向け目と目が合う。

何か覚悟するように一度深呼吸をして心を落ち着かせ。


「なおくん、好きです。あたしと付き合って下さい」


一寸の迷いのない表情。


「お、れは...」


おこがしい話ではあるがこれまでの陽菜の俺に対する言動からもしかしたら「そう」なんじゃないかと心のどこかで思っていた。


明るく誰に対しても分け隔てなく接し、人気者でそれでいて可愛い陽菜が俺の事を。


「返事、聞かせて」


陽菜が真っ直ぐ伝えてくれたように俺も俺にできる精一杯の誠意を込めて。


「ごめん。俺好きな人がいる。だから陽菜の気持ちには応えられない」


頭を下げ訪れる静寂。


「...そっか」


陽菜は納得したように、うんうんと頷いている。


「あ~。でもすっきりした!3年に上がる前に伝えてはっきりさせたかったんだ」

「......」


何かしら思う事があると思っていた陽菜は意外にもけろっとしていて、おもむろに立ち上がり組んだ手を空にあげ思いっ切り背筋を伸ばす。


その姿に俺はどうすればいいのかわからず動けないでいた。


「ちなみに好きな人って誰?」

「それは...」

「いいじゃん、教えてよ。まあ大体分かるけど」

「いやたぶん、その予想外れてるぞ」


そう言い俺も立ち上がり小声で陽菜に伝える。


「へ~」

「へ~ってなんだよ」


言うがそれ以上何も言ってこない陽菜。


「帰ろっか」

「おい」


そのあまりにもいつもと変わらない様子に困惑しながらも後ろをついていく形で帰路に立つ。


――――


「これからも友達でいてね」

「ああ。こちらこそ」


家に着き別れ際陽菜と言葉を交わす。


「それでなおくんはいつ、告白するの」

「い、いや。それは...」

「うそだよ。なおくんのペースでいいんだから」

「お、おう」

「でも後悔はしないでね」

「ああ」


そう言って玄関を開け家に入っていく陽菜を見届けて俺も家に帰った。


――――


玄関を開けるとまるで誰かの帰りを待っていたかのように凜が立っていた。


「陽菜ちゃんと話してきた?」

「うん」


その言葉を聞く限り恐らく知っていたのだろう今日のことを。


「え...なんで」


靴を脱ぎ中へ入ろうとする俺と携帯を往復し困惑の表情を浮かべる凜。


「なんで振ったの」

「......」


答えないでいる俺を追求する凜。


「直人の好きな人って...」

「青葉さんだよ」


言った途端勢い良く俺を横切って飛び出す凜。

おそらく陽菜の所だろう。


俺は動くべきではないだろうと自室に戻り頭の中を整理した。

3年に上がれば受験も控えそれどころではなくなるだろう。


それでもいつになるかわからないけど気持ちを伝えてくれた陽菜のように、俺も勇気をだし結果はどうなろうと逃げずに自分の気持ちを伝えようと思う。


――――


それから夜になり陽菜の所から戻ってきた凜とは一言も話していないので、どういう話をしてきたのかはわからないが、明日から始まる高校最後の学校生活に向け眠ることにした。

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親の再婚をきっかけに俺の人生が一変した 番外 はっしー @hasshi_0404

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