10.奇妙な植物


 ガサガサという音と共に現れたのは奇妙な植物だった。

 真っ赤な花柱に真っ赤な花弁。しかも発達した触手が多数、ウネウネと様々な方向を向いて動いている。それだけではない。

 

 まるで触手を脚のように地面に擦り合わせ

 植物といえば通常、動かないものだが、その常識を覆すこの植物は普通ではない。

 「うわっ!なんだ?この植物の数は⁉︎」

 ショーンが叫ぶ。

「気持ち悪いな。動いてる……」

 ヒカリは気持ち悪そうに後ずさる。

 サジャは目の前に現れた奇妙な植物を見て硬直していた。

「みんな、戦闘だ!」

 ショーンのその言葉を合図に、奇妙な植物とサジャ達の戦闘が始まった。


 奇妙な植物は、合計8体おり、バフンバフンと花粉らしい怪しい粉を撒き散らして近づいてくる。

「あの粉は出来るだけ吸わないようにね。サジャ」

 ヒカリがサジャに言う。しかし数が多く、全く吸わないのは無理だ。

 奇妙な植物はサジャ達に向い触手を伸ばしてきた。攻撃だ。

 サジャはとっさに触手をかわすが、後ろから別の植物が攻撃してきた。

「きゃっ‼︎」

 服の上からビシャンと叩かれた皮膚は腫れ内側からズキズキと痛んだ。

「サジャ‼︎」

 ショーンが声をかける。が、そのショーンに別の植物が攻撃してくる。

「数が多いんだよな」

 ヒカリはそう言いながらも剣で植物を切り刻んでいく。

 ショーンとサジャもそれぞれ持っていた戦闘用に改良された本で植物を叩いていく。

 バフンバフン!バフンバフン!

 ひとつの植物が花粉らしきものを撒き散らしてきた。

 とっさに3人は手で鼻と口を覆うが、花粉らしきものは、遠慮なく隙間から入り込んでくる。

 ショーンは眠ってしまった!

「ショーン!」

 ヒカリの呼び声も虚しくパタリとショーンは倒れた。

「ショーン先輩!」

 サジャも心配そうにショーンを揺さぶるが、ショーンは起きなかった。

「私たち2人でやるしかないねサジャ」

「わかりました。ヒカリさん!」

 サジャとヒカリは連携して1匹1匹植物の数を減らしていった。

「これで最後だ!」

 最後の1匹をヒカリは攻撃し、ようやく植物との戦闘に勝利した!

「やりましたね!ヒカリさん」

「ああ……にしても、ショーンはよく寝てるなぁ。なんか、幸せそうに寝てるぞ?」

「疲れていたのかもしれませんね」

 サジャのフォローにヒカリはあははっと笑った。

「確かに。いろいろ気苦労の多い男だよ。ショーンは」

 2人は笑いながらショーンを起こした。


「うーん」

 と、唸りながらショーンは目を覚ました。

「あっ、植物の化け物は⁉︎」

「もう終わったよ」

 ヒカリは答えた。

「僕は寝ていたのか……。すまない……後輩の目の前で寝てしまうなんて」

「ショーン先輩。敵の攻撃でしたし、気にしないでください!」

 ショーンは若干落ち込んでいたようだが、気を取り直し、先に行く事を促した。

 この様なおかしな化け物が現れたのだ。悪魔が近いに違いない。ショーンは確信していた。

 あの崖の下の方から異様な邪気が薄く感じ取れたからだ。

「ヒカリ、サジャ、きっと悪魔は近い。気をつけて行くよ」

「ついて行くさ」

「先輩!気をつけます」


 3人は警戒しながら崖の下を目指して歩き出した。

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