第17話

 どことなく笑いの気分を残しとるブクは、苺ジャムを載せたクラッカーに口を近付けたりしとったが、そんなブクをクロムは冷静に眺め始めて。覚悟を決めたみてーな、悲しみに打ち克とうとするような、そんな顔つきに急になっただで。

 クロムは、ブクに勇者としての名乗りを上げたケド、ただの人なのだろう、と、ゆう事は、分かっとる。ブクを天使呼ばわりしたケド、魔物なのだろう、と、分かっとる。ただ、クロムは、嘘の勇者ではあっても、傷付いとる天使を、病に冒されとる天使を、救おう、と、思う。

 邪竜が病に冒されとる、って、クロムには薄々分かっとった。その病は、この田舎町で時々目に付く思いを、味わった気がしとったが、気の精かとも思っとった。邪竜は意地悪をしてくる。でも、神竜の愛を宿した剣を振るうて、神竜の愛を見せつける相手でもある。

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