第7話

 ところが、ブクの内には、クロムを消し去ってしまおうとする激しい怒りが、荒れ狂っとった。言わないでおく事に憧れつつも、それは難しい。

 だけえブクは、一〇秒間だけまずは、怒りをこらえ、言わんでおろうと、挑戦する事に決めただ。一〇秒、怒りを抑え、言わずにおろうって。一、二、三。ブクは心の中で数を、数える。四、五、六。まだまだ。七、八、九、一〇。すると、怒りは収まっとった。ゆったらいけんと諭されたことを、言わずにおっても平気で。うんクロム、俺、ゆわんと、ブクははにかんでゆっただ。

 今日はもう帰るね、と、ブクは疲労しながらも、嬉しそうにゆっただ。クロムが何かゆう前に、ブクはぴょん、と、窓を開いて外へ、跳ね跳んで去っていった。

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