でも、これから、うれかなだでさ

たにぐちロボコン

第1話

 精霊らあが雨を降らすと、グリーンスライムらあが感嘆の声を、どうして俺らあに?、俺らあは、勇者様を傷付けるだで?、なのに俺が大好きな、喉を潤す活力の源、夕立ちを、どうして与えて下さるん?、悲しいけど嬉しいだ、万歳だあ、と、天に昇らしただ。その中の、ひねくれ者の一匹は、勇者様にはご苦労な事だっちゃ、と、こぼした。でも夕立ちは、そのグリーンスライムさんにも、艶と潤いを与えた。

 グリーンスライムたちが皆、このように、斜に構えた性格かどうか。でもこの一団は、真っ直ぐな性格だったらなあと、憧れつつも、気が付いたら褒められんとっても悪い願望に捕らわれて。絶望しとっただ。どのこの胸にも、人を傷付ける想いが時に、ばばーっと湧いて来るだ。

 夕立ちのムードは激しい喜びだっただ。止むと、全て一日のややこしかった出来事の残滓が洗い流されて、清々しい夜の到来を告げとっただ。夕立ちを急に精霊らあはストップさせて、辺りにはでっかい雫が時折ぴちょん、音を立てて垂れとるだけ。

 グリーンスライムらあは、この一日の辛さを思い出す。自分が世界から爪弾きされた取るに足らん存在だと思い知らされた一日だったけど、その重苦しい思いにグリーンスライムの夢を以て挑んでゆけそうな笑みが、今ではあるだ。でももう休む時間になっただ。

 大きなグリーンスライムになれるかな?。眠る段になって小さな一匹が、星空の、星座の下でとーっても悲し気に、もう一匹に尋ねただ。大っきいのが望みだかいや?、私はね、と、もう一匹がゆうだ、翼があるのが望み。じゃあ僕も、と、小さな一匹が、嬉しくなって応える。流れ星が一個流れると、二匹は眠りに就いた。グリーンスライムの一団は、眠った。

 

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