カレらはコレといって…
おハロー
第1話 元カレ×終末×元カノ
「元気?今何してるの?」
パッと光るスマホに写し出されたのはもう見ることもないだろうなと思っていた人の名前だった。
結婚目前の二人。
仲のいい友人たちからはそう見られていたことだろう。
だが、俺たちは各々の仕事のために別れることを選んだ。
その決断に俺も彼女も後悔していないはずだった。
なるべく連絡を取らないようにしようと約束をし俺と彼女は別々の方向を見て歩き始めた。
あの日から約三年経って彼女から連絡がきた。
「特に何もしてないよ」
「そうなんだ。ね、ね、明日、明日はなんか予定あんの?」
「明日も何もないけど」
「じゃあさ、久しぶりに会わない?」
「明日?いいのか明日って……」
陽の光が燦々と輝く正午過ぎ。
いつもの駅に彼女はいた。
「すごい人!あんたいつもこの駅使ってんの?」
「今日は特別多いだけだよ」
「ハハッ、それもそうか。なんたって今日は『地球最後の日』だからね」
「お前も信じてんのかそんなこと。本当に最後とか思ってんのか?」
「半分信じてるかなぁ〜。ここ最近ずっとニュースでやってるし、信じない方がバカだよ」
「俺はバカじゃないぞ」
「アハハッ!本当に変わんないね、あんた。ねぇ、もし今日が本当に最後なら何したい?」
「本当に最後なら……美味いもんでも食べるかな?」
「私もそう答えると思ってた。最後何食べようかなぁとか、まだ行ってないとこに行こうとか、やっぱり家族とか友達と過ごす方がいいのかなとかさ。いろいろ答えが出たんだよ」
無垢な笑顔でこちらを見る彼女の目には涙が浮かんでいた。
「でもさぁ、どんだけ悩んでもやっぱり最後ならあんたに会いたかった。あなたと過ごしたい!って気持ちが強くなって思わず連絡しちゃった。ごめんね、約束破って。ごめんね、最後の日が私と一緒なんて」
嬉し涙か、それとも悲しいのか…
彼女の涙は溢れるばかりだ。
もう、俺は彼女の気持ちも分からなくなってしまっていたのか。
「謝らなくていいよ。俺もお前と一緒が良かったんだと思う」
「良かったんだと思う?んー、はっきり言わないと分かんないなぁ」
「俺もお前と一緒がいい。地球最後の日でも最後じゃなくても一緒がいい」
「なんだよ、じゃあもっと早く連絡すれば良かった…」
俺は彼女を優しく抱きしめる。
大丈夫。これからまたお互いの気持ちが分かるくらい近くにいればいい。
これからまた一歩ずつ分かりあっていければいい。
「これからもう一度二人で歩かないか?今度はずっと一緒に」
彼女は力いっぱい首を縦に振った。
そんな俺らを祝福するように眩しい光が世界を包んだ。
【遅すぎた二人】
カレらはコレといって…
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