第16話:英雄候補(2)
ダンジョン第五階層。
地上では貧民街のある孤児院でとある冒険者が子供達にもみくちゃにされている頃。
パーティ『鋼の翼』は小部屋のエリアで魔物の群れと戦闘を行っていた。
「――これで終わりだ!」
ヴィルが追い打ちと、跳び退いた剣を持ったホブゴブリンに対して踏み込んだ直後、その側面から別のホブゴブリンが錆びれた短槍を突き出してきた。
「くっ……!?」
視界の端で見えて、ヴィルは強引に身を翻し槍を躱す。
その隙に距離をとった剣持ちのホブゴブリンは短く詠唱し、小さな岩の弾丸を放つ。
ヴィルは僅かに首を傾けそれも躱すが、頬に僅かにヒリヒリとした痛みを覚えた。
「くそっ……」
二体のホブゴブリンは互いの動きが分かっている様に、同時にヴィルに斬りかかる。
今度は彼が後ろに跳び退くと、短槍持ちが距離を詰め、剣持ちが詠唱を始めた。
間髪入れない攻撃。片方に対処すれば、もう片方が間に合わない間と位置関係。
魔法剣である【エレメントセイバー】と槍使いの【ランサー】のパーティを相手にしている様だった。
単体ではそう強くない筈なのに、攻めきれない。
――それが、ヴィルを困惑させ焦らせ……苛立させた。
「――っ、ぅっ!」
放たれた下位土魔法の岩弾を長剣の刀身で受けて、僅かに
不意に下位スキルしか使えない共に旅に出た落ちこぼれの【ガーディアン】が脳裏に過る。
彼ならば、あの頼りない短剣で簡単に弾いてしまっただろか。
――いつものように。
「【リミットブレイク】!」
足場が無くなった様な、一瞬感じた不快な浮遊感を振り払う様に、奥歯を噛みしめ、魔力の出力を上げ放出する。
長剣に魔力を乗せて、槍の柄で受けようと構えたホブゴブリンをそのまま両断。
続けて遠間の剣持ちのホブゴブリンを高出力の魔力で威力を底上げさせた斬撃を飛ばす剣術下位スキル《
「……はぁっ、はぁっ――」
ヴィルは地面に転がる少し歪な魔石を睨み、眉間にシワを寄せた。
他の仲間はどうだろう、と見渡すと既に戦闘は終えていたが、ミリンダとライラは地面に座り込んでいて直ぐに動けそうにない。
対して、シャルロットは二体のウェアウルフを片手間で斬り伏せて、曲剣を鞘に納めていた。
「さて、ここも何とか片付いたねー。それでこの後はどうするの?」
「少し休んだら、六階層に向かうさ」
シャルロットの問いに、ヴィルは長剣を納め、腰のポーチに手を伸ばす。
彼はポーチを少し弄って、忌々しげに小さく舌を打った。
「魔力ポーション。もう使い切っちゃったみたいだねー」
ヴィルの表情にシャルロットは察して肩を竦ませる。
「で、どうしよっか?」
もう一度、シャルロットは問う。
「……――」
ヴィルは少し考えて、拳が血で滲む程に強く握る。
そして、絞り出す様に、
「今日は……コレで帰還しよう」
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