23.申請フレンドっ!
「ぅあ、あのぉ……」
「……は、はい?」
──夏も佳境
8月も終わりに差し掛かった頃。
わたしは何をしているのかというと……
「ふふっ、ふふふ! ふれんどなりませんかー!?」
「ひぃっ! あ、い、急いでるので……!」
【怪奇! ゲームに現れるバグギャル!?】
と題された怪談として語り継がれていることとなった。
つ、辛い……!
……でも、これは久蘭くんのためでもあり、そしてわたしのためでもある。
隠されたボーナスエリアを解放するためには条件がいくつかある。
・入口はディムフォレストのどこか。
・時間帯は放課後以降。
・アイテム:火薬、ドラゴンの
・七大
色々とブルアカ用の攻略サイトを巡回して、これが本当の情報っぽい? と推測した。
そもそも教育プログラムに攻略サイトあるのも変な話だけれど……オンラインゲームの側面もあるし、そんなものなのかな?
そしてもう一つ、特定した条件。それが……
「もかちゃん、どう調子は?」
「あ、友理菜先輩……! うぅ、あと一人のところまでは来たんですけど……」
「えっ、すごいじゃん。まさかあのもかちゃんが話しかけるだなんてね」
そう、フレンドを100人以上登録しておくことである。
久蘭くんと友理菜先輩、そして菊池先輩の3人しかいなかったわたしは、日々、知らない人にフレンド申請しては逃げられるか、引かれながらも承諾させてフレンドに無理やりなる行為を繰り返していた。
「ぇへへ、まぁフレンドになった人たちと再会することはないんですけどね……」
「そ、そう……友達なんて広く浅くより、深く狭くの付き合いの方がいいわよ」
「そ、そうですよね! わたしも先輩方といっぱい遊べたらすごく嬉しいです……!」と返事をしたら、モーション申請が来ていた。
承諾すると、よしよしっと撫でられた。
「ぴゃっ!?」
「ついね。まぁ、これは一旦置いておいて」
置いてかれた!?
アバターではまだわたしの頭に手は置かれたまま、話は続く。
「他の条件はどうなの? 七大
「あ、踏破率は終わりました」
「えっ、あ、すごいね……」
あれっ!? 引かれてる!?
ま、まぁゲームは苦手だったけれど、久蘭くんと一緒にクテストを攻略する内に少しできるようになったからね……!
これも成長の一つだよね……!
「あれ、そういえば菊池先輩は……」
「寝てる。最近寝てない方だったからさ、取り戻すかのごとくずっと寝てるよ。よっぽどもかちゃんの恋路が気に入って気になったてたんだろうね」
「ここ、恋路ですか……」
わたしもそうだけれど……正直、先輩方の方が面白い少女漫画になってるのって菊池先輩は気付いているのかな。
幼馴染で、美男美女で、失礼だけれど病気もあって、お互い好き同士だけれど付き合ってはないって……それこそ少女漫画過ぎるのでは!?
でも距離感が近すぎてその辺りはバグってるのかな……今も聞き耳立てれば寝息が聞こえるんですけれど、膝枕か添い寝かしてませんか!?
「まっ、9月になったら久蘭くんはブルアカに戻って来るんでしょ。ちゃんと出迎えてあげないとね」
「……はぃ! が、頑張ります……!」
久蘭くんは一人で勉強を頑張っている。
わたしだって一人でここまでできるようになったんだよって言えるように頑張らないと……! それがこのブルームオンラインプロジェクトの主目的だし。
成長した二人が協力したら、どんな難題だってクリアできるもんねっ!
だからわたしはがんばるっ──久蘭くんにサプライズして驚かせるんだ……!
◇ ◇ ◇
「模試はどれも平均点……旧帝大まではまだ点数は足りないわね」
8月中旬に受けた予備校専用の模試結果が、月末に返却された。
タブレットをスワイプしながら結果を見る母は溜息を吐く。
俺はただ黙って拳を強く握るのみだった。
夏休み期間が終わってもきっと満足いく点数を取れるまで、いや大学に合格するまで、浪人生が通う予備校に行かないといけないだろう。
ブルアカは毎日必ず
リアルの学校に編入や、就職にアーティストデビューなど理由はなんであれ独り立ちできれば構わないからだ。
それじゃ紅野と「また学校で」と交わした約束を守れなくなってしまう。
「あのさ……」
「……でも、成績は去年よりも倍近く上がっているわね。この調子でブルアカでも勉強頑張りなさい」
思わぬ母の言葉に俺はたじろいでしまった。
「何どうしたの?」
「いや、新学期も予備校に行かないといけないかと思ってた」
「行きたいの? それでも別にいいけど」
「そういうわけじゃないけど……」
「……あの子、紅野さん、だったかしら。飼育委員が同じだった子」
「覚えてんの……!?」
「小学生の頃は嬉しそうに毎日話してたでしょ。見かけたのは卒業式の時だけですけど」
そういえば夕食時とかに、そんなこと話してたような気がする。
少し恥ずかしい。
「あの子も今はブルアカの生徒だったのね」
紅野が叫んだ言葉からも、彼女も同じプログラムを受けていると推測された。
世間からの評価は得てきたとはいえ、ブルアカに通う学生はみんな不登校ばかり。
一部は俺たちのことを見下している大人もまだいる。きっと母も──
「あの子、賢いわね」
「あぁ、まぁ……。紅野はブルアカで一番頭いいから」
「それだけじゃないわよ。引き際が分かっている。もっと昔のドラマみたいに、子供ながらに強引に連れて行くのかと思ったけれど」
確かに、俺もあの時は同じことを思った。
けれど母親を説得しきれぬままなら、後が面倒なことになるのは目に見えて分かるし、そうなったら花火大会も楽しめたか怪しい。
それに、俺の夢も応援してくれる紅野は、相手を気遣えるからこそ、あそこで踏みとどまってくれた。
「優しいから、あいつはさ」
「そう……つまり図書館で勉強してたのは嘘で、あの子といっぱいデートしてたってことね」
「なっ!? そ、そういうのじゃない、勉強だってたくさん教えてもらった!」
「成績を見れば浮かれてただけじゃないことは分かるわよ。良い子ね、紅野さんは。大切にしなさい」
母は晩御飯で足りない材料を買いに行くために、家を出た。
最後に「夢のために、ちゃんと勉強も頑張りなさいよ拓海」と言ってから。
……なんだ、俺はまた気付けなかっただけか。母は俺のことを見捨てるでも期待をかけるでもなく、ちゃんと応援してくれてたじゃないか。
誰よりも一番近くにいた家族と心が離れていたのは俺の方からだったか。
「ふぅ……頑張らないとな」
俺はいくつもの約束を守るために、自室に戻っては机に向かった。
今からは現代史の勉強でもしよう。
心を寄せている人のことを思い浮かべながら国語便覧を捲った──
「──青春しませんかっ!?」
と、最初に言われた時に、俺は断ってしまった。
できない勉強に必死だった小学生の頃。自分に遊んでいる暇はないと突き放すような言い方をしたのを、すぐに後悔した。
冷や汗混じりの汗がダラリと落ちたのを今でも覚えている。
「そ、そっか、ごめんね……! 久蘭くんの事情を考えずに言っちゃった……」
「ぁ、別にそんなに気にしなくても……」
「じゃ、じゃあ、毎日ここで待ってるねっ……! いっぱいうさぎさんのお世話、一緒にがんばろうねっ……!」
「う、うん。ちゃんと来るよ」
「じゃあ、また明日、学校でねっ……!」
──もし、明確に初めて恋に落ちた自覚があるというのなら、真夏の西日が沈むあの時だ。
もっと勉強をちゃんとしていたら、卒業式の時には君の気持ちにも気付けたのだろうか。
「……あ、夏目漱石」
でも、また会える。
もう一度ログインした時には、何て返事しようか。
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