7.空白リアルイベントっ?


 わたし、紅野もかは初恋の相手、久蘭拓海くんとフードコートで待ち合わせて、四年ぶりに再会した!

 今まで宇宙よりも暗い地味ぼっちだったけれど、今日からは恒星くらいキラキラ高校生みたいにデートをするのだ!


「とっ、とりあえずゲーセン、どすか。はい」


 ……まぁ、そう簡単に上手く行くわけないんですけどね。

 出不精すぎてどこでどんなデートするか何も知らない。

 東京なんてキラキラした場所に住んでるはずなのに、行き先のない田舎の中学生みたいになってるじゃん。

 うぅぅ、服装だけじゃなくてデートプランもしっかり計画すればよかったぁ!?


「あ、うん。そだな」


 久蘭くんもぎこちなく素っ気なく返事する。

 きっとゲームセンターは好きかなと思ったけど、インドア派ならそうでもないのかな!?

 でもでも、久蘭くんだって緊張してるだけかもしれないし、そうだよね、きっとそうだよね!? うん!!


 放課後や休日の青春といえば、友達とゲーセンでウェーイ! ……みたいなイメージがあるから、3階フロアにある数年前に大手会社に吸収されたゲーセンを見て回った。


「ぁ、かわぃぃ……」

「挑戦してみるか」

「ぅ、うん」


 巨大な白兎のぬいぐるみを見つけて、わたしと久蘭くんは交互にクレーンゲームに挑戦してみた。

 1プレイ200円を5回ずつ。計2000円かけて挑戦したけれど、惜しいところまでいっても最後のわたしのプレイでクレーンが届かない奥の方まで転がっちゃって、そこで断念した。

 店員さんに位置を直して欲しいって声もかけられないし、そこまでしてお金をかけてもらっても悪いし……うん。


 他にもレースゲームとかホラーシューティングゲームとかやってみたりしたけれど、特にこれといった盛り上がる話題はなく、ゲーセンデートは終了した。


 ……あぁれっ??!?

 あまりにも会話が弾まない、というか最初のボールが落ちもしない。会話のキャッチボールのボールを忘れてきたというか!?

 少女漫画のデートみたく、もももも、もっとキャッキャウフフしてるかドキドキきゅるるんするものと思ったんだけど、こんなにも淡々と進むものだっけ。


 オンラインゲームでの久蘭くんはとても明るくて優しい。

 けれどリアルで会うと目も合わないし、会話も続かない。

 も、もちろんわたしだけが避けてるわけじゃないよ!?

 ただ、チェスと将棋で戦ってるような、噛み合わなさがある。

 小学生の時はもうちょっと話せたはずなんだけどな……。



「ごめん。リアルでは、俺も話すのそんなに得意じゃない」


 わたしはたこ焼きを、久蘭くんはラーメンを、フードコートでお互いの料理が来るのを待っている間に、久蘭くんが話を切り出した。彼だって同じことを思っていた。


「べベべ別に、謝ることじゃ……! それならぅわ、ぅわたしだってっ……!」

「そうじゃない。紅野は会話力を上げたいって話なのに、俺がこんなんじゃ、一方的に教わるばかりだろ?」

「き、気にしないよ……だだって、ブルアカの生徒として会ってるわけじゃなくて、その、小学校のど、同窓会ぃ? みたいなのだし、へへっ……ひっ!?」


 ピピピピピッとわたしのベルが鳴り響いて情けない声が出ちゃう。


「じゃ、先に取りに行く、ね……!」


 音の止め方が分からずにあたふたとしていると、チラチラとフードコート利用者から見られてしまう。

 うぅ、何でこんなに注目されるのかなぁっ……!



   ◇ ◇ ◇



「──ふぅ、ダメだ緊張するな」


 感情が表情に出ない自信はあるけれど、顔色まで隠す特技はない。

 紅野もか……かわいすぎる。

 あの天敵に追い詰められた小動物みたいなわたわたとした動きに、ぎこちない笑顔。本人は気付いてないかもしれないけど、それが俺からしたら可愛くて仕方ない。

 今すぐに抱きしめたい。事案だからしないけれど。


 小学校の時からずっと好きだった。

 気持ちも言葉も感情も素直に出ることなく、卒業迎えてそのままさよなら──俺の初恋は終わったはずだったのに。


「紅野って気付くまでは全然平気だったのに……。好きな人の前じゃ仮面も剥がれそうだ」



   ◇ ◇ ◇



「……じゃあな」

「ぅ、ぅん……」


 ご飯を食べてからお店を少し見て回ったくらいで何も買わず。これといって青春らしいことはしなかった。

 改めて青春って何だろう……。思い出を一つも手に入れられなかったよ。


「……紅野」

「はぃ! なな、なんでしょう!?」

「またブルアカが終わったら、ここで待ち合わせよう。次はゲーセンで何か取ってみせるよ」

「ふぇ……ぃ、いいんですか……? わたしっ、その、勉強くらいしか教えれなくて、遊ぶことになるとほんと役立たずとかなんですけど……!?」

「いいよ、そんなの。ただ、一緒にいたい人と何でもない時間を過ごす。きっとそれが青春だって、俺は思ってるからさ」


 何もない日々を、誰かと一緒に……。

 一人だと記憶にも残らない、透明な日々だけれど。

 それも誰かと交わることで色付いていく──


「じゃあ、また月曜日、学校で。放課後はここで」

「……ぅん!! またねっ……!」


 無理して何かをしようとしなくたって、心には確かに残っている。……何だかふわりと心が軽くなった、大切なものをしまえた気がするのにな。

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