第2話
いつからか、砂漠を歩いている。
風が砂がまき散らす。わずかに太陽を反射して輝く砂は、風と同時に私の体に打ち付ける。
ザー、ザー、ザー、ザー過ぎていく。
別に町までは遠くないはずなのに、たどり着ける気がしなかった。
初めからそこに無いような、町が動くように遠ざかっていくような気がする。
砂は町が残した足跡なのかもしれない。
だんだんと砂の音が下がっていく、砂に反射する光以外の輝きが見え始める。
しっかりとした空が見えてきた。雲一つない、太陽のためにある空だった。
遠くに町が見えていた、もう少しでたどり着ける。
止まっていた足が前に前に進む。
少し歩いたところで視界に、テカテカした地面が写る。
遠くで、音が聞こえる。
カチカチカチカチ、鳴っている。
小さな音だ。
近づくにつれ形が見える。
はっきりと見えた、サソリの形が。
弾かれたような音が大きくなる。
ドレミドレミドレミドレミファそんな音。
一つ一つが集まって地面となっている。
音を奏でるのは彼らのハサミ。
サソリたちは、1っ匹のサソリを中心にして、周りを何匹ものサソリが半円を描くように居座っている。
真ん中のサソリが片方のハサミを振り上げた、さっと音が止まる。
「何をしているんだ?って聞きたそうですね。」
とそいつは話しかけてきた。
即座に、首を縦に振る私。
サソリは意気揚々と答える。
「曲を弾いていたんです、オーケストラですよ!、オーケストラ。毎日太陽に向かって弾いているんです。」
「いつも背中しか見せてくれない太陽の顔が見たいから弾くんです!」
はにかんだ笑顔でサソリは続ける。
「よかったら聞いていってくださいよ!、太陽よりもリアクションをとってくれそうだし」
表情を、体の向きを一切変えない太陽に音楽を送り続けることは苦しい側面もあるだろうと思い、いいよと言った。
真ん中のサソリは仲間のほうに体を向けて、右手を高らかに上げた。
演奏が始まる。
ドレミ ドレミファ
ドドレミ ドレミ ドレミファ
ドレ ドレミ ドレミファ
ドレ
~~~~~~~~~~~~~
ドレミ ドレミ ドレミファ
演奏が終わった。
自然に溢れ出る拍手と笑顔。
彼らの音楽は砂を描いたような音楽で、砂が風に撫でられ連れていき、波の形をした砂が山を作り上げる様子そのものだった。
シンプルだけれど、徐々な変化が何かを作り上げる景色を切り取った音楽。
「ありがとう、いい演奏でした。」
と言い、指揮者の彼と握手をして別れた。
去り際に、背後カラカラカラカラ音がする。手を振っている音。
私も振り返り手を振った。
サソリに尊敬の念と罪悪感を抱きながら。
太陽のように振り向かない町に向かって私も足を進めることにした。
幻想旅行 @syunkai_l
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