冗談じゃない、アルコール代行サービス

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 代わりに酒を飲んでくれる代行サービス、若い世代にはウケるだろうなあ…。イラっとくること、まちがいないで…

 代行サービスには、冗談が通じない。

 「退職代行、発言代行、宿題代行、家事代行…。代行サービスも、増えたな~」

 「増えましたね」

 「宿題代行はいけないと言う人がいますけれど、宿題代行は、仕事のない大人を助けられるから良いでしょうに…」

 「家事代行も、良いよな?母子(ぼし)家庭や父子(ふし)家庭のように、子子(しし)家庭も助かる」

 「じゃあ、遊び代行は?」

 「子どもと遊んでやるんじゃなくて、代わりに遊んでやるっていう、アレね」

 「アルコール代行サービスは?」

 「いいね~。会社なんかでの飲み会のときに、大活躍。冗談が通じなくて、若いお世代には大ウケだ」

 「飲み会、か…」

 飲み会なんて、若い世代ほど痛いイベント。

 「アルコールを出す飲食店などで働く人を助けられるっていう意味では、良いんでしょうが…」

 「仕事から離れた場所でも他の社員に付きあって酒を飲むなんて、コスパとタイパの無駄かもな」

 「それ!」

 年輩社員は、若い世代の気持ちなんか知らない。

 だからまた、さそってくるんだな。

 「君?いっしょに飲もう!駅前広場で、待ち合わせよう!」

 「…う」

 あまりうれしくない次世代男子がアルコール代行サービスにこっそり依頼をかけたのは、言うまでもない。

 「あのう…」

 「はい」

 「ボクの代わりに、飲んでもらえませんか?」

 「良いでしょう。それでは、あなたの身体データを、画像で送ってくれますか?特に、顔の情報がほしいのですがね…」

 夜。

 「おお、きてくれたか。待っていたよ」

 「…」

 「私のいきつけの店で、飲もうじゃないか」

 「…」

 待ち合わせ場所で年輩社員に話しかけられているのは、顔を含め、身体データと画像の操作で次世代男子そっくりになりすましているアルコール代行サービスの男。

 「さあ、君!飲もうじゃないか!」

 そして、2人の宴会がスタート。

 「どうかな、君?」

 「…うまい!」

 「そうだろう、そうだろう」

 「うまい!」

 「若いのに、飲みっぷりが良いねえ!」

 「うまい!」

 「…君も、飲むねえ…若いのに…」

 結局、酔いつぶれて寝てしまう年輩社員。

 ここからが、やばい。

 「あ~、うまかった!さあ、そろそろ帰るか…」

 やっぱり、アルコール代行サービスの男には冗談が通じなかったようで。

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