第2話 日曜市の出品の手伝い

 祖母の遺品を片付けることになって、日曜市に出品した。


 なぜか祖母が若い頃に踊り手だった頃の衣装を着せられて、客寄せ。


 なんだか貴婦人めいたと言ったらいいのかな。


 大きな帽子に飾りが沢山ついていて、ちょっと重い。


 帽子に「重い」って思ったことがなかったから、意外。


 風が吹いて帽子の鍔がそれを受けて、私はよろめいてしまった。


「うわっ」


「おっと・・・大丈夫?」


 体勢を崩した私を支えてくれたのは見慣れぬ美少年。


 とりあえず女子として胸キュン。


「あ、ありがとう」


「うん・・・何を出品しているの?」


「食器とか、花瓶、あとダンスの衣装とか。ちょっとだけ書籍もあるよ」


「ほう、書籍・・・見ておこう」


「あ、うんっ。どうぞ~」


 決められたスペースがあって、その範囲内で売買が行われるから案外と近距離。


 真剣に書籍を吟味する彼が、残念そうにため息を吐いた。


「やっぱり、ないかぁ・・・」


「何をお探しで?」


「『ノットタイトル』・・・あと『白魔女伝』、『謎の花園ザーイフ城』」


「えっ、『メヴァンディーニ』あたり知ってますか?」


 少年が意外そうに顔をあげて、私を見た。


「僕の好みの作品だけど、君、本好きなの?」


「『ペン剣』とか?」


「えっ、えっ、えっ・・・普通に話したい。僕、名前、ミツユキ」


「私、レイ」


 ミツユキは胸ポケットから名刺を取り出して、私に渡した。


「これ、僕のおおむね居る場所」


「ほう、どうも・・・私、名刺は持ってない。時々ここらにいるよ」


「出会えて嬉しい」


「え、嬉しいっ」


「普通に喋りたいけど、今日は家の者が通院日だから留守番しないといけないんだ。今度また会いたい。名前・・・レイで大丈夫?」


「うん、君は何歳?」


「十六歳」


「私は十五です」


「敬語はいいよ。ミツユキ君とかでいいから」


「分かった」


 彼は古本の中から一冊、「気になるやつ」を買うと言った。


「250シューイーズです」


 金銭のやりとりをして、彼は私に微笑んだ。


「帽子に感謝だ」


 とりあえず好みの男子と普通っぽく喋れて、淡い恋心がときめいた。


 おばぁちゃんや、妙な帽子を残してくれてありがとう。




◇夕食で特に美味しかったもの◇


・煮込んだ牛肉がごろごろ入ってる辛口ビーフシチュー

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