インタビュー・ウィズ・エイリアン

小日向葵

取材受けるもお仕事也

 下の地球から、取材の申し込みがあることは珍しい。基本的に、連合政府も連合軍も、どんどん取材は受けて認知度を上げなさい!というスタンスなので、その雑誌だかネットメディアだかの取材を受けることにした僕とセフィアである。


 取材の場はだいたい宇宙に浮かぶ迎撃艦隊βの旗艦級戦艦内プレスルームを使う。今回は僕とセフィア共に勤務中であることから、慣例通りの運びとなった。


 僕の副官、メギナス少佐が下まで出向いて、取材の記者とカメラマンをご案内する。青い肌の宇宙人など見馴れてはいないだろうから、さぞや驚いたことだろう。きょろきょろする女性記者と男性カメラマンは、プレスルームに控えるキツネ耳の女性兵たちにも驚きを隠せていない。


 「はっ、初めまして!わたくしチャンネルAIBの諸星杏奈と申します。今日は取材の申し入れに快く応じて頂きまして、本当にありがとうございます」

 「初めまして。宇宙連合軍統合作戦本部、ミスティクス銀河方面軍所属迎撃艦隊β司令の、セフィアリシス・メルテリアラウス・コムスククレス・マハリマ・ラ・ナガト准将です」

 「同じく宇宙連合軍統合作戦本部、ミスティクス銀河方面軍所属迎撃艦隊β随伴艦隊司令官、レイジ・メルテリアラウス・ミカサ・ナガト准将です。地球名は長戸零士と言います」


 名刺交換。いちおうこちらの名刺は日本語に翻訳済みのものだ。銀河標準文字なんて、普通の人間には絶対読めないもの。


 「では、さっそくこれから質問をさせていただくんですが、我々のメディアは社会問題を追及したり、フラストレーションの解消を目指したものではありません。ですから、構えずにリラックスしてお答えいただけれと幸いです」

 「判りました」


 笑顔に笑顔で返すセフィア。うう、なんか不安だ。




【Q1:お二人のお名前を教えてください。また、お互いにどう呼び合っていますか?】


 「名前はさっき名乗ったのでいいですよね?」

 「ええ」

 「えっと呼び方かぁ。今はこの間二歳になった子供たちと暮らしているので、パパとママって呼び合ってます」

 「え、もうお子さんが?」

 「はい、女の子と男の子の双子です」

 「えー、二人きりの時は?」

 「あたしはレイジって呼んでます」

 「僕はセフィアと。まぁ、普通ですかね」



【Q2:お二人の登場する作品について、軽く教えてください!】


 「前作『転校生は幼なじみでフィアンセで、義理の妹で宇宙人な艦隊司令官!?』はもうそのまんまな内容で、あたしとレイジが出会って子供作って結婚するまでのお話です。今は続編「妻は艦隊司令官!」の連載中で、レイジが就職して子供が産まれて色々あってさあ大変、というお話です」

 「な、なんかすごいですね?子供作って結婚ということは、出来ちゃった結婚ということなんですか?転校生ってことは、高校生で?」

 「あー、なんと言うか。一口では説明が難しいんですが、結婚するから子供を作ったという方が近いのかな?」

 「んん?よく判りませんが、読めば判りますか?」

 「その方が判りやすいかと」



【Q3:お二人が出会ったきっかけと、第一印象を教えてください。】


 「ある日、突然転校して来たんですこの人」

 「あ、つまりですね?この地球が悪の宇宙人によって侵略目標になったので、宇宙連合軍からあたしの艦隊が防衛のために派遣されたんです。艦隊司令は一つだけ、私的なお願いをしていいルールになっていたので、素敵な地球人の彼氏が欲しいかなって思って」

 「ということは」

 「一目惚れだったんです!きゃん!」

 「僕の方はもう何がなにやら。テレビでしか見たことのない、偉い政治家に脅されたり宇宙戦争にいきなり同席させられたり、同居していた父と母が行方不明になったり。もう訳が判りませんでした」



【Q4:お二人が付き合ってからどれくらい経ちますか?】


 「高校二年の五月からだから、今年で四年です」

 「それでもう二歳の子持ちですか……」

 「お恥ずかしい。勤務中は託児ルームに預けています」



【Q5:相手の魅力的なところを教えてください。】


 「何事にも一生懸命なところですかね。宇宙連合に参加するほどでもない僕の地球を守るために命を懸けて戦ってくれる、その姿に報いたいと思いました」

 「レイジは全てが魅力的です」



【Q6:相手に直して欲しいところはありますか?】


 「ちょっとだけ嫉妬深いところかな……」

 「時々脇が甘いところですかね。余所の女に優しくしないで欲しい」



【Q7:相手に言われて胸がキュン! とした言葉はありますか?】


 「バレンタインのあれ!」

 「やめて!思い出させないで!」

 「プロポーズも良かったわ!」

 「勘弁して!」

 「あの、具体的に聞けますか?」

 「嫌です!」

 「取材にならないよ……」



【Q8:相手に言われてムカッ! とした言葉はありますか?】


 「直接言われたわけじゃないけど、この人クルーたちから『旦那さま』って呼ばれてて」

 「いや、それについてはもう納得して諦めたろ?」

 「諦めた?」

 「まだちょっと納得行ってない。あたしのなのに」

 「クルーって言うと、あの艦隊の乗組員の女性たちから?」

 「だから、最初は『大佐の旦那さま』だったんですよ」

 「大佐?」

 「あ、セフィアは最初大佐だったんです。昇進して准将になったあたりで面倒になったのか、『准将の』が抜けて、単に『旦那さま』になったと」

 「やっぱり禁止したい」



【Q9:二人が喧嘩をしたらどっちが先に折れますか?】


 「どっちが先ってことはないです。あたしが悪いなと思ったら謝ります」

 「どっちも割とうっかりすることがあるので、原因さえ判ってしまえば後には引かないですね。大抵僕が折れますけど、曲げられないこともありますし」



【Q10:相手の機嫌が悪いとき、どう接してあげるのが良いでしょうか?】


 「子供をけしかけます。パパと遊んでおいで、ってやるともうすぐにニッコニコになるんですよ」

 「僕そんなに家で機嫌悪い顔してる時あるかな?」

 「本部行って帰ってきたら、大抵むすっとしてるわよ」

 「だって義母さんが無茶ばかり言うんだもの」

 「お義母さん?」

 「あ、統合作戦本部長はあたしの母なんです」

 「セフィアの機嫌が悪い時は……黙ってするがままに任せます。それが一番」



【Q11:相手に贈り物をしたことはありますか? もしくは、 あげたいものはありますか?】


 「高二のクリスマスに!軍用婚約指輪を贈り合いました!この右手のがそれです!」

 「軍用?何かあるんですか?」

 「各種通信妨害も効かない、強力な位置特定機能がついてます。あと、嵌めた相手じゃないと外せないので、ドッグタグの代わりにもなるんですよ」

 「ドッグタグ?」

 「認識票です。死亡が確定すると、指輪の二層構造の外側だけが外れて、戦死認定に使えるんです」

 「怖い」

 「あと、この左手のは同じシリーズの軍用結婚指輪で、エネルギーシールドと対物レーザーが使えます」

 「軍隊凄い」



【Q12:相手のことをどこまで頼れますか?】


 「正直、軍人としてはまだまだ頼りないです」

 「ありゃ」

 「色々あって一気に准将にまで昇進してくれたので、あたしも鼻は高いんですけど、やっぱり経験が足りない分はどうしようもないですね」

 「とほほ、そう言われるとは思ってた」

 「でも、家族として、夫として、父親としては信頼してるからね」

 「ありがと」



【Q13:相手のことどうやって褒めてあげますか?】


 「この人照れ屋だから、人前で褒めるとすごく嫌がるんです。だから、二人きりの時だけですね」

 「人前で下手に褒めると、あらぬ裏を疑われるので、やはり二人きりの時じゃないとできませんね」

 「何よ」

 「何も間違ってないだろ」



【Q14:相手のことをどうやって怒りますか?】


 「ストレートにどかーんと。今は子供たちの目もあるので、間違っているならちゃんと正さないといけませんよね」

 「僕はあんまり怒ったことないかな」

 「そのぶん、たまに怒ると怖いよレイジ」

 「……なんかごめん」



【Q15:もし二人の体が入れ替わっちゃったら、何をしたいですか?】


 「男の乳首が何の役に立つのか、調べてみたい」

 「やめて!」



【Q16:もし相手がいきなり人混みの中で「大好きだ――っ!」って叫んできたら、あなたはどんな反応をしますか?】


 「瞬間転移で逃げる」

 「あっレイジずるい」

 「だって、たぶん僕が逆襲して『僕も大好きだ』って叫んだら、君も逃げるだろ?」

 「……否定できない」

 「あの、瞬間転移って何ですか?」

 「えっと、連合文化圏では一般的に使われてる移動手段です。個人レベルの短距離ワープですね」



【Q17:もし明日世界が滅亡するとしたら、あなたは最後に相手と何をしたいですか?】


 「美味しい晩御飯を家族揃って食べて、同じベッドで寝ますかね」

 「そうね、じたばたして何か変わるのならともかく、滅亡が決まっているのなら、楽しい時間で締めくくりたいわ」

 「つまり?」

 「可能性があるなら、最後まであがきます」



【Q18:最後に、お互い何か言いたいことがあればどうぞ!】


 「えっと、実は彼女もう次の子供妊娠してて。来年の春くらいには産まれる予定なんですけど」

 「えっ、それはおめでとうございます」

 「とにかく元気でいて欲しい、それだけです」

 「レイジはあたしの実家を継ぐことになりそうな流れで、しきたりとか親戚関係とか色々大変なんですけど、周りには味方しかいないので頑張って輪しいです」



【ここまでありがとうございました。お二人が登場する作品について宣伝してください!】


『転校生は幼なじみでフィアンセで、義理の妹で宇宙人な艦隊司令官!?』

https://kakuyomu.jp/works/16818093078270745691


 僕の名はレイジ。地球は狙われている。


 突如地球を襲う暗雲。だが人類は脅威に対抗する術を持たなかった。このまま人類は滅びてしまうのか?その時、遥か銀河の彼方から救いの手が……という感じのすっとこどっこいストーリー。全百話、完結済。



『妻は艦隊司令官!』

https://kakuyomu.jp/works/16818093087295161280


 僕の名はレイジ。地球はまだ狙われている。


 遥か一万年の昔、宇宙を支配した帝国。滅びたはずの彼らが今、復活。侵略行動に潜む狙い、繰り返す宇宙の謎。そして主人公夫妻が直面する問題……という感じのおとぼけストーリー。 前作のラストから二週間後、始まる新たな物語。現在絶賛(?)連載中。





 女性記者たちが帰ってしばらく。監視カメラの録画を見返しながらも、セフィアの耳がぴこぴこしていた。どうしてご機嫌なんだろう。


 「んふふ、なんだか色々思い出しちゃった」

 「例えば?」

 「秘密!」

 「当てて見せようか」


 僕は少し考えたふりをする。


 「判るかなー?」

 「私とあなたガクスメクス愛の記憶ベララッタリン

 「きゃん!」



 セフィアが僕の胸に飛び込んで来た。どうやら、正解のようだ。







-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

 どうもです。


 ふと目にした自主企画に参加させてもらおうと思い、書いてみました四千字です。説明になってない部分がとても多い気がします!本編を読んで頂かないと判らない部分もかなりあります!特にオチ!



 話は全然変わるのですが、youtubeで期間限定公開の「天河伝説殺人事件」を寝ようと思っていたのに見始めてしまい、なんだなんだと面白くて気が付いたらラストを迎えていました。まだしばらく公開してると思うので、もし良かったらどうぞ。



 本編はそろそろ第六章を終えて、さらなる展開の新章に入る予定です。日常ベースのゆるいテンポで進む物語ですから、あまり急展開は期待しないで下さいw


 楽しく書いていますので、楽しく読んでいただけたら幸いです。



 それでは!




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インタビュー・ウィズ・エイリアン 小日向葵 @tsubasa-485

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